第13話 魔王の放屁
「だ、大丈夫ですか!?これよかったら使ってください。。」
大粒の涙をこぼすリムさんの瞳は、半分凝血した血の色をしていた。
俺がハンカチを差し出すと、リムさんは少しの間状況を理解できず、きょとん、、としていたが、静かにハンカチを受け取った。
「あ、あの。。涙拭かないんですか?」
「くぅくっく…」
リムさんはハンカチを受け取ったものの、そこからピクリとも動かない。
…マイペースな人なのか?
フェイズさんはその様子を、笑い声を抑えて嬉しそうに眺めている。
初対面なのでマイペースな人なのか、冗談でやっているのかわからない。。
三度瞬きをしても状況は変わらなかった。
俺はついに我慢しきれなくなり、リムさんに渡したハンカチで、大粒の涙を拭き始める。
「きっ!!」
「え?なんて言っ…」
「きゃぁーーーーーー!!!」
ズバッッツチーーン!!!
可愛い女の子の綺麗な手が俺の頬に触れた。
きっと、俺の頬に触れた瞬間、化学反応でも起きたのだろう。
どこの相撲部屋でも聞いたことがない、凄まじい張り手の音がした。
「リム!!何してんの!?」
「だって!だって!攻撃だと思ったんだもん!」
急いで駆け寄るフェイズさんの声を最後に、俺は気絶した。
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「鈴木ーー!!カムバーーーーック!!」
「はぁはぁ…ぶぶぶぶぶぶぶぶ!!」
目を覚ますとフェイズさんが俺の名前を叫んでいた。
…リムさんからは、圧縮した空気が吹き出る生理現象の音がしている(放屁)。
いくら凄い美女だといっても、残忍な生物しかいない魔界を統べる魔王だ。きっとどんな生物よりも残酷な心の持ち主なのだろう。
そんな残酷な魔王が、放屁を我慢するわけがない。。
「リム全っ然ダメ!!もっと腹に力入れて空気出さないと!!」
「だって、恥ずかしいよ!もうフェイズ代わってよ!」
「わ、私は無理よ!///リムは魔王なんだから、責任もってやんきゃダメよ!///」
「ぐすっぐすっ…そうよね、私のせいだもんね。。ぶぶぶぶぶぶぶぶ!!」
この人達俺が気絶してる間に、大魔王らしい放屁の練習してるのか?
悪魔と魔王はここまで残酷で、非常識な生物なのか!?
その時、ヘソの辺りに違和感があることに気づく。
「はぁはぁ…ぶぶぶぶぶぶぶぶ!!」
「リム…あんたはやっぱり…」
「あの、、俺のヘソがどうかしましたか?」
「「うっきゃあーーーーーーー!!」」
ヘソの違和感の正体は、リムさんが俺のヘソに唇を押し付けて、空気を送り込んでいるからだった。
「あの、何やってたんですか?」
俺の意識が戻ったことに驚いて、リムさんは換気扇の中に隠れてしまった。
「あんたの蘇生に決まってるじゃない///!」
「ヘソに空気を送り込むのが?」
「そうよ!呼吸していなかったから人工呼吸をしたの!授業で習ったこともあったし//?」
「ははは…人間がヘソで呼吸するって習ってるんですか?」
「わ、私にお礼はいらないわよ!お礼を言うなら、ふぁ…ファーストキスを捧げたリムに言ってあげて…///」
ガタッガタッガタッ!!
ズダーーーン!!
ファーストキスという言葉に、あからさまに動揺したリムさんが、換気扇から落ちてきた。
「んんん~//////」
俺と目が会うなり、顔を真っ赤にして小さく唸り声を上げている。
ヘソにキスしただけなので、ファーストキスではないと思うが、大切な物を失ってでも、俺を助けようとしてくれたことが素直に嬉しかった。
「リムさん。大切なものを失ってまで、俺を助けてくれてありがとうございました。凄く優しくて素敵な方ですね。」
「…!」
「私が、、素敵、、?」
リムとフェイズが顔を見合わせる。
すると、なぜか二人は静かに涙を流し始めた。
今度は一人で駄々を捏ねるような涙ではなく、二人で分かちあっているかのような涙だ。
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