鉄屑のスライムと孤独な少年
@suupalsannkaidatemannsixyonn
第1話
大都市に聳え立つ巨大な鉄工所、毎日何百トンの石がトラックで運ばれ、クレーンに乗せられる。
大きな高炉が煙を上げ、ドロドロに溶かされる。その際魔力を練り込ませ出来上がり後の鉄の強度を高めるのだが、スクラップするのに不純な煮汁が出て来る。
煮汁は廃棄物処理場の貯蔵庫に集められスクラップされる。
高炉から運ばれる際に誤って垂れ落ちる場合がある。
煮汁は冷えると害獣(メタルスライム)になり機械に不具合を起こしかねない、なので高炉にはいつも監視役が付いている。
しかし今日、小指程の小さな害獣が産まれた。
柱の色に同化して作業員達も気づいていない、メタルスライムは尺取り虫のように高炉に登るり表面を食べ始める。
表面には魔法陣が描かれていて、あっという間に拳程の大きさに成長した。
気づいたさ教員達が慌てて網や剣を片手に三人ほど集まって来た。
じっと下を見下ろすメタルスライム、頭の中に乱れたノイズば走る。
『ス…キル…《錬成》…か…とく………した』
目がバチバチと光り、力が発動する。
(《分析》《分解》《構築》)
網と剣がバラバラになる。
作業員は驚き無線で救援を要請。
(《分析》《分解》《構築》)
無線機がバラバラに弾け飛んだ、メタルスライムはすかさず体内に取り込む。
地面に着地すると同時に猛スピードで逃げた。
施設内のあちこちから赤色回転灯が点灯しサイレンが鳴り響く。
目がバチバチと光り周囲の物を破壊、その度に体内に鉄を取り込んで行く。
外に出た頃には工場は半壊、自身の大きさも人の頭程に担っていた。
工場の門の隣でボロ切れを羽織った小さな男の子が座っていた。
「………誰?」
「?」
そっと頭を撫で力無く微笑む。
「丁度話し相手が欲しかったんだ」
武器を持った作業員達がこちらに向かって来る。
男の子はスライムを抱き上げボロ切れで隠すと、その場から立ち去った。
男の子が住んで居るのは街のゴーストタウンの廃墟の一つ、煉瓦の壁にプラスチックの板が屋根代わりについて居る。
「いらっしゃい、何して遊ぼうか?」
腕から飛び降り、辺りを見回す。
すると、古びた棚が目に入った。
其処には貼り付けられた家族写真が貼られていた。
男の子は袋からオモチャを取り出し地面に置いた。
木製の人形、長縄、恐竜のフィギュア、どれも油でギトギトしている。
「あ、ダメだよ食べちゃ!」
体内に取り込まれたオモチャ達は掻き回さる。
男の子は頬をムニーと掴み吐き出させた。
吐き出されたオモチャは油が取れて綺麗になっていた。
男の子は感動した。
「凄い!凄い!良い子だね」
その後、二人はたくさん遊んだ。
ロープの恥を持って綱引き、恐竜と人形でヒーロごっこをした。
毛布に寝そべり頭を撫でながら囁く。
「君の名前は『セレナ』良い名前だろ?」
その瞬間、頭の中に男の子の記憶が入りこんだ。
戦争で親を亡くし、目の前で飢え死んだ姉の姿と火に囲まれる町の中で機械の兵隊から必死に逃げる男の子の姿。
いつの間にか二人は眠りについていた。
男の子の苦しそうな寝顔、歯を食いしばり息を荒げる。
スライムは写真の元へ駆け寄り見つめる。
「フォ…ルテ、フォルテ…」
頭の中にノイズが走る。
『《分析》《分解》《構築》、《分析》《分解》…」
体の中の何かが蠢き、ドンドン大きくなっていく。
◇
朝、眼が覚めると男の子は女性に抱かれていた。
「………お姉ちゃん?」
「………お…はよう」
思わず涙を流し強く抱きしめた。
「お姉ちゃん!お姉ちゃん!お姉ちゃん!御免ね僕が弱虫だから、助けて上げられなかった……」
しばらくして冷静になり、顔を見合わせる。
「お姉ちゃん……じゃ無いよね?分かってる、セレナだよね。とっても冷たいや」
「良く……頑張りました。良い子、良い子」
ググ〜〜〜〜
お腹の音が鳴り、すっと立ち上がる。
「食べ物、取ってくる」
「あー!待って裸じゃダメだよ!」
棚から女物の服を取り出し慌てて駆け寄る。
町の人間の多くは機械を体に埋め込み半アンドロイド化している。
道中美味しそうな匂いのするパン屋を見つけた。
「パンを買いたい」
アンドロイドの店主が振り返る。
「230両だ」
「金はない」
「なら駄目だ」
セレナは頬を膨らませてモゴモゴと動かすと、指を入れ口から鉄の板を取り出した。
「これじゃ駄目か?」
「はあ?見た事ねえ鉄だな、どちらにせよ中古品なんて要らねえよ」
すると何処からともなく、老人が走ってきた。
「お、おいそいつを良く見せてくれぃ!………あいや〜〜これは白鉄鋼じゃねえべか、生産方法も確立されてねえ希少もんだ、こりゃ都市で売りゃ〜1万両もくだらね。店主さんが要らねえゆーなら俺が買ったら!これでどうだい?」
「なんだそりゃ、なら話は別だ!お前は家のパンを買いにきたんだろ?持ってきな!」
老人からは金の袋を、パン屋は大量のパンを手渡した。
セレナは鉄板をもう一枚取り出しその場を後にした。
家に帰ると中で作業人の男2人が腹を抱え蹲るフォルテを囲んでいた。
「おい!メタルスライムはどうした?何処に隠した!」
「知らない!関係ない!」
「嘘つくな、カメラにお前が映ってんだよ!言い逃れできねえ!」
そう言って足で顔を踏みつける。
男達がこちらに気づいた。
「なんだお前?ガキの家族か?なら知ってるだろ、あれは何処だ!」
顔を近ずけ脅しにかかるが、セレナはフォルテの傷付いた姿に目を見開き無反応。
「無視してんじゃねえ!」
男はセレナの腹を殴りつけた。
しかし拳は腹の内部にめり込み抜けない、何が起こったかわからず動揺しながらも拳がどんどん中に入っていく。
「なんだこりゃ!抜けねえ!」
上半身が完全に埋まり足だけがバタバタと動く。
危機感を持ったもう一人が無線機を取り出す。
「此方A班!救援要請!救援要請!軍をよこせ!速く!!」
完全に腹に収まったところで男に狂気の目向けられる。
「ギィヤヤヤャャーーーー!!!」
家の中は静かになった。
返り血の付いた体で項垂れるフォルテを抱けあげ家を出た。
外にはむう数の兵隊と軍事飛行機。
壁に寝かせ手元にパンを置く。
「パン食べてて良いいからね。すぐ戻る」
敵と向かい合い、お腹に力手を突っ込んだ。
「《分析》《分解》《構築》」
お腹の中か巨大な包丁を2丁取り出し走った。
無数の銃弾を右へ左へ避けながら次々と斬り裂いていく、しかし空の飛行機から次々とパラシュートを付けた兵士達がやってくる。
一通り兵士たちを一掃したところで空を見上た。
「《分析》《分解》《構築》ーーー!!!!」
兵士の残骸が無数の剣の形に姿を変え、空に放たれた。
飛行機が次々と撃墜していく。
「ウガガァァァーーーーよくもフォルテを!!」
空に向かって怒り吠える姿は神話に出てくる狂戦士によう。
しかし一人の兵士が隙を見てフォルテを人質に取った。
「動くな」
「ガァー!!」
「大人しく来てもらおうか?メタルスライム」
セレナは何も抵抗出来ず、そのまま連行されていった。
スクラップ工場、コンクリートで仕切られた空間にセレナは大量の廃棄物のプールに投げ込まれた。
セレナは指先一つ動かそうとせずただ屍のように浮いている。
「どうすればフォルテを足すへ出せるか」頭の回路を回転させ続けた。
この中はとても熱い、時間が経てば経つほど体は廃棄物と化していき
思考も段々と無くなっていく。
ガタン、ガタン
天井が段々と落ちて来る。
「もう何も………」
限界が近ずいたその時、頭の中にノイズが走った。
『スキ…《魔力感知》を獲得……ま…た』
途端、目の前が開けた。工場の内部構造、機械の仕組み、フォルテの囚われている場所に至るまで、魔力を通して全てわかる。
「フォル…テ!」
渾身の力を振り絞り、廃棄物を吸い上げ体内に取り混む。
(フォルテ!フォルテ!フォルテ!…)
◇
フォルテは工場の社長室に有る椅子に拘束されていた。
「いや〜〜お手柄でしたな〜社長」
太鼓持ちの部下が誉め殺す。
「あのスライムもだが、この小僧も中々レア者、今まで見たこともない黒い魔力、そして街で出回っていたコイツ…」
社長はポケットから白剛鉄を取り出した。
「このガキは白剛鉄の作り方を知ってるに違いない、こりゃ良い金の木だ」
突然、爆発音とともに地震が起こる。
「な、何だ何だ!」
窓を開け見ると、巨大な白い怪獣が工場を破壊していたのだ。
ガアアァァァーーーーーー!!!
「大変です社長!こっちに向かって来ています!」
「ええい!解っとる。逃げるぞ!」
フォルテはゆっくりと窓の方を見て、その自分のオモチャに似た怪獣の姿に微笑んだ。
「フォルテーーー!!フォルテーーー!!」
立ちはだかる軍隊を光線で吹き飛ばし、工場を破壊していく。
危機に際し大型の飛行船が投入される。
「放てーー!!」
大型のミサイルを頭上に投下した。
しかし、瞬間口を大きく開きミサイルを飲み込んだ。
お腹の中で爆発の光が見える。
怪獣は鋭い爪を立て社長室の有る建物の屋根を破壊した。
ゆっくりと手をフォルテの方へ伸ばす。
「2人のお家に帰ろう………」
「うん!」
鉄屑のスライムと孤独な少年 @suupalsannkaidatemannsixyonn
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