第27話 紫の天神とカレイな天使
「あっぢぢぢぢぢーーーー!!!リム逃げてーーーー!!」
「ぎゃあーーーー!!全身タイツあっづぃぃいーーー!!」
教室に光が満ちると、俺たちは殺虫剤を浴びた虫のように床を転げ、悲痛の叫びをあげた。
「鈴木ーーーー!!天国では私にもっと優しくしてーーー!!ご飯奢ってーーー!!もっとたくさん遊んでーーーー!!」
「ぐわぁーーーーー!?あぁーーーああぁぁ〜…??」
あれ?あんまり熱くない…?
眼が開けられないほどの光を全身に浴びているが、真夏程度の気温で、死ぬような熱気では到底なかった。
「お、おい!みんな落ち着け!光を浴びても全然平気だぞ!?」
「リム…鈴木…ごめんね。守ってあげられなくって…」
「フェイズ…天国では私があなたを守るから…ね…」
「鈴木…アイス食べたい…」
各々が人生最後の言葉を残していく。
死の間際は、自分の心を透かしたように素直な言葉が出るというが。。
なぜ人間より悪魔の方が心が綺麗なのか…
明にフェイズとリムさんの爪の垢を煎じて飲ませてやりたい。。
ぴぴぴっぴ~~~~~~~~~!!!
突然窓の方から大きな高音が鳴り響いた。
「な、なんだ!?笛の音!?」
「笛!?フェイズ笛ってなに!?」
「えっと~、たしか幼い植物のことよ!!」
「いや、フェイズ。それは苗だね。お前ら井上陽水がわかって、なんで笛がわからないんだ。。?」
「馬鹿な悪魔ねっ!フエは鍋にしてヨシっ!刺身にしてヨシっつ!至高の魚のことだよっ!!」
「明。それクエな。お前は至高の馬鹿だな。。」
ぴぴぴっぴ~~~~~~~~~!!!
「いい加減にしてください!!!界制法第9条!人、魔物、天神が過度に干渉することを禁ず!あなた達はこれに反します!!今すぐ適度な距離を取ってください!!」
また笛の音が鳴り響き、光る球体の方から
「うるさいわね!!誰よアンタ!!」
「くっ!下劣な魔物ですね!あなたに名乗る名などないです!」
「はあぁ!?」
「っと言いたいところですけどっ!界制法第22条に反しますので名乗ります!」
「じゃあ、最初からスッと言いなさいよ!スッと!!」
「…あなた達…どういう教育を受けてきたのですか!天神が名乗ろうとしているのですよ!?コッチを見てください!コッチを!!」
「「「アンタがピカピカしてて見れねーーーんだよ!!!」」」
なぜだろう。会って数分もたっていない、ましてや容姿すら知らない天神とやらに、少し苛立ちを感じる。
「はっ!私ったら!申し訳ありません!これでいかがでしょうか!」
瞼ごしに感じていた光と、体を包んでいた真夏の熱気が消えた。
恐る恐る目を開けて立ち上がると、全身紫色の人が俺の前に立っていて面食らう。
「うわぁぁああ~~!!悪魔ぁあ!?」
「きゃっっ!!」
ッッボーーン!!!
全身紫色の人にびっくりして体をのけぞると、すぐ後ろにいたリムさんの小ぶりのスイカのように大きな胸に頭がぶつかる。
「ちょっ///!鈴木くん///!?」
「ご!ごめ…///!!」
ズガーーーーーーン!!
リムさんの胸にある二つの高山は、白タイツにより極限まで凝縮され、俺の頭をパチンコ玉のようにはじき返し、前にいた紫色の人の額に着弾させた。
「うげっっ!!いっったいです~~~!!」
「ご、ごめんなさい悪魔さん!!」
「誰が悪魔さんですかっ!!天神を悪魔呼ばわりしないでくださいっ!!」
「全身紫色だったものでつい!!すいません!」
「だから!誰が紫色なんですか!!」
「鈴木っ!紫色に見えているのは、強い光を見た後に起こる陽性残像のせいだよっ!だから、その人はたぶん白いよ!」
「…へ、へ~~。まぁギャグだったんだけど…ね?」
なんだよ陽性残像って、俺は多重残像拳しか知らんぞ。
というか、陽性残像がわかってクエが分からないのはなぜだ。
いつも馬鹿にしている人から間違いを正されると、素直になれない現象って名前あるんだろうか。。
「信じられません!!あなたは2秒で三つもの大罪を犯しました!界制法第10条、他界人への…ぇっ…ちな行為を禁ず!第11条、他界人への暴力行為を禁ず!第32条、他界人への名誉棄損行為を禁ず!これらに反しました!」
「いや、ちょっと何言ってるのかわからな…」
「よって!
「「「はぁあ~!?」」」
ズゥゴゴゴゴォーーー!!!
地鳴りだっ!
「な、なんだっ!?」
「鈴木!私の翼の後ろに隠れて!」
「ずるいよ悪魔っ!!鈴木!私の翼の後ろに隠れてっ!!」
「勇者に翼があるなんて聞いてないわ!?」
「いや、リムさん。明に翼はないぞ。」
地鳴りが次第に大きくなる。
いや、地面も揺れているように感じるが、震源は大地ではなく天地からだ。
天鳴りだ!
ズゥゴゴゴゴォーーー!!!
ボトッボトッボトッ!
「「「ゼェ~ハァ~ゼェ!ウォ~エ~…」」」
「「「ゼェゼェゼエ!ゲッホゲホ!」」」
「こ、これは…」
「鈴木なんか臭くないっ!?」
「いつ見ても醜いわね。。」
天鳴りの正体は白い翼の生えた小さな無数の天使だった。
フェイズの悪魔を思い出すサイズ感だが、幼い子供の容姿をした悪魔とは違い、天使は中年太りしてランニング着たおっさんだ。
小さいおっさんがたくさん窓に張り付いている。。
「「「ゼェ~ハァ~ゼェ!ウォ~エ~…」」」
「「「ゼェゼェゼエ!ゲッホゲホ!」」」
「そ、それではアマテラス様!罪人を連行します!」
「はい。VIPの監獄に入れてくださいね!」
「はい!」
そのまま汗だくの小さいおっさん達に飛びかかられ体が宙に浮き始める。
暴れてはみたものの、もはや指一本すら動かすことができない。
俺は窒息するほど強烈な加齢臭から逃げだすかのように意識を手放した。
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