57話 偵察
探索中、ついにリザードマン一族のお宝を見つけた俺たち。
なんと空か降ってきたのだ、それも四個……これ本物ぉ?
投げつけた犯人は猿のようなモンスターたち。
逃げたそいつらを追跡するのであった。
四匹のモンスターを追いかけること
木々が開けた広場のようなところに出た。
地面にはまばらに埋まった石畳み、辺りには倒れた石柱が数本。
ミノタウロスの遺跡ダンジョン入口と雰囲気がよく似ている。
一つ決定的に違うのは、居住者による『アレンジ』が加えられていることだ。
木の枝や葉、得体のしれない革や石で作られたオブジェが乱立しているのである。
なかにはテントや
居住者――手足の長い、猿のようなモンスターは見える限りでニ十匹はいるだろうか。
骨のようなものを打ち鳴らしたり、ガラクタで遊んだり、オブジェに祈ったり?している。
「ゴブリンの住処に似ているな」
リゼルヴァが呟いた。
息を潜め、様子をうかがう俺たち四人――俺、ドクンちゃん、トリスケ、ホルン、リゼルヴァ。
「ゴブリンは見たことあるけど、ちょっと違うぞ。なんていうかこう、もっとずんぐりしてた」
広場のモンスターたちは仲間が逃げ帰ったことから警戒態勢にある。
数匹が常に油断なく周囲を見渡していた。
下手に乗り込んだら囲まれてしまう、困ったな。
俺としては危険度が低いモンスターなら必ずしも殺すことはないだろう、というスタンスだ。
前までの「部屋のモンスターを倒さなければ先へ進めない」状況とは違うし、平和に生きているモンスターを殺すの寝覚めが悪い。
……が、今回はそうも行きそうにない。
なにせリザードマン一族の探し物がかかっているからだ。
「竜の黒卵はどこから出してきたんだろうな?」
「あぁ、なにか仕掛けがあるはずだ」
あいつらが投げつけてきたリザードマン一族の宝――竜の黒卵。
村長から聞いていた特徴と一致するものの、鑑定結果は怪しかった。
しかも四個もほいほい投げつけてきやがったのだ。
察するに偽物だろう。
置いてこい、と言ったのだがリゼルヴァは一個だけ背負ってきた。
それなりに重いのに根性あるな。
とりあえず小型モンスターたちを鑑定。
<<Lv28 種族:妖精 種別:グレムリン 魔族化>>
「グレムリンかあ! かわいくねぇなぁー!」
たまにはファンシーなモンスターくれよ。
ふわふわしてもきゅもきゅ鳴くやつとかさ。
「ほとんどゴブリンね」
ドクンちゃんが言うように、ゴブリンの近縁種なのかもしれない。
両者の風貌はよく似ている。
そのまま映画名にもなっているモンスター、グレムリン。
多くの作品で共通しているのは背丈は人間の幼児くらいまでで、手が長く器用、大きな口と目をもつ悪そうな顔立ち。
そして機械に悪さをすること。
善良ではないが、殺戮を好む性質ではない……俺が知る限りでは。
「しかも魔族化か。この前のオーガと同じ姿になるのかね」
「断定はできない」
冷静さを取り戻した様子のリゼルヴァ。
魔族化モンスターについてはデータが少ないため、油断禁物だ。
「とはいえグレムリンだぜ、楽勝じゃね?」
魔族化したオーガはピンチになると黒いスライムが生えてきた。
それが持つ目玉が上級対抗魔法『アンチスペル』を使ってくるのだ。
肉弾戦に強いオーガが持つ分には脅威の能力だったが、貧弱なグレムリンが同様の変身をしたところで強そうには思えない。
「俺、リゼルヴァ、トリスケなら余裕で殲滅可能だろうな。害がないモンスターなら殺したくはなかったけど……」
「魔族化している時点で平和的解決は望めないだろう、グレムリン本来の性質がどうであれな」
ホルンの言う通りだ。
魔族はこの世界において侵略者であり、すべての原生生物に対して攻撃的らしい。
奴らの支配を受けた――魔族化したモンスターたちも同じく攻撃的になる。
殲滅を前提に奇襲をかけるのが最も安全だろう。
「敵を片付けたあとで、じっくり探索するとしようぜ。よしサクッと全滅させるか」
平和な生物なら殺すのは忍びないとか思っておきながら、切り替えの早い自分が怖い。
作戦会議に入る俺たちであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます