第17話 魔界に枕投げの文化はない
「すーぴーすーぴー」
「すーぴーすーぴー」
少し唾液を垂らし、大の字で眠っているフェイズさん。
寝返りをうつせいか、着崩れしているため、小ぶりのスイカほどある豊満な胸部が、白いワンピースから溢れようとしている。
気絶したついでのように眠り始めたリムさんは、フェイズさんとは対照的に、自分の大きな翼に包まり、羽根でできた黒い卵のようになって眠っている。
睡眠中も他人からの攻撃を警戒している眠り方だが、起きている時の怯えた表情はなく、純粋無垢な少女を思わせる表情だ。
性格は対照的だが、仲の良い姉妹のように寄り添って眠る彼女達を、もう少しだけ眺めていたい。
「ちっ、魔界の住人が人間なんぞに世話になるわけにはいかねー!どっかに失せやがれ!!」
「キャシー1人で大丈夫なのか?」
「うっせーぞクソガキ!!さっさと失せないと下駄箱に放り込むぜ!?ヒャッララララララララ!」
「わ、わかったよ!でも、なんかあったら言ってくれよな!」
もう牛丼のことしか頭にない
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「う~お腹いっぱい~~!鈴木おんぶして~!」
「人の金で、あんだけ食ったら腹いっぱいになるだろ…自分で歩け。」
明は牛丼を5杯たいらげた。
美味そうに飯を食べる明は、見ていて気持ちがいいが、自分の財布と相談していなかった明を俺は許さない。
「だってだって!今日は私大活躍だったじゃない!?機嫌直してよ~!」
「はぁ…」
両手をワタワタと振り一生懸命弁明している。
確かに、金界の女王に拉致されそうになった時も、フェイズさんとリムさんに拉致された時も、明がいなければ、俺は今頃どこかの世界の美しい女王と結婚させられていたかもしれない…
「…ん?待てよ?超美人と結婚できるなら、別にそれで良かったんじゃないか?」
容姿は美しく、気立ても良く、お金持ちである女王達。
考えれば考えるほど、女王の思い通りになった方が幸せだった気がする…
「おい明!俺って拉致された方が幸せだったんじゃ…」
「じゃあ、また明日ね!鈴木!あっはは!」
悪魔の女王が卒倒するほど疲労困憊していたのに、明は笑いながら走って自分の家に帰って行った。
予想していた以上に超人的な力を見せつけられて、明の力量を計りきれていなかったと感じた。
「…あいつ。本当に勇者だったりするのかもな。。」
ガチャ
ようやく一人暮らしをしているアパートの部屋に着く。
「ふぅ…長い一日だったな~…」
ベットに横たわるとすぐに力が抜けていき、泥のように眠りについた。
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「ちょっと!フェイズ!押さないで!」
「私じゃない!キャシーが押してるのよ!」
「ヒャッララララララララ!喜んでんじゃねーか!」
…朝か?
何か騒がしいな。
「ちょっと、二人共辞めっ…きゃっっ!ぶっぶぶぶぶぶ!!」
「きゃっ!ちょっとリム!!」
「ふ~~!やるじゃねーか!お嬢も負けてられませんぜ?ヒャララ!」
起きたばかりの寝ぼけ眼で辺りを見渡すと、リムさんが俺のヘソに空気を送り込んでいた。
「お、おはようございます。」
「きゃあーーーーぁあ////!!」
俺が起きて驚いたリムさんは、俺の部屋の襖の中に隠れてしまった。
「あの。また俺が死んだと思ったんですか?」
「ふっふふ!違うわ//リムがただキスしただけよ///」
パンッッ!!
「ち、違うわ!!フェイズが押したからよ//!!」
「リムは、もう何回もしてるんだからいいじゃない//」
「ち、ち、痴女みたいに言わないでっ!!」
顔を真っ赤にしたリムさんが、襖を思い切り開けて出てきた。
そろそろ彼女達に人間の口は、お腹にはないことを教えた方がいいな。
「あの、実は人間の口はお腹にはな…」
あることに気がつき、人間の体の構造を教えることなど、どうでもよくなった。
なんで、フェイズさんは俺の学校の制服を着ているんだ?
「さっ!!アンタ達!うだうだ言ってないで、鈴木の学校に乗り込むわよ!!」
「「ええぇぇーーーーぇえ!?」」
フェイズさんと同じ制服を着ているリムさんも、なぜか驚愕している。
「ウチの学校に通うつもりですか!?」
「そうよ?あなたの恋人を屈服させて、リムと鈴木を結婚させるためにね!」
「え?違うよ!鈴木くんの恋人を根絶やしにして、フェイズと鈴木くんが結婚するためでしょ。」
「俺の架空の恋人が可愛そうですね。」
何度も言うが俺に恋人なんてできたことない。
彼女達は何を根絶やしにしようというのか。。
「はぁ、まだそんなことを…まぁいいわ、とりあえず鈴木の恋人を倒しに学校行くわよ。」
「そうね。話はそこからよ。」
「二人共ホントに人の話し聞きませんよね…」
俺の居もしない彼女を倒しに、意気揚々と俺の家を出て、学校へと向かう二人。
「まぁ、あんなデカイ翼のある二人が、人間と同じように、学校に入れるはずないから大丈夫か。。」
「ヒャッラララ!そいつはわかんねーぜ?せいぜい楽しみにするこったー!」
最後にキャシーが高笑いしながら部屋から出て行った。
「何しに来たんだろうなぁ…」
トイレに行こうと立ち上がると、黒い羽根と俺の下着が散乱した部屋に気が付いた。
「これは…」
だいたい何があったか予想がつく。
(これが人間の雄の下着ね~//)
(ちょっと!ダメよフェイズ!)
ポイッ!
(ちょっと//!投げつけないでよ//!!このっ//!)
(きゃっ//リムの変態っ//!)
といったように、フェイズさんとリムさんがパンツの投げ合いでもしたのだろう…
「こんなのセクハラじゃないか…///」
美女達が俺の下着を投げ合う姿を想像して、顔を赤らめながら学校に行く準備をし始めた。
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