1章3 桃色昇天

夕食を終えると、「仮住まい」に5人の女性が集まった。

漆黒の瞳に、黒髪のふわふわロングヘアを腰まで伸ばした愛らしい風貌のエリス。

ダークブラウンの瞳に烏の濡羽色の髪を胸のあたりまで伸ばし、凛々しい顔立ちと相まって多くの侍女から恋慕の対象(但し告白はできていない)にされているエリスの専属侍女クロエ。

青い瞳に銀髪のストレートヘアをセミロングにした、エリスの妹レニ。

やや色の薄い黒の瞳に黒髪ショートヘア、エリスにいろいろな意味で堕とされたレニの専属侍女マチ。

そして、緋色の瞳に白髪のストレートヘアを腰まで伸ばした、今日エリスに堕とされたばかりであるレニの専属侍女メイ。


これから5人で「女だらけの乱交大会」を行うわけではない。

いつかそういうことをしたいと思っているエリスだが、今はその時ではない。

その時を迎えるにあたって必要な、いろいろなことを準備するための話し合いが目的。


メイは見た目が幼く、感情表現は苦手なようだったが、頭の回転は早く、脳に蓄えた知識も豊富だった。

メイが主導して、「計画」を進めるための戦略が次々と決まっていく。

(天才合法ロリが専属侍女とかレニは羨ましいわ…でももう私が恋人にしちゃったからこれからはぐへへ…)

エリスは美少女がしてはいけないような下卑た表情で邪な考えに支配されかけた。

ふと正気に戻って妹を見ると、まさに自分が先ほどまでしていたような表情でメイを見ていた。

かつての自分なら文句なしに変態!ド変態!と心の中でレニを罵っていただろうが、姉妹そろってロリコンになってしまった今では、もはや妹を非難できない。

そんな姉妹ロリコンたちに見られながら、戦略を説明していくメイロリ

エリスは恋人とかの感情は関係なく、メイが仲間になってくれてよかったと素直に思った。


作戦の要であり、メンバー中最強の能力をもって一番積極的に動くことになるエリスが、レアから得た知識で作戦・戦略を補強する。

他のメンバーも自分がサポートできるところは意見を出す。

そうして、明日を含めて当面の計画の進め方は固まった。

レニとマチの主従は扉を開けて「仮住まい」を退出しようとする。


しかし、扉を開けたところにたまたま1人の侍女が通りかかった。

藍色の瞳に、やや紫がかった黒髪はメイよりやや短いストレートロング。

「セイメイ…」

「メイル…何でここに?」

メデイアの専属侍女の1人、「セイメイ」ことメイル・セイリュウだった。


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一方、王都エテルニタでは…


ユノが緑髪の女性を連れて、王宮内にある自分の部屋へ向かっていた。

女王アリシア3世直属の諜報部隊「ジョイエロ」の責任者であるユノは王宮への常駐を認められていて、玉座の間や王室の居住区画といった枢要部分以外は自由に出入りできる。


「アイりんから話は聞いてるよね?」

「はい…今日はあたしで、明日はメイサ、明後日はフォリが来る予定です」


ユノの後ろをついていくメイア・ジェドと、2人の会話に登場したメイサ・ネフル、フォリ・ゾイス、アイリ・クンツは幼馴染みで、「ジョイエロ」に加わるため責任者であるユノとの最終面談を受けることになった。

3連休前にアイリが一足先にユノとの面談を終えて、その様子を3人に伝えていた。

それを聞いた上でこれからユノとの面談に臨むメイアは期待と不安が相半ばであった。


ユノの部屋の前に到着し、ユノが扉を開ける。

灯りをつけ、メイアを中に招き入れると、ユノは扉を閉め誰も侵入できないように魔法をかける。

そして、

「メイアちゃんだから…メアたんかな。

 メアたん、そこの椅子に座って」

「はい」


メイアがユノに指定された椅子に座ると、ユノが魔法を発動するための魔力を集積させながら尋ねる。

「じゃあ、心の準備はいい?」

「はい」

「トイレは行かなくても大丈夫?」

「…念のため…行って…きます…」

恥じらいながらメイアはトイレに向かった。


用を済ませて戻ってきたメイアが先ほどの椅子に再び座る。

「今度こそ、心の準備はいいかな?」

「…はい」

少し間をおいてメイアが返事した。


「アスケンス!」

薄赤色の瞳を輝かせてその言葉を発したユノは、魔力を込めた右手の人差し指をメイアの頭頂部に押し付ける。

その瞬間、メイアは脱力し、漆黒の瞳は瞼の裏に隠れて天国のある方へ向いた。


「さあ、メアたんの魂は今天国にいるわ。

 ワタシが指示してから目を開けると、メアたんの魂はワタシが呼び戻すまで天国を彷徨さまよい続けるの。

 それがとても気持ちいいことは、アイりんから聞いてるわよね。

 そして地上に残った体はワタシの言う通りに動くようになるけど、それも気持ちよくなるわ」


一呼吸置いて、ユノが命じる。

「メアたん、目を開けなさい」

「はぃ…」

脱力した際に閉じていたメイアの上瞼が開く。

眼球は瞳が天国を向いている状態のままなので、瞼の間から見える目は完全な白目である。

そして、「魂が天国を彷徨いはじめたこと」による快感で体がわずかに痙攣し、口は微笑むような形に歪んだ。


「さて、これでメアたんは完全に頭の中が空っぽになったかな?

 正気のままだといろいろと邪魔が入って素直に話してくれないから…。

 フフフ…これから"面談"を始めるよ…。

 メアたん、私がこれからメアたんに何か尋ねたら何でも正直に答えなさい」

「ふぁ…ぃ…」

「メアたんは正直に答えるたびに気持ちよくなるし、全部正直に答えたら、後でご褒美をあげちゃうよ」

「はぃ…うれしぃ…です…」

「そして、今みたいに魂が天国にいる時は、ワタシを"ユノ様"と呼びなさい」

「は…ぃ…ゆの…さま…」

ユノの言葉に従順なメイア。

体の痙攣に伴うものなのか、それともメイアの魂が「天国を彷徨っている」からなのか、彼女の眼球は白目をむいたままわずかに動いていた。


"面談"を終えると、ユノはメイアの身体を性的に堪能した。

呼吸が落ち着いてきたメイアは、未だ天国に魂が飛んだまま。

ユノはそんなメイアの「事後処理」に取り掛かった。

「メアたん、ワタシの声が聞こえる?」

「…ふぁ…ぃ…」

「そろそろ、メアたんの魂を地上に戻すよ。寂しい?」

「…は…ぃ…さび…しい…」

脱力した際に目を閉じたメイアは、そのまま寂しそうに眉間へ皺を寄せる。

「でも、大丈夫。メアたんの魂がすぐに天国へ戻れる魔法をかけてあげる。

 メアたん、目を開けて」

「…はぃ…」

瞼を開いたメイアは相変わらずの完全な白目。

「それじゃメアたん、これからメアたんにかける魔法を体で覚えなさい」

「…はい…覚え…ます…」


「ルチェ・ロザ」

メイアの体がピンク色の光に照らされる。

「メアたん、メアたんがワタシの魔法でこのピンク色の光に照らされると、今のように魂がまた天国に行ける。

 このピンク色の光が消えて、ワタシがメアたんの魂を地上に戻ってくるように呼ぶまでは、今と同じようにメアたんの魂は天国を彷徨い続けることができるの。嬉しい?」

「…は…ひっ…うれしい…れす…」

白目をむいたまま、ぱぁっと笑顔になるメイア。

「そしたら、メアたん、今かかった魔法と、さっき教えた戻り方をしっかり覚えなさい」

「…は…い…」

「いい子ね…そろそろ地上に帰ってきなさい」

そう言うと、ユノはメイアと唇を重ね、「アスケンス」の魔力を回収するようにメイアの口を吸った。


「アスケンス」はかなり強い魔法なので、解除しても正気に戻るまで時間がかかる。

その間にユノは、メイアが脱いだ服や下着を片付けたりしていた。

それも終わって穏やかなメイアの顔を見つめていると、メイアがわずかに身じろぎをして瞼を開いた。

両方の瞳が焦点を結び、ユノを見る。


「メアたん、気分はど」

「ゆのさまぁ!」

ユノがかけた声を遮るように、全裸のメイアがユノに抱きついた。

ユノは咄嗟に魔法を発動させる。

「ルチェ・ロザ」


光属性の、本来なら対象をピンク色に照らすだけの魔法。

だが、それをかけられたメイアは脱力し、床にぺたんと腰を落とした。

ユノがメイアの上瞼をこじ開けても漆黒の瞳ではなく、きれいな白目が見えるだけ。

瞳は先ほどと同じように天国を向いているのだろう。

(トリガーの埋め込みは成功ね。それならさっさと戻そう)


メイアから少し離れてユノが「ルチェ・ロザ」を切り、

「メアたん、地上に帰ってきなさい」

と命じる。

メイアはすぐに正気を取り戻した…ように見えたが、少し様子がおかしい。

ユノと離れているため先ほどのように抱きついてはこなかったが、

メイアがユノを見つめる目は微妙に焦点が合っておらず、熱っぽく潤んでいる。

「ゆのさまぁ…てんごくはぁ…とてもぉ…きもちよかったぁ…れすぅ…もっと…」

「ズヴェリア」

「はっ」


メイアの体がびくっと跳ね、今度は本当に正気を取り戻したようで、自分の体を含めて部屋の中を見まわしている。

なんとなく現状を把握したようなメイアは、床に座り込んだまま顔を赤くしてユノを見上げ、

「ユノ様、大変お見苦しいものをお見せしてしまったようで申し訳ございません!」

自分の裸をユノに見せたことが無礼だと思い込んで謝罪した。

「お詫びはいくらでも致します。

 あたしはもうユノ様のものです。

 ユノ様のためなら何でもしますので、どうかあたしを捨てないでください!」

メイアはユノに心酔し、精神的にかなり依存しているようだ。

それにネガティブな思考をしがちな様子。

(「アスケンス」が効きすぎたわね。

 それに、元からの性格だろうけど、このネガティブなところもフォローしてあげないとね)

そんなことを考えながらユノはメイアに話しかける。


「メアたんみたいなかわいい娘を捨てるなんてとんでもない!

 それにメアたんの裸はとてもいい、見苦しいどころかワタシには眼福よ」

「喜んでいただけたのなら光栄です…」

「それより、一緒に浴室に入ろう!」

「ユノ様と…いっしょに…浴室へ…」

メイアの赤くなった顔がにやけている。

「そんなに嬉しいの?じゃあさっさと行こう!正気のメアたんとあんなこともしたいし、ワタシにもしてほしいなぁ…」

そう言いながらユノはメイアを連れて浴室へ向かった。


----


「あら、レニ様にマチ姉にコーメイ…」

「セイメイ、ちょっと話があるから中に入れ」

とっさの判断で、メイ…コーメイはメイル…セイメイを「仮住まい」に引き込んだ。

そして間髪入れずに、セイメイの姉マチが扉を閉める。

さらに、扉が閉まったところでクロエが闇属性魔法を発動させる。

扉が掻き消え、「仮住まい」は密室になった。

事前の打ち合わせなしとは思えない、見事な連係だった。


セイメイは普通ならこの程度で動揺しないほど落ち着いた性格の持ち主だった。

しかし、今の状況は彼女にとって普通ではない。

姉であるマチが自分を密室に閉じ込めた。

その上で自分を妹として見ていない。

まるで積年の恨みを持つ「敵」を見るような、冷たい眼差しで睨まれているように感じた。


「マチ姉っ、どうしてこんな…」

セイメイが姉にかけた声は途中で強制的に止められた。

セイメイの目の前に現れた、自分と同じくらいの背丈をした黒髪ロングヘアの少女…エリスに、その漆黒の瞳から発せられた魔法で動きを封じられたから。


そして、顔を近づけてきたエリスによって2人の唇が重なると、セイメイはエリスから流し込まれる魔力で自分が跡形もなくぐちゃぐちゃにかき混ぜられるような感覚を味わう。

そして意識を失って脱力したセイメイは姉に後ろから抱きかかえられた。

「うふふ…これでメイルも私たちと同じエリス様のしもべね…」


マチに膝枕をされた状態でソファに寝かされたセイメイは、しばらくして目を覚ました。

最初に見た、自分の顔を見下ろす姉の眼差しは、先ほどの冷たいものではなく妹を愛でる優しいもの。

その時、安堵の感情とともにセイメイの視界がぼやける。

両の眼から涙があふれていた。


あの時、セイメイは実の姉から向けられた敵意に戦慄した。

あんなマチ姉は2度と見たくない。

だから、これからはずっとマチ姉と同じ方を向いていく。

これは魔法でもなんでもない、自分の意思だ。

そして、そのためにこれからするべきことは、先ほどあのお方の魔法で与えられた感情のままに。

マチ姉とともに、愛するひとに従うこと。

さあ、そろそろ起きて、挨拶しよう。


姉に頭をぶつけないようゆっくりとソファから起き上がったセイメイは、立ち上がるとエリスに向かって、瞳を潤ませたまま挨拶カーテシーをした。

「お見苦しいものをお見せしてしまい、誠に申し訳ございません…。

 改めて…、ご挨拶させていただきます…。

 私は…メイル・セイリュウと申します…。

 マチ姉ともども…、不束者ですが末永くよろしくお願いします…」

まるで嫁入りでもするかのような言葉を紡いだセイメイがエリスに向けた表情は、これまでに「エヴィゲ・リーベ」を受けた者と同様、エリスに恋する乙女のものだった。


コーメイによってロリコンに目覚めて1日も経っていないエリスは、コーメイとほぼ同じ背丈のセイメイが見せた仕草と表情に

「メイル…かわいぃ…私…萌え死…ぬ…」

と呟き、何かのキャパシティが限界を超えたのか、恍惚とした表情で目を開けたまま仰向けに倒れかかった。


そばに控えていたクロエが後ろから支えたため、今のエリスはクロエに寄りかかってお尻をぺたっと床につけ、両足もM字状で床についている。

クロエ以外の女性たちは、目の焦点がどこにも合っていない恍惚状態で床に腰を落とした、合法ロリ予備軍の美少女に見惚れ、恋慕の情をさらに深めていた。


密室状態の「仮住まい」にいる6人のうち、正気を保っている人はクロエだけ。

エリスはレニによって壊され、女神レアのしもべとなった。

レニと3人の侍女はエリスの従順な恋人となった。

レニが暴走する前から「変わっていない」のもクロエだけだった。


そんなクロエは不測の事態に備えて少し警戒しながらも、5人を無理に正気へ戻そうとせず、様子を見ていた。

自分に寄りかかる小柄な主の頭を愛おしそうに撫でながら。

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