第5話 金界の女王

「あなた。私の召使いに手を出すなんて、何を考えているのかしら?」


高貴な女性から余裕のある微笑は消えたが、悠然とした口調は変わらない。

召使いを50人も倒されたのに怒っている様子はない。盆の水が揺れた程度にしか、今の出来事を感じていないようだ。


「どの人がメシツカイ君だかわからなかったけど!鈴木を助けることしか考えてなかったよっ!」


めいは日本語も弱かったのか。。

お前が倒したやつ全員メシツカイ君だよ。


「意味が伝わってないみたい。。日本語は難しいわね。」


召使いが50人倒されても真顔だったのに、ここでようやく少し困った顔をした。

明の圧倒的な戦闘力より壊滅的な知力の方が効果的らしい。


「あなたは誰ですかっ!?鈴木のなんですかっ!?」

「自己紹介は伝わるといいのだけれど。私は金界の女王、金剛こんごう あやよ。または、鈴木のご主人といったところかしら。」

「ん?日本語間違ってません??」


俺にご主人はいない。

たぶん彩さんの言い間違いだろう。

さっき、日本語は難しいと言っていたことから、海外からきた人だと思うし。

ん?名前は完全に日本人じゃないか?


「ふふふ、間違えてないわ。」


妖艶な微笑が返り咲く。

少し細めた目に見られると、緊張して、顔が赤くなるのを感じた。


「鈴木をどうするつもりですかっ?」

「とりあえず、彼の鑑賞をしたいから、私と同じ高校に入れようと思っているわ。少しでも長く鑑賞できるでしょ?」

「やっぱり日本語間違ってませんか?」


なんで俺なんかを転校させて鑑賞するんだ?

俺の顔が芸術作品にでも見えるのだろうか。。


「ふふふ、間違えてないわ。でも、今の状況が理解できていないようね。二人共昨日のメールをもう一度よく読んだ方がいいわよ。」

「「メール…??」」

「今日は旗色が悪いから帰るわ。またね鈴木。」


カツンカツン!


ウィンクして去っていく彩さん。

後ろがザックリと開いたドレスから、艶かしい背中が垣間見えてドキッとする。


「何が起きてんだこりゃ。。」

「どのメールを読めばいいのっ?」

「わからん。。だけど、これだけはわかる。この出来事を学校の遅刻の理由にはできないな。あまりにも奇想天外過ぎる。」

「ん?あ!学校遅刻するじゃん!」

「走るぞ明!!」

「だねっ!!」


シュピューーーーーン!!


一瞬にして明に置き去りにされる。


結果として俺は遅刻で明はセーフだった。

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