第29話 珍道中開始
「あ…そうなんですね…でも!映像なんて見る必要ないじゃないですか?リムさんが変態なのは、充分ご覧になりましたよね!?」
あの教室で起こったリムさんへの虐め映像を絶対見られてはならない。。
確実に俺はアマテラス様の信用を失い、罰せられるだろう。
「アハハ!なぜです?これで貴方の罪が、また一つ消えるのですよ?正しい者が救われる世の中にするのが、私の101個目の役目であるのです!アハハ!」
アマテラス様は完全に俺を信用しきり、愛らしい笑顔を見せつつ、ワールドレコーダーの作動準備に取り掛かっている。
「アマテラス様…野暮用とかないんですか?」
「へ?ないですよ!?」
「では、100円あげますんで、ディズニーランドでも遊び行ってください!」
「1万円の間違いではないでしょうか。」
「わかりました!じゃあ、この場で逆立ち10秒出来たら私の証言を無条件で認めてくださりませんか?」
「意味がわかりません??」
俺の持っている全ての方法を使っても、アマテラス様の意思を揺るがすことができない。
これが神の力か…
「そ、そんなに言うなら、あっち向いてホイ三本勝負して、俺が勝ったら証言を認めてください!」
「そんなに言ってません。。さっきからお加減でも悪いのですか?もう投影の準備ができましたので再生しますよ?」
ブブッ!
アナログテレビのような形をしたワールドレコーダーは、白い天井を巨大なスクリーンのようにして、俺のいた教室を投影し始めた。
「きゃっはは!ほらほらリム!ファイヤーパフォーマンスすらできないようじゃ、厄災なんて絶対操れないわよ!?」
「全っ然ダメっ!井上陽水の雄大さを、もっと全身で表現しないとっ!なんの為に白タイツに着替えたか考えてよ悪魔っ!きゃははっ!!」
「おいおい!明!井上陽水は白タイツ着てないからな?それよりバニーガールの衣装の方が面白…じゃなくて、井上陽水っぽいんじゃないか??ぐへへへ!!」
ぐわぁーーーーー!!俺はなんてことをしたんだ!!完全に欲に目が眩んでいた!!
「こ、こ、これは!?なんてことなの!?!?こんな悍しいことが人間界で行われているだなんて…」
「あ、あ、あの!?これは違うんです!!ちょっと仲間内で…ふ、ふざけ過ぎちゃったって言うか!その〜…」
「…」
アマテラス様は映像から目を背けるように、俯いて黙ってしまい、俺の必死の言い訳はまったく耳に届いていないようだ…
「判決を下します…」
「ヒュ〜!アマ様ノ半ケツダゾーー!」
「アマ様ノ半ケツ!?見タイ!!」
「アマ様ガ半ケツニナットルンカ!?痴女ニナットルンカ!?」
「天使さん達も、後ほどセクハラ罪で裁きます。」
「「「ウゲッッ!?」」」
「鈴木。あなたの下劣な行い。しかと確認いたしました。よって、その体朽ちるまで
やばい!やばい!やばい!
ここに置き去りにされるってことだろ!?
罪重すぎじゃないか!?
こんなところで死にたくない!!
「ここは天界です。死というものはなく、肉体が尽きても魂がここに囚われ続け、あなたの下にある寒天となるのです。」
「えっ!?じゃあ、この一面に広がる寒天は…罪人の魂!?」
「これから永遠に悔い改めなさい。それでは失礼します。」
「ちょっ!ちょっと待ってください!!刑が重すぎるだろ!?減刑を!減刑をお願いします!!」
アマテラス様の慈愛に満ちていた眼差しは、いつの間にか冷酷なものに変わっていた。
フワサッ!フワサッ!
アマテラス様は柔らかな風切り音を放ちながら上空へ上がっていき見えなくなった。
「う、嘘だろ?こんなとこで人生終わっちまうのかよ…」
悔しさもあったが、突然突きつけられた無慈悲な死の宣告は、先ほどまでリムさんの着せ替えで大笑いしていた俺にとっては、受け止め切れないほど衝撃的な宣告だった。
ピトンッピトンッ!
気づけば頬を流れる大粒の涙が、大地のように広がる寒天に塩の味つけをした。
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「うわぁ~~ん!!鈴木が死んだぁ~~~~~~~!!!」
「勇者うるさいわよ!?まだ鈴木は死んでないわ!」
「でも、フェイズ?人間界で言う死の概念には当てはまってると思うわよ?」
「ぁぐまの嘘づぎぃ〜〜〜!!」
鈴木が天界に連行されてから、明は泣き続けた。
魔界に鈴木が連れてかれても泣かなかった明が、なぜ天界に鈴木が行くと号泣するのか、キャシーは理解できずにいた。
「明ちゃんよー!魔界に行くのも天界に行くのも同じようなもんだぜ??あんたらが他の国に旅行するようなもんなんだからな。」
「ぐすっ…じゃあ、私も天界に連れてってよっ!鈴木のとこにつれてってよっ!…ぐすっ」
まさか、この嬢ちゃんは天界とか魔界とか関係なしに、鈴木がいない世界だから泣きじゃくってるって言うのか?
違法ドラッグみたいな中毒性でもあんのか鈴木には…
「お嬢。コイツ天界に連れてきましょう。面白いことになるかもしれねー。ヒャララ!」
「たしかに。悔しいけど勇者は、かなり強い。天使との戦闘で必ず役に立つ。この際、鈴木救出の確率が上がるなら、勇者だろうが、ミミズだろうが連れて行くわ。」
それを聞くと、明は涙を急いで拭いお嬢(フェイズ)を真正面から見た。
「ふんっ!悪魔なんかに礼なんて言わないよっ!でも、悪魔の翼もぎ取るのはもう少し先にしてあげるっ!」
明は天界に行けるとわかると、先ほどまでの泣きじゃくる子供のような表情から、戦地に向かう侍のように引き締まった顔になった。
「…あと、鈴木を助けるチャンスを私だけが持っているのは、フェアじゃないじゃん…」
「え?フェイズ今なんて?」
「…なんでもない。」
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