第45話 二通目の手紙(天界)
アマ様の落とした手紙は、真っ逆さまに地上には落ちず、上空を流れる風に乗って移動していた。
手紙の乗った気流は、アメリカン合衆国へと流れ、ニューヨーコの高層ビルの隙間を気ままに抜け、貧民街の吹き溜まりに流れついた。
「お兄ちゃ…ん。カリフォルニアロールが食べたい…」
風に吹かれて揺らめく枯葉と同じように、路地でうづくまる兄妹が、その吹き溜まりにいた。
震える手を兄と呼ぶ男の子に向かって、力なくゆっくりと伸ばす。
幼女の痩せ細った腕は、医者でなくとも餓死寸前だとわかる。
「ごめんな…お兄ちゃんが、もっとしっかりしていたら…こんなに苦労しなくていいのに…」
「お兄ちゃんのせいじゃないよ…パパとママがいなくなっても、私を見捨てなかった…お兄ちゃん…大好き...だよ。」
妹を強く抱きしめ、ともに死のうと決意を固めた兄の懐に、金色の手紙は入りこんだ。
「な、なんだこの手紙?凄い金ピカだ!!売ったら高いかも…」
そこからは、トントン拍子に人生は好転。
「おじさん…お願いがあるんだけど…」
「お前は、路地裏でくたばりかけてた子供じゃないか。パンならこの間あげたもので全部だ。
すまないが、ウチの店も来月で潰れる。金がないんだ…ほんとにすまない。」
「ち、違うんだ!パンが欲しいんじゃないんだ!!今日はこの手紙が売れないかなって…」
「お、おい!お前それは!?」
金色の手紙は高値で買い取られ、いきなりできた大金で、食費、家、学費をまかなうことができた。
「お、おい。金剛財閥の人か??この明らかに最重要機密の手紙。買わねーか??」
「な、なんだ君は!?…ん?それは確かに我が財閥の社印…」
人生が変わったのは兄妹だけではない。
手紙を店と自分の財産を全てはたいて買い取った店長は、その手紙についた金剛財閥の押印をネタに、機密情報として財閥に高値で手紙を買い取らせ、メジャーリーグのスポンサーになった。
手紙を買い取った金剛財閥の社員は、手紙を買い取った帰り道に転び、
その衝撃で石油を掘り当て、石油王に。
手紙を幸運のお守りにしていた石油王は、
アメリカン大統領のSPをしていた自分の息子のスーツに手紙をいれた。
「エアコンでオゾンは破壊さre!まじで熱々で地球壊滅の危機で〜th!!でも、そんな地球より熱いのは私こと!大統領!!」
「…⁉︎ Noーー!!!」
ドンッ!!!
その日、演説中の大統領をスナイパーから救った息子は、金色の手紙に銃弾があたり、九死に一生を得る。
あと、名誉勲章式の帰り道で転んで、石油を掘り当てて大統領になった。
「てかさ〜、ウチらのドンちゃん(大統領)金色の手紙で、まじヤバみって感じで〜、ドンちゃん(大統領)になったらしぃ〜よ〜」
「何それヤバみ〜〜!!てか、今日ファンデ変えたの〜〜!」
「…。」
その話をマックでギャルから盗み聞いた悪党集団は、国の国宝「神の落とし手紙」として、ホワイトハウスに飾ってあった手紙を盗み出した。
ところが、逃亡中に手紙は紛失、悪党は根こそぎ逮捕。手紙はまた風にのって別の国の潰れかけた孤児院へと舞い降りた。
そんな幸福のループを三度繰り返した手紙は、役目を終えたかのように気流から外れ、太平洋に落ちた。
今も金色の手紙は海底で眠る。
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