第46話 勝負の行方

二通目の手紙も両者ともに紛失し、勝負はまた振り出しに戻った…


だが、三通目の手紙もまったく両者進歩がない。


厄災の力を再び使ったリムさんだったが…


〜〜〜回想〜〜〜


「リム!!もう一度能力を使いなさい!大丈夫!さっきはちゃんと手紙もテレポートできたんだもん!」

「えぇーん…ムリだよ〜〜!またみんなに迷惑かけちゃうし…」

「大丈夫!!さっきより的を絞って!!だるま落としみたいに、シュッ!って、狙ったとこだけ飛ばす感じよ!!…たぶん…」


魔界にも、だるま落としなんて地味な遊びがあるのか。というか、フェイズは厄災の能力がないんだ。使い方なんてレクチャーできるはずがないだろ…


「うぅ〜〜…シュッ!ってやるの?」

「そう!シュッ!ってやるの!」


リムさんは曖昧なレクチャーを実行しようとしている。

頭に申し訳なさそうに生えた角をゆっくりと擦り始めた。


「うぅーーーん///えぇぇーーーい///シュッ!!!」


リムさんの第二の乳首。本日二度目の発光。


ダゴーーーーーン!!!


今度の厄災は早かった。そして、デカかった。

リムの真下の海にデカい島が突如現れた。

島の中心にある空洞から、蒸発した海の蒸気が噴き出している。


「え、え!?何これ⁉︎えっ!?」

「私にだってわかんないよ〜〜!!」


島の正体は富士山の一部だった。

だるま落としをイメージし過ぎたリムさんは、

富士山の下の部分と手紙をシュッ!っと入れ替える厄災を起こした。

突如下部を失った富士山は、だるま落としの如く下に落下。その衝撃で憤怒のような噴火が始まった。


地域住民は被災し、過去最大の溶岩被害により、富士山一帯は火の海と化した。


「規格外の能力ね。そろそろ冗談ではすまないわよ…」

「何回やっても無駄ですよ!!悪の元凶みたいな能力で手紙が届くはずがないんです!私の神の力でなけれ…イタイッ!!」


アマ様は再び平坦な雲の上でトテッ!っと転び、手紙を穴の中に落とした。


手紙はクルクルと空中を舞ったと思えば、気流の軌道を紙一重で操り、雨雲を富士山の真上に瞬く間に集め火災を鎮火させる。


「もうムリ〜やだ〜!今日は力使いたくなーーい…グスン」

「う、うん…でも、今日練習した分、明日は能力を使いこなせるようになってるはずよ!」

「そうかな〜…そうだといいなぁ〜…エッグ」


規模が大きすぎる失敗に心が折れたリムさん。

転んだ衝撃で意識を失ったアマ神様。

初日の勝負はこうして終了した。


その次の日も決着は着かず。

四通目、五通目と手紙が増えるたび、人間界のトップニュースは奇怪な現象の報道で溢れていった。

規格外の厄災と、奇跡を操る運命の激戦は3日目へともつれ込んだ。


プルルルル。プルルルル


六通目の手紙を手渡そうとした金剛さんの携帯電話が鳴った。

金剛さんは、電話には出ずハイヒールを脱ぎ始める。

靴を脱いでから電話に出るのかと思ったが、脱いだハイヒールをそのまま耳に当てた。


「私だけど、何かしら?」

「いや、それ電話なんですね…」


どこを歩いてもカッ!カッ!っと音の鳴る機能に加えて、電話もできるとは…無駄にスペックが高いヒールだ…


「ふふっ。わかったわ。では、手筈通りに計画を進めなさい。」


電話を終えて、ハイヒールを履き直した。

ハイヒールが携帯電話って、逆に不便なんじゃないか…


「ふふっ、ようやく決着がついたわ。」


ピンク色に潤った唇を上に上げて、

金剛さんは勝負の終了宣言をした。


「え!?私が転んで…転んだと見せかけて、落とした手紙が届いたんですよね!?」

「違うわ!きっとリムが噴火させた山の溶岩に乗って手紙が届いたのよ!」

「いや、フェイズさん。溶岩に触れた時点で、手紙も郵送先も無くなってると思うぞ。」


「勝者は貴方よ。鈴木。よって、人間界と魔界の勝利とするわ。」


「「「え!?え!?えぇーーー!?」」」

「はぁ〜…やっと家に帰れる〜…」


俺は3日かかった勝負の勝敗がつき、疲れと安堵で雲の地面に倒れ込んだ。

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