その二十 協力者を募ろう
僕とニーナはとりあえずセイラさんを探すことにした。
僕たちの元に来てから約十数年、セイラさんは元々の有能っぷりから今ではメイドたちのリーダーを務めている。
王家付きのメイド長にもなると下手な貴族より発言権は強い。味方にはもってこいの人物と言える。
ニーナの話ではこの時間は夕食の準備だというので、僕たちは厨房へと向かう。料理自体は料理人が作るのだが運んだりする給仕はメイド達の仕事だ。
僕とニーナは厨房に来るとセイラさんの姿を探す、するとセイラさんは他のメイド達に指示を出していた。
「お母さん」
ニーナが声をかけるとセイラさんがこちらに向かってきた。
「ここではメイド長でしょ? あら王子もいらしたのですね」
「セイラさんに相談したいことがありまして」
「私にですか? 少しお待ちください」
セイラさんはまたも厨房に戻り他のメイド達に指示を出し、少ししてこちらにやってきた。
「ここではちょっと、僕の部屋に来てもらえます?」
「わかりました」
僕たちはセイラさんを連れて部屋へと戻ることにした。
「それで私に相談したいこととは何でしょうか?」
「この話は内密に願います」
僕とニーナの真剣な表情で察してくれたセイラさんは静かに頷いた。
そしてクレアに起こったことと僕が知る未来の事を、未来については濁して話す。
「なるほど、ソニア様が……元々腐ったお方でしたが、堕ちるところまで堕ちましたか」
「ああ、彼女最初は純粋な悪意だけだったが、今では私利私欲のために動いてるよ」
「そうですか……ふむ」
セイラさんは目を瞑ると考えだした。セイラさんは元々ソニア付きのメイドだっただけあって、ソニアの事は良く知っている。
アレとは関わりあいになりたくないのか? それも仕方ないなとは思うがどうにか協力してほしいとは思う。
「そうですね、私自身には出来ることは少ないですが。メイドの中に面白い者たちがいます」
「面白い?」
「ええ、レンスター様の提案で国王陛下も承認なさった計画がありましてね」
「計画ですか?」
計画? メイドを使って? レンスターが発案と言うことは表立ってできない事なんだろうなぁ。
「王子にならお話してもよいでしょう。メイドの中から間諜を数名育てる計画です。ある程度の訓練は終わっていますので、後は実地訓練を済ませればという計画です」
「ぇー」
レンスターあんたはいったい何者なんだ? 父上も了承してるし。何か思うところがあるんだろうな。
「なんでまたそんな物騒な計画を?」
「詳しくは言えませんが、どうやら一部の貴族が良からぬことを企ててるようです」
「え? そんなことになってるの?」
「はい、残念なことに」
うちの国って平和そうに見えて割と物騒なことになってるんだな。
「そこで情報収集と言うことで、実地訓練という形でなら協力できますよ」
「お母さん凄い事やってるのね……」
「私は管理だけですけどね、ソニア様のエレンツ侯爵家も残念ながら調査対象ですから、派遣するのも問題ないと思います」
これはレンスターとセイラさんを同時に協力者にすることができるチャンスでもあるな、調査員の派遣悪くないな。
「ニーナどう思う? 僕は悪くない提案だと思う」
「私も悪くないと思います」
僕とニーナは納得してセイラさんにその事を伝える。
「わかりました、行き成りの実地がエレンツ家というのはいささか難易度が高いとは思いますが、成績の特に優秀だった二名を派遣しましょう、レンスターさんには私から報告しておきますね」
「助かりますセイラさん」
「いいえ、恩人である王子の頼み無下にはできませんからね、私とニーナが今あるのはあの時の王子のおかげです、その恩はいまだ忘れてはおりませんからね。また何かあればお手伝いしますよ」
はは、そこまで大したことはしてないつもりだったけど、セイラさんもニーナもいまだに恩に感じてるとは、僕の方こそ彼女たちには助けられてるというのに。
僕はニーナとセイラさんを交互に見る、セイラさんは実年齢より十は若く見える……どんな魔法を使ってるんだ?
「では、私は仕事に戻ります。準備が済み次第エレンツ家へ諜報員を送りますね、幸いにして現在エレンツ家では使用人の募集を出していますからね」
「わかりましたお願いします」
セイラさんはお辞儀をすると出ていった。
セイラさんの協力を得ると同時にレンスターの方も片付いたような気がする。そうなると僕たちは学園の方で動くべきだろう。
「お母さん、知らない間になんか凄いことになってたなあ」
「あぁ、レンスターと一緒に何してんだろうなぁ」
「ですね」
この国も何だかんだと色々あるんだなぁ、ゲームの中じゃ分からなかった真実だらけだなぁ。
よし今日できることはこれくらいかな? あとはまた明日から学園で出来る事をしよう。
「協力者は苦労せず得られたな」
「はい、上手くいきましたね」
「明日からは学園でソニアにかかわってる人の捜査をしよう」
「わかりました」
ソニアが好かれてるとは思わないから、必ず他にも協力者はいるはずだ、ソニア側の人間の協力さえ取り付ければかなり有利になるはず、僕はそう考えていた。
「よし、明日からも頑張ろう」
「はい!」
僕とニーナは明日も頑張ろうと気合を入れて今日を終えた。
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