夜更かし
ふと目が覚めた。以前蛍を見に行った時の夜道ほどではないが、辺りはまだ薄暗い。寝直す前にご不浄に行った帰り、居間から灯りが漏れている事に気付いた。また此処で寝落ちしているのだろうか。閉まり切っていなかった襖をそっと引いた。予想と違い、コーヤは起きていた。酒盛りをしていたらしい。いつも二人分の食器だけでいっぱいになってしまうテーブルには、色んな酒瓶が何本も置かれている。肘をついた両手に顔を埋め、ぶつぶつ呟いている。
呂律が回っていないのでほとんど聞き取れない。普通に歩いてコーヤの真向かいに座ったけれど、全く気づかれない。数分後、落ち着いたのか顔を上げたコーヤは少しだけ肩を震わせてから笑った。人前で派手に転んでしまった子供みたいだなと思った。
「すみません、起こしちゃったみたいで」
「ご不浄の帰りよ」
居間が静かになる。酔っ払った大人と部屋で二人きりだなんて。今年のサマーキャンプに参加するまでは考えられなかった状況だ。さて、そろそろ寝かしつけなければ。
「コーヤ、うちまだ眠いんよ」
一月前から挨拶と同じくらい習慣化した台詞を口にすると、脇に大きな手が入って、赤ちゃんみたいに抱えられた。寝室に戻ってもなかなか布団に入らないからもう一押し。
「こっちきぃ、一緒にねんねしよ」
人ごみからやっと親を見つけた子供みたいな顔をしたら、成功だ。
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