第40話 出来レース
「あなたどこから入ってきたの!?私のプライベート空間は天使さん達も場所を知らないのに!?」
アマ様はとても動揺しているようだった。
俺の前に立った細身に赤黒いドレスの女性。
パニック状態になり、目に映る物全てがモノクロの世界で、彼女のドレスだけが色を帯びて見える。
「そんなこと貴方には関係のないこと。」
「か、関係ありますよ!!私の家なんですからね!?不法侵入ですよ!!」
「あまりに貧相なお部屋でしたので、犬小屋かと思いましたわ。」
「め、名誉毀損罪も付け加えさせてもらいます!!!」
「あら。私と話してるだけで名誉なことなのだから、その罪には問われませんわ。」
「くぬぬ〜!!!」
アマ様のプレッシャーが他に向いたせいか、
少しずつ五感が戻ってくるのを感じる。
「こ、金剛さん。。?」
「もう安心なさい鈴木。ここは
「急に入ってきて勝手なことを言わないでください!」
「勝手なことを言っているのは貴方。魔界の命運を決める重大な会議が、私なしに始まるわけないのよ。」
「くぬぬぬぬ~~!!!」
さすが金剛さんだ。
俺が終始手も足も出なかったアマ様を、やや強引であれど、完璧に自分のペースに巻き込んでいる。
「わーかーりーまーしーた…!!じゃあ、あなたは魔界をどうしたいんですか?私に魔界の必要性を教えてください。」
「ふふっ。貴方は必要な物と不必要な物の差がわかっていないようね。」
「必要な物と不必要な物の差。。。?ですか?」
「その差とは買い手の思考能力でしかないわ。要は物にどのような利用価値があるのか。または、作成者の意図とは違う利用法を見出せるか。買い手の思考能力の差なの。」
「買い手の思考能力の差。。。?何が言いたいのですか?」
「ふふっ、つもり、魔界の必要性がわからないのは、あなたの思考能力が乏しい証拠という話よ。」
「な、なっ!?!?」
眉間に可愛らしいシワを寄せ、真っ赤な顔をしたアマ様は、ふつふつと発光し始めた。
「ですが、魔界の住人は人間を食べる種族が多く存在しますよ!?単純な不利益で考えたら、魔界がなくなった方が人類にとって得ですよね?」
「そうね。でも、なくなって困ることがあるわ。天界は魔界が無くなったのなら、人間界を吸収しにかかるでしょ?」
「…つまり、魔界があることによるメリットもデメリットもあると。」
「そう。だから、今まで中立を貫いてきたの。」
「でしたら、人間界の王が天界にいるのは悪手でしたね。ここで鈴木氏を操り人形にしてしまえばいい話なのですから。」
「それも一つの手ね。」
「あっはははは!!でしたら、私のプランは初めから変わりません。このまま鈴木氏を監禁及び玩具にし、魔界を人間界と共に滅ぼします。」
「そうなるでしょうね。このやりとりが魔界と人間界の権力者にオンラインで公開されていなければ…ね?」
金剛さんは話しながら、赤黒いドレスの胸に飾り付けられたバラのブローチを指さす。
どうやら、ブローチには小型のカメラのような機能があるようだ。
さすがは金剛財閥の御曹司。抜け目がない。
「え!?そんなことできるはずないです!!だって、天界にネットワーク環境なんてないですから!!」
「ふふっ、天界に籠りきりのお嬢さんには、文明の進化に疎いようね。さぁ、前言撤回できないようなら、魔界と人間界で天界を滅ぼすことになるわよ。」
「ぐぬぬぬぬぬ〜!!!」
ブローチのカメラを疑っているようだが、天界に引き篭もっているのが、図星だったのかオンラインカメラの可能性を拭いきれないみたいだ。
「わかりました。では、プランを変更しましょう…魔界を滅したい天界と魔界を残したい人間界と魔界で勝負をしましょう。武力ではなく平和的で平等な勝負です。その勝負に勝った方の意向に従うというわけです。」
「その提案を許すわ。ただし、勝負方法は私が決めるわよ。」
「いいでしょう。どうせ天界が勝つに決まってますから!」
「ふっ、話はまとまったわね。あとは貴方に任せるわよ鈴木。王たる才覚を私に見せなさい。」
俺の混ざる余地のない会話だったので、いつの間にか傍観者の視点になっていた。
突然話を振られて我に返る。
「あ、あぁ!人間界で一番平凡な力見せつけてやるよ!!」
「ふふっ、楽しみにしているわ。」
妖艶な光を放つ瞳が真っ直ぐ俺を捉えている。
「それでは、勝負内容を説明しますわ。」
この世の命運を握る、重要な勝負方法がもう決まっているのか!?
まるで勝負方法を端から決めていたかのような迷いのなさだ。
金剛さんは、この会議の成り行きを最初から最後まで計算しきっていたのかもしれない。
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