第36話 気持ちの問題

お嬢は自分の気持ちを誤魔化そうとすればするほど、ズプズプと床に飲み込まれていく。


「ぐぎぎぎぎぎ!!」


俺は自慢の豪腕でお嬢を持ち上げようとするが、お嬢の体は微動だにしない。


「ちょ、ちょっと!キャシー!ストップ!ストップ!私の胴体が伸びちゃう!!スタイル悪くなっちゃう!!足引張りなさい!足!!」

「はぁはぁ…お嬢。足引っ張ったら益々埋まっちまいますぜ。。」

「うっふふ。ご主人様の為に働く召使い。。顔といい体型といい、なかなか可愛らしいじゃないか。味見しちゃおうかしら。うっふふ。」

「う、うげぇ…気持ちわりーな!!」


ねっとりとした視線を暗闇から感じて、全身に鳥肌がたった。

ミノタウロスの臭い乳を頭から浴びた方が、まだいい気分だぜ。


シュタタタタタタタ!!

カッ!カッ!カッ!


「なっ!?てめぇら!!なんでこの床を平然と歩いてやがる!!」


金剛と明は、俺たちの話や状況を一部始終見ていたくせに、まったく動じることなく試練の間の床を歩き始めた。こいつらも鈴木と結婚を望む女王である以上、床に飲み込まれるのは必然だ。


シュタタタタタタタ!!

カッ!カッ!カッ!


試練の間の暗闇が二人の後ろ姿を包んでからも、足音は確かに聞こえてくる。


「な、なんで落ちやがらねーんだ!?!?」

「あららら!?いや〜ん!そんなはずわ!あなた達!鈴木のことが好きで天界に来たんじゃないのね!?痴女どもめ!放っから鈴木ではなく、王の妻になって権力を手にすることだけが目的ね!?」


確かにオカマ野郎の言ってることは正しいだろう。

お嬢は鈴木と会って日が浅い。

まだ、鈴木のことを好きというより、異性として意識している程度の感情だろう。だが、そんな微々たるお嬢の感情に敏感に反応する床。


「あいつらマジで鈴木のことなんて、どうでもいいらしいな。。」

「ピエロ!!なに誤解してるかわかんないけどっ!私は鈴木に恋なんてしてないよ!私は最初から鈴木を愛してるもんっ!だから、こんな床に吸い込まれることはないんだよっ!」

「へっ…?」

「ふふふ、貴方が何を勘違いしようと興味はないけれど、特別に教えてあげる。私が鈴木に恋しているのではなく、鈴木が私に恋をしているから、床の魔法に影響されず私は前に進むことができるの。」

「こ、こいつら…」


さっきの誠実さを問われる試練でも思ったが、もはや頓知の力を試されているように感じる。

あと、金剛。。鈴木がお前に片思いしているだけって言うけど。片思いされている方も勝手に恋ってやつに巻き込まれているもんじゃねーのか?


「ちっ!もうちっと恋ってやつをしとけば、俺にも頓智の一つや二つ浮かんだんだろーな。ふっ!な~んてなっ!」

「ちょっとキャシー!!ポエムな気分に浸ってないで!早く鈴木とリムをぅ助けなdfmkfmgl…」


自分よりも好きな人と大切な友達を優先するお嬢は、健気な恋する乙女としか言いようがなく。

瞬く間に暗い床に消えていった。


-------↓鈴木チーム↓-------


「…っということがありーーー!!私は床に飲み込まれーー!!気づけば、ここで飛んでまーーーーす!!大声出す女の子でも嫌いにならないでくださーーーーーい///!!」

「…なるほど。だから、ずっと小声で話をしていたのか…しかし…リムさんって誰のこと好きなんですか?」

「や!!やだーーーーーーー//////!!!」

「うげーーーーー!?ちょ!ちょ!ちょ!ちょっと!!リムさーーーーーん!!」


修学旅行の夜では定番とされている、詰め寄った質問をしようとすると、リムさんは強烈な羞恥に襲われ、自分の顔を両手で覆い隠し、

俺を寒天砂漠にぶん投げた。


「リムさーーーーーーーん!!死ぬっ!!死ぬってマジでーーー!!」


自分のしでかしたことに気がつき、リムさんが追いかけてくるが、自分で投げた球を自分でキャッチするようなものだ。

俺とリムさんとの距離は縮まらない。

この高さから落ちれば、いくら死ぬことのない天界とはいえ、俺の肉体は肉塊へと変わり、残った俺の魂は寒天の海の一部となるだろう。

最後に肉眼で見る光景は、絶世の美女が必死に俺を助けようとする姿。

ぜひ寒天になったあかつきには、こんな女の子に食べられたいな…






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