第38話 ホワイト企業とペガサスは迷信
「天使さん達!!何をしているのですか!目をつぶってないで、早く鈴木氏を独房に連行してください!」
「アマ様が眩しくて目を開けられねーんです!」
「アマ様!興奮すると光がでる癖直してくだせぃ!」
「天界予算を削って、買い揃えたサングラスはどうしたんですか…?あれはあなた達をチョイ悪おやじにする為に買ったわけではありませんよ…?」
ぷすぷす…
さらにアマ様から放出される光が強まり、肌が少し焼け焦げる。
恐らく興奮…というか憤怒しているのだろう。
「わっ!やってもうた!アマ様お許しを!!」
「バカっ!早くアマ様にサングラスをおかけしろ!!」
「私にサングラスかけてどうするんですかっ!!もういいです!私が鈴木氏を連れて行きます!!」
「いや!?待て!アマ様の麗しい手が、汚い男に触れるなんて!!」
「そうだ!触るならワイを!!ワイを連行してください!!」
「いや!ワイを連行してくれ!!」
これが天使の実態…ただのスケベなおっさんじゃないか…
天神が生真面目になる理由はこれか。
こんな私利私欲の為に生きる天使が、周りにいたのでは、嫌でも口うるさい性格になってしまう。
「嫌よ!ようやく取り返したんだから!絶対離さないわよ!」
「私もフェイズと鈴木くんを守るためなら!て、天神でも容赦しない!」
「ふ、二人共…」
「では、強行手段をとらせていただきます。ここで立ち話をしていても埓が明きませんから。」
パチンッ!
天神が指を鳴らした。
真夏の太陽のような熱が一瞬で消えて、急に洞窟の中に放り込まれたように暗い冷気を感じる。
「いつまで目を瞑っているのですか。もう移送を完了しましたよ?」
「え…?あれ…?」
「ふふっ、お疲れ様ですっ!ちょっと急ぎの仕事を終わらせますから!その間くつろいでてください!」
「え…?な、なんだ?」
どうやら、指パッチンで消えたのは強烈な光だけではなかったようだ。
俺を胸で挟んでいたフェイズもリムもどこかに消えた。
まだ目に強い光を受けた症状が残っているため、自分のいる場所の状況がわからない。
「しかし、今、俺に話しかけてきたのは誰だ…?」
天神の声に似ていたが、いつものような張り詰めた、生真面目な声ではなく、甘く優しい声だった。
例えるなら甘え上手なお姉さん?
確実に今のは天神ではない。
「ふふっ、私ですよ?あなたの知っているアマテラスです。」
「俺の心の声に会話している!?ってことはアマテラス様!?」
「あまりに大きな声でしたので、ついつい。」
そんなに俺の心の声は大きいのだろうか…
というか…
風の音も、人の声も、何も聞こえない…音がない場所だ。
自分の心臓の音が聞こえそうなほどの静寂。
一体ここはどこなんだろうか。
「へ〜!本当に普通の反応ですね!あははっ!」
先ほどまでの固い表情ではなく、太陽の花みたいな、明るくて可愛い笑顔だ。
もしかしたら、仕事中はサバサバしているが、プライベートでは温和なタイプなんだろうか。
「?普通の反応…ですか?」
「そうです!あなたは、この世で一番平凡な人間なんです。なのに人間界の王でもあります。そんな異質な王に各界は、あなたの噂で持切りなんですよ?」
「そ、そうなんですか…?」
「ええ。ですが、それも今日までですけどね!」
「へ?なぜです??」
「なぜなら、人間界は天界と吸収合併。そして、人間界の王、鈴木は私のこ、こ、////」
「え??こ!?なんですか?」
も、もしかして、恋人か!?
天神様と結婚して、人間界と天界が合併するのか!?
受験する高校を決める以上の重要な選択をしたことがない俺に、
人間界始まって以来、最大の選択を迫られている気がする…
だが、あまり悩まずに答えを出せそうだ。
「一応聞かせて頂きたい。人間界と天界が合併すると何が変わるんですか?」
「特にないです。Tポイントカードが入会費無料になるかもしれませんが、それぐらいしか変わりません。」
それを聞いて俺の決意は固まった。
俺は己を神に捧げることにより、Tポイントカードの入会費を無料にすることにした。
入会費無料。これは人類の進化にとって、飛躍的な一歩となるだろう。
これも人類の王である者の定め。
断じて、アマ様と結婚するのが目的ではない!!
「あ!あと!魔界が滅しますね!」
アマ様との結婚式の入場曲を考えていた俺に、一番聞きたくなかったフレーズが聞こえた。
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