第33話 痴女な攻略法

ズゴゴゴゴゴ…


「先ほどのお手付きは解除されたが、貴様等まだ我が問に挑むつもりか。」


この世で1番美しいのは自分だと密かに思っているリムを、心底馬鹿にして笑っていた石像は、ゆっくりとこちらを見て問いかける。


「あたり前だよっ!!」

「勇者より先に!私に問を出しなさい!!」

「のぅのぅ…もう諦めてワシの麻雀仲間にならんかの~?別嬪さんの二人なら大歓迎なんじゃが~。」

「「うるさいジジイっ。」」

「ジジ…」


パタン!


夏の終わりの蝉のような声を出して老天使は気絶した。


「では、最後の問いだ。この世で一番凡人なのは…」

「「鈴木ーーーー!!!」」

「ですがー、食べられないパンはな~んだ??」

「「…え?」」

「ちっ!狡い手を使いやがるぜ…」

「ふふふ~ん!貴様等、またお手付きをしたな?ふっふふ~ん!もうこの場に回答者はいない。よって、貴様等は次の入門希望者が来ない限り回答兼を得られない。」

「つ、次って、いつ入門希望者が来るのよ。。」

「ワシがここに配属されてから、初めての客じゃからのぉ~。だいたい千年後じゃろうな。ヒッヒヒ!」


いつの間にか意識を取り戻した老天使が、唐突に現れた、両手に花の麻雀ライフを想像し、意気揚々としている。


「…勇者。やるよ。」

「…」


シュタタタタタタタタタタ!!

ッズッバーーーーーーーン!!


「な、なにをする気じゃ!?」


二人の性格を知っている俺からしたら、老天使のリアクションは鈍感にしか思えない。

あの性格の捻じ曲がっているくせに誠実さを求める門番を、倒しに飛び出していったのだ。


「お嬢!!怪我だけはするんじゃねーぞ!!」


ズッギャギャギャギャ!!!


石を小指だけで砕ける二人だ。石像なんて1分もあれば、金平糖よりも小さな粒に変えてしまうだろう。


スカッ!パシッ!


「勇者の野郎!何マヌケこいてやがる!?」

「なんじゃい。馬鹿力ちゃんは腰巻きなんぞ掴みおって。ハレンチじゃの〜」


「ホホッ若い若い」と喜ぶ老天使の横で、俺は違和感を感じていた。

魔界で上位の戦闘力を誇るお嬢を、力で凌駕する勇者だぞ?

攻撃を外すことなんてあるだろうか。


「勇者!!なにしてんの!?」

「悪魔はそのままコイツを引きつけといて!!ふんっ!ふんっ!ふんぬーーー!!」


上空でお嬢と石像の激しい戦闘が行われる中、勇者はずっと石像の腰巻きに捕まり、激しい懸垂をしている。

巨大な股間の真下で激しい懸垂をする美少女。

モザイクなしには見れねーぞ。一体勇者は何を…

ま、まさか。


「ホォホォ!若い若い。」

「ヒャララ!たしかにハレンチには違いねーぜ!」


「き、貴様!我の聖なる腰巻きに何をっ!?そ、そんなことしたら!そんなことしたら!」

「ふんっ!ふんっ!ふんぬーーー!!」

「あっ///あっ///そんなことされたら!ひ、ひ、非番になっちゃうよ〜〜〜〜/////!!」

「ふんっ!ふんっ!ふんぬらぁーーー!!!」

「あぁ〜あ〜〜〜〜ん/////」


ズッシーーーーーーン!!!


門番の聖なる(自称)腰巻きが雲の平原に落ち、最初の設置されていた石像に戻った。股間を開放的になり非番モードになったためだ。

その表情は心なしか満足げ。


「ゆ、勇者!?ちょっとアンタやり過ぎよ///」

「アッハハ!倒すよりも早いと思ってさっ//!」

「おい!!!嬢ちゃん達!ピロートークは後にしな!扉がしまっちまうぜ!!」

「「え!?ヤバいぃーーーー!!」」


慌ててトコトコ走り始めた俺を、お嬢が両手で抱え込み飛行する。

いつ以来だろうか、お嬢の胸に抱えられるなんざ。

幼少の頃とは違う大人な胸の反発に、時の流れとお嬢の成長を感じる。

門の閉まりかける扉から溢れる聖なる光のせいなのか、酷く穏やかな気持ちだ。

俺を運んでいる者は、本当は悪魔の女王ではなく天使なのではないだろうか。


ズゴゴゴゴゴ…ゴーーン!!


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だ!」

「これは肉だ!」

「…ガチガチガチガチ!!」


獄盛寒天の刑が下ってからどれくらいたったんだ…

一日か!?一週間か!?

苦痛だ。

寒天の上で為す術なく、腐るだけならまだしも、加齢臭真っ盛りのおっさん天使に囲まれて、永遠とおやじギャグを聞かせ続けられるなんて…

寒い。小刻みに震える体が少しづつ寒天に埋まっていく。

一秒も早くこの空間から出なくてはならない。


「…ガチガチガチガチ!!だが、どうやって…」


ヒュッ~ロロロ~~~!!!

ボニョーーーーン!!


俺のすぐ隣に上から何かが降ってきた。

落下物の衝撃で、寒天しぶきと地震が巻き起こる。


「ぐわぁーー!?埋まる埋まる!!!」

「はぁはぁ…ちょっと何?この床…」

「その声は!?リムさん!?」

「えっ!?鈴木くん!?何してるのこんな所で!」

「リムさんと同じだよ。リムさんも何か悪いことをして、この寒天にぶち込まれたんだろ?」

「わ、私は悪いことなんてしないですよ!?」

「じゃあ、どうやってここまで来たの?」

「…」


俯いて口ごもるリムさん。

首下まで寒天に埋まってしまっているリムさんを見ていると、俺の中に一つの欲望が湧き上がった。


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