その十九 真実を打ち明けよう……濁してだけど


 そうだこの機会にニーナになら話してもいいだろう、ゲームの中の世界に転生したとは流石に言えないのでその辺りは濁すとして、ある程度の真実を教えておこう、そう思い僕はニーナを部屋に呼んだ。


「王子どうしましたか?」


 ニーナがやってきてニーナに二人分のお茶を淹れてもらうと、ニーナにも座るように命じた。


「ニーナこれから僕は君にとんでもないことを話す」


 僕がいつになく真面目な顔で話すと、ニーナも何事かと思う姿勢を正す。


「信じてもらえるかは分からないが、君には真実を話しておこうと思うんだ」

「は、はい」


 お茶を口に含み息を整える、今日のお茶はいつもより苦く感じるな。


「ニーナ、僕は実はね。この国の未来を、この先起こるであろう事を、いくつか知ってしまったんだ」

「み、未来ですか?」


 ゲームの中に来ましたとは言えないので、未来の話と言うことにしておく。

 それでもニーナは不思議な顔をしている、そりゃそうだ僕でも何言ってんだコイツ? って反応になる。


「うん、まあそんな反応になるよね。だが僕はこのままでは遠くない未来にこの国が滅茶苦茶になるのを知ってしまった」

「どうなるというんですか?」

「クレアが巫女候補から外れてソニアが巫女になった場合、そして僕とソニアが結婚してしまった場合、この国は必ず内戦が起こり多くの人が不幸になるだろう、主に僕がだけど」

「では助かる未来もあるのですか?」

「ある」


 ニーナは半信半疑だ。


「僕とクレアが結ばれた場合、またはクレアが巫女になり誰とも結ばれなかった場合」

「王子とクレアさんが……そんな未来はデタラメです!」


 ニーナが怒り出した、僕がニーナをからかっていると思ってるようだ。


「信じてくれとしか言えないんだが、ただ僕の知る未来とは少しづつ変化しているのも事実」

「どういうことですか?」

「僕の知る未来では、クレアの父親が逮捕されることはなかったんだ。そしてクレアはこの時点で僕か兄さんかアル、またはライネスの誰かと恋人関係になってることが多かったはず」

「ですがクレアさんは誰とも良い関係になっていない?」


 そうなのだ、恋人になるのはエンディングだがそれに近い関係にはなっているはず。

 しかしアルに関してはほぼ蚊帳の外だし、兄のイベントも遅れて発生したがその内容も大きく違っていた。


「あぁ、僕もクレアは綺麗だし良い子だとは思う。クレアの事は好ましく思うがそれは恋愛感情ではないんだ」


 そう、改めて思うがクレアの事は嫌いではないが、恋愛的な好きではないのだった。

 この事を話すと何故かニーナは一瞬ニンマリと笑った。


「でも、そうなるとこれからはどうなっていくのですか?」

「そこなんだ、そこが分からなくなってきたから、僕は君にこの事を打ち明けたんだ」


 僕は正直な気持ちをニーナに伝える、ニーナは少し考えると口を開いた。


「思い返すと王子は昔は妙に大人びてるとこが有ったり、何だか変な知識も多く持っていましたね」

「変なとは失礼な」

「アレも未来の知識だったということですね?」

「まあ、そうなるのかな」

「やはり、そうですよね」


 そういってまた考え出すニーナ。何か思うところでもあるのだろうか? 


「王子の言う事信じますよ、未来を完全に変えちゃいましょう」

「そんなにあっさり信じてもいいのかい?」

「王子とは十年来の付き合いですよ、王子の人柄は分かってるつもりです」

「……ありがとう、ニーナ」


 僕の付き人がニーナで本当に良かったと思う、彼女に出会えたことは僕にとってこの世界で最大の幸運だったろう。

 さて、ここからは切り替えて僕たちで何ができるか? を考えよう。


「さて、ニーナそれではクレアを助けるために何ができるかを考えよう」

「クレアさんのお父様の無実の証明ですよね?」

「うん、簡単に言えばそうなんだけどね」


 相手は侯爵家でも更に力を持つ家、おいそれ王族でも手は出せない。


「民衆を動かせれれば良いんですけどね、そのためにはソニア様の悪事の決定的な証拠が欲しいですね」

「民衆を動かすまでもなく、悪事の証拠だけでもあれば動きやすいんだけどね。一応僕も王族なんで」

「そうですね、どうにかして見つけないといけないです」


 ソニアは基本馬鹿なのだがこと悪事に関してだけはやたらと頭が回るから困る。ソニアは正直言って人望は無いのでそこを上手く突けばボロは出そうなんだけど、さてどうしたものか。


「表立って王族の介入はできないから、僕たち以外の協力者がいるといいんだけどね」

「お母さんに聞いてみましょう」

「セイラさんか」


 セイラさんも今ではメイド長になっている、それなりの地位と権力はあるんだよねぇ。


「そうだね、何か協力してくれるかもしれないね」

「一度聞いてみましょう!」

「ああ、そうしてみよう」

「他にはレンスターさんはどうでしょう?」


 なるほど悪くない、執事のレンスターは謎が多い人物である。独自のネットワークを持ってそうだ、協力してくれるなら心強いと思う。


「よし、今から協力をしてもらいために二人を探しに行く」

「了解です王子!」


 善は急げ、ということで僕とニーナはセイラさんとレンスターを探しに出ることにした。

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