第3話 二つのエラー
ドックン!ドックン!
「………ん?」
心臓の鼓動を感じる。
…あれ?生きてる?俺生きてる??
恐る恐る目を開けると、目を瞑って泣いている
「ふぇ〜ええん〜ん…えっぐ」
「泣きすぎだろ…」
俺が死んだと思っているんだろう。
「おい!め…!」
明に声を掛けようとすると、前方の異変に気がついた。
俺と明の間に、、いや、俺の周りに鉄格子が張り巡らされている。
「なんだ!?これ!?」
俺は檻に入れられていた。
「おい!明!助けてくれ!」
「えっぐ…えっぐ…鈴木が…生ぎでる?」
「生きてるよ!ここから出してくれ!!」
「そんなはずない…鈴木は落下物の下敷きになって死んだ。。えっぐ。ってことは、鈴木は自分が死んだことに気づいてないっ!」
「たちの悪い幽霊扱いするな!!」
「鈴木!!あなたは死んだのっ!!」
「本人が生きてるって言ってんだぞ!?」
「自分の死を受け入れてっ!!」
「ほんとにコイツは。。」
昔から明は、一度勘違いしたら人の話を全く聞き入れなくなる。
走り出したら止まらない猪のようだ。
その後も腰を抜かしたまま、明の説得を続けていると。
カツンカツン!
背後でハイヒールの足音がした。
叫び続ける明を無視して振り返ると、赤黒いドレスを身に纏った美女が近づいて来ていた。
金髪の髪は陽の光を浴びて第二の太陽のように光っている。
華奢だが出るとこが出た女性らしいボディラインは美しく、モデル顔負けだ。
だが、何よりも目立つのが、黒服に身を包んだ屈強な男達を50人ほど連れて歩いていることだ。
産まれて初めて見る光景に目を奪われていると、屈強な男の一人が俺の入っている檻の扉を開いた。
開いた扉から悠然と入ってきた赤いドレスの高貴な女性は、さらに俺に近づいてくる。
「え…あの…」
きっと、この檻の事情を知っている人だ。
状況を説明して欲しいが、どこから説明してもらえばいいか分からない…
俺が口篭っている間に、高貴な女性は俺の目の前でしゃがみこんだ。
女性が一言も話さないことに違和感を感じたが、さらに困惑する出来事が起きた。
しゃがみこんだ後も、女性が俺に近づいてきている。
女性の整った綺麗な顔が、みるみる俺の顔に近づいてくる!!
30cm、20cm、まだ近づいてくる!!
俺の顔まで10cmのところでようやく止まる。
状況の整理が追いつかず口をパクパクさせていると、ピンク色に潤った女性の唇が動く。
「ふふふっ、想定していた以上に普通な人ね。」
「へっ??」
女性はパニックになる俺を見て微笑を続ける。
「そのどこまで行っても普通な感じ。あなた気に入ったわ。今日から私の所有物にする。」
「ふぁ!?」
非日常の連続のせいで平凡な俺の脳は、ついにエラーを起こした。
「そこの方!!鈴木は死んでるんです!話しかけないでくださいっ!!」
脳にエラーが生じているのは、どうやら俺だけではなかったようだ。
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