1章4 ロリと極秘任務

クロエが自分の頭を撫でていることに気づいたエリスは、やや寝惚けたような状態なのか

「ぇへへ…くろえ…もっと…なでなで…」

とクロエに甘えるような言動を見せた。


それはさすがのクロエにとっても不意打ち、しかも「即萌死級」の破壊力だったようで、顔を真っ赤に染めると受け身も取れず床に昏倒した。

クロエでさえそんな状態なのだから、エリスに恋する4人が無事であるはずはない。

クロエという支えを失ったエリスはクロエに折り重なるように倒れ、その際に受けた衝撃で彼女が正気を取り戻した時、周りの様子はまさに「死屍累々」だった。


(あれ、私…何を?…まぁいいか、それより)

一瞬自分が気絶した原因を思い出そうとしたが、すぐに諦め頭の痛みの原因追及に移った。

振り向いて納得。

どうやら自分の後頭部とクロエの膝がぶつかったようだ。

そしてクロエの顔を見る。


クロエの顔は真っ赤に染まり、これまでエリスが見たこともないようなだらしない状態だった。

(クロエの名誉のため詳細は割愛)

他の4人も似たり寄ったりの、他人に見せたらいけない質の顔で意識を失っていた。


エリスの前ではいつも隙を見せなかったクロエ。

そんなクロエが初めて見せた普通の人間らしい姿を見て、エリスはこれまで以上にクロエを愛おしく思った。

そして、2人の顔がほぼゼロ距離に近づき、唇が重なった。


4人を「エヴィゲ・リーベ」で堕とした際にも口づけはしたものの、魔法が付与されていない純粋なキスの相手は、生まれてからずっと、血縁関係にある人たちよりも親密な関係を築いてきた、6歳年上のクロエだけだった。


この屋敷を出た後、いつの日かクロエと同じくらい、もしくはクロエよりももっと好きになる人と出会うかもしれない。

でもその時が来るまで、魔法なしのキスはクロエだけにしかしない、とエリスは心の中で誓った。


王子様のキスではなく、小柄で愛らしい主の健気な口づけでクロエは目を覚ました。

クロエの顔をやや不安げに覗き込んでいたエリスの顔は、クロエの目が自分の顔に焦点を合わせたことでぱぁっと笑顔に変わる。


この、愛らしい少女が屈託のない笑顔を見せる相手も、今はクロエだけ。

だが、クロエが笑顔のエリスにかけた言葉は

「お嬢様、大変お見苦しいものをお見せしてしまったようで申し訳ございません!」

自分の変な顔をエリスに見せたことが無礼だと思い込んで謝罪した。

「謝罪なんて必要ないわ。

 それに今日はまた、クロエの新たな一面を見ることができたのだからむしろ私は嬉しいの」

「喜んでいただけた…のでしょうか。

 それならなによりですが…、私は恥ずかしいです…」

赤面するクロエにエリスはキュンキュンし、ますますクロエのことが好きになる。

このまま2人のいろいろなところを重ねたい気持ちだったが、今夜はやることがある。

4人が目を覚ますまで、エリスとクロエは言葉も発さずに見つめあっていた。


全員が目を覚ましたところで、これからどうするかを整理した。

偶然巻き込まれたセイメイは母・メデイアの専属侍女なので、手を出すにはいろいろと根回しが要る。

明後日の夜にまたここへ来るように指示した。

レニとマチの主従は当初の予定通り、レニの部屋でしてもらう。

クロエが扉を元に戻すと、3人は「仮住まい」から退出した。


3人が残った「仮住まい」、その部屋にあるベッドで向かい合うエリスとメイ。

しかし、エリスはクロエが気になって仕方がない。


クロエはそれを察したのか、

「お嬢様、私が気になって致せないのであれば、私がお嬢様の死角へ移動します」

といって、本当にエリスが周りを見回しても目に入らないどこかへ移動した…ようだ。

「気遣ってくれていつもありがとう…クロエ、大好きだよ」

この部屋のどこかにいるであろうクロエに感謝を伝える。

この部屋のどこかにいて、顔を赤くしてニヤニヤしていたクロエを見た者は誰もいなかった。


「エリス様からこんなに信頼されているクロエ様が羨ましいです…」

と呟くメイに、エリスは

「クロエはずっと大好きだけど、今はメイを愛したい…いいよね?」

そう言って、わずかに首を傾げるあざとい仕草を見せた。

「…はぃ…」

顔を真っ赤にしたメイとの距離をほぼゼロにしたエリスは、再び首を傾ける。

ほんの少し魔法を込めて、目を閉じて待ち構えるメイと、唇を重ねた。


----


翌日(4月10日)の朝、口に当たる柔らかい感触で、エリスは目を覚ました。

目の前には銀髪セミロングの少女。

エリスの魔法によって、姉に対する恋心を抱いてしまった妹・レニ。


「エリスお姉さま、おはようございます…今朝はエリスお姉さまの可愛らしい寝顔と目覚めのキス、堪能しました…」

「おはよう、レニ…まさか昨日の今日で私より早起きするとは…」

あの時の暴走といい、レニの行動力はある意味凄いなと思ったエリス。

もう一つ、昨夜誓ったばかりの「好きな人ができるまで魔法なしのキスはクロエとしかしない」が早くも破綻してしまった。

そのことにやや落胆しながらも、せめて自分からはしないようにしようと改めて心の中で誓ったエリスだった。


今朝はもう1人、今日の当番であるメイがレニと一緒に来ていた。

「エリス様…昨夜はいろいろとありがとうございました…」

ぽっと頬を赤く染めながらエリスへ感謝を伝える白髪ロングヘアの少女。

「メイ…か…かわいい…」

その姿に萌えたロリコンエリスは素早くベッドから降りてメイに抱きつく。


「エリス様…ちょっと苦しい…でもいぃ…」

「エリスお姉さま、コーメイはここにいるうちはレニの、年上なのにかわいいかわいい専属侍女ですからね。

 代わりにレニの身体なら好きにしていいですよ…待てよ、この3人でするのもいい…かも…はぁはぁ」

何か新たな扉を開きそうなメイと、エリスに今はメイの主であることをアピールしながら自らの身体を押し付け、あわよくば「両手にロリ」プレイを企てようとするロリコンレニ。


平日の朝から淫靡な雰囲気になりかけたところ、救い主が現れた。

扉をノックしてから、エリスの専属侍女クロエが部屋に入ってくる。

「お嬢様、お目覚めでしたか。

 …お取込み中のところ失礼ですが、朝食のお時間です。

 レニ様もお嬢様と一緒にダイニングまでお越しください」

我に返った3人はクロエの言葉に従い、エリスが着替えてからクロエを加えた4人で一緒にダイニングへ行くことにした。

エリスの生着替えを見る3人は三者三様に興奮しているようだった。


エリスの着替えが終わったところで、メイが「あっ」と声を上げる。

「大切なことをお伝えしておりませんでした。

 今日の段取りの確認です」

段取りの確認をしてからやや急ぎ気味にダイニングへ向かった。

もちろん今日も、エリスとレニは恋人つなぎで。


----


朝食後、母・メデイアの部屋へ。

ここ数日で母から呼ばれたことはあっても、エリスから話があるともちかけたのは初めてだった。

そこで「要求」した内容は以下の通り。


レニの専属侍女3人とメデイアの専属侍女2人を自分の専属侍女として引き抜き、エリスがこの屋敷から出ていく際には連れていくこと。

その名目は「レニが高等部を卒業した後のことに関連した極秘任務」とし、関係者以外は当主や他の侍女(レニやメデイアの専属侍女を含む)にもそれ以上のことは知らせない。


レニの専属侍女は6人のうち、フェブラ・エイプリ・ジュンが残ってマチ・メイ・ジュリがエリスにつく。

メデイアの専属侍女のうち、メイルをエリスが貰うことは決めているが、残り1人は決まっていないので、後でメイル以外にどんな子がいるか教えてほしい。


専属侍女の欠員は、誰かの専属になっていない侍女から選ぶこと。

レニの新しい専属侍女は、最終的にはエリスとレニが休日に面接を行って決めたいので、ふさわしそうな子を推薦してほしい。


いずれも、当主に話さなくてもメデイアの権限でできることだったため、ほぼ即答で了承された。

といっても、メデイアはすでにエリスに対して従順な人間になっているので、断られることはないが。


一昨日メデイアの部屋で義絶について話した時、好都合にもメデイアは人払いをしたため、部屋には母娘の2人きり。

めったにない機会を逃さず、エリスは無属性魔法「ウンタ・オードン」を込めたキスでメデイアを堕とした。

「ウンタ・オードン」で再構成されたメデイアは、主・エリスへの絶対服従やエリスを第一とした思考以外以前と変わらず、口調もこれまでと変えないよう命じているため、これまで特に怪しまれていない。


なお、当主は領地の経営や王室との政治などに重きを置き、家庭内のことにはさほど関心がないためメデイアに任せているらしい。

当主の領分を除くと、実質的なイマジネーア家の頂点は数日前まで最底辺だったエリスである。


メデイアの部屋を後にし、玄関へ行く。

さほど待たずにレニとコーメイが現れた。

今日は便乗者がいないので、王都へ行くのは2人だけ。

昨日と同じようにして2人を見送る。

そして、クロエと一旦別れ、先回りして「ある空き部屋」に潜んだ。


先に述べた通り、クロエは十指に余る人数の(主にその容姿に一目惚れした)侍女から同性ながら恋慕の対象にされている。

クロエより約8歳年下、まだ12歳のジュリ・スザクもその1人。

今日の作戦はそれを利用したもので、クロエからコーメイ経由でジュリを空き部屋に誘った。

ジュリがエリスの潜む部屋に入ってきたら、あとは昨日コーメイを堕とした時と同じ。


「ある空き部屋」の扉が開いて、赤いふわふわしたセミロングの髪をツーサイドアップにした少女が姿を現した。

先に赤髪のジュリが、次いでクロエが部屋に入る。

エリスに気づいたジュリだが、何かをするよりも早く、エリスの漆黒の瞳に動きを封じられた。

そして、わずかに開いていたジュリの口に重ねられたものは、エリスの唇。

ルビーのように赤く勝気な雰囲気だったジュリの瞳から力が抜け、瞼が閉じる。


脱力してエリスに体を預けているジュリ。

クロエは扉を閉めた上で、念のため誰かに開けられないよう闇属性魔法で封じる。

扉を閉める前も、エリスは外から死角になるような位置で唇を重ねたため、他者に気づかれることはなかった。

ジュリに寄りかかられて身体を密着しているエリスは、

(合法ロリじゃないリアルロリの身体…服越しなのにこの感触…たまらない…)

一応自らもリアルロリの範囲なのだが、エリスのロリコンは早くも重篤化していた。


そんなロリコンエリスの邪な感情を読み取ったわけではないだろうが、エリスと密着した状態のまま目を覚ましたジュリは、12歳らしからぬ妖艶な表情でこんな第一声を発した。

「エリスさまぁ…、ジュリとえっち…する?

 ジュリはいつでもいいよ…」

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