6.5話 男の子って、こういうのが好きなんでしょ?

唐突なメッセージ。

そして表示される系統樹のような画面。


<<進化条件を満たしました 進化を実行しますか>>


進化。

男心をくすぐるワードの一つだ。

女の子の場合は知らんけど、男の子の変身願望は単純だ。

かっこよくなりたい!

これに尽きる。

自分自身が新たなモンスターへ変身するというのは、

そりゃもう一大イベントなのだとドクンちゃんに説明したが反応は薄かった。


貧弱モンスターを始点にし、段階的に強力なモンスターに変化していく図――通称、進化ツリー。

目を皿のようにして上から下までねっとりと確認した。

胸躍るモンスター名の羅列を幾度も往復し、方針を立てる。


「とりあえず一番上を決めて、そこ目指すか」


最終進化は3つある。

ドラゴンゾンビ、ヴァンパイアロード、リッチだ。


「いや、めっっっっちゃ悩むな!!!」


全部かっこいい。

ゲームのキャラメイクに最低一時間かかる俺だ。

自分自身が何になりたいか、なんて簡単に結論を出せるわけがない。

『なりたい職業』の作文は1文字も書けなかったけど、

『なりたいモンスター』なら作文用紙1箱分は書けるわ!


ていうか女神ありがとう!

アンデッドにならなきゃ、進化イベントなかったわけだよね?

人間が進化してもモンスターになれないもんね、たぶん。

……いや感謝すべきはユニークスキルか。

それもランダムでついたやつだし。

やっぱ女神への感謝はなしで。


「まずオススメしないのはドラゴンゾンビね」


「なんで? かっこいいじゃん」


ダストゾンビの次はゾンビになる。

ゾンビから3つのルートに分かれる。

そのうち一つ、ゾンビからいきなりスケルトンワイバーンへ続くルートがあるのだ。

そこの最終進化がドラゴンゾンビ。


パッと見、一番ファンタジーしているから気になっていたのに。

ドラゴンな上にゾンビである。

強いものに強いものを合わせたら、超強いという理論である。

チーズカツカレードリアみたいなもんだ。違うか。


「最初に竜の血が必要なの」


「よし却下」


倒せるわけがない。こちとら腐った死体だぞ?

ドクンちゃんいわく、ドラゴン以外がドラゴンゾンビを目指すことは不毛らしい。

残る最終進化は2つ、ヴァンパイアロードかリッチ。


ゾンビに進化すると、次は3つのルートに分かれる。

物理系、魔法系、中庸のどれかだ。


で、各ルートに入ってから3回目の進化で、ヴァンパイアかデュラハンを選べる。

ヴァンパイアを選べばヴァンパイアロードに、

デュラハンを選べばリッチへ最終進化できるようだ。


「アタシの推しは断然リッチよ! 魔法最強!」


「ドクンちゃん魔法好きだよねー」


リッチは魔法を極めたアンデッドの大魔術師……とされることが多い。

悪い魔法使いは最終的にだいたいリッチになる。

名前を言ってはいけないあの人とかね。

魔法を修めて損はないよなぁ。


「でもヴァンパイアロードって響き、最高にイカすよな」


吸血鬼モンスターは数多いが、中でも有名なのがヴァンパイアだ。

美女の首筋に噛みつくエロティックなイメージが強い。

知名度で言えばリッチを上回るだろう。

特徴は色々あるが、なんといっても超イケメンであることが多い。

一時期、アメリカで吸血鬼恋愛ものドラマが流行ったとかなんとか。

ヴァンパイアロードは更に上位の存在だろう。

俺の今の目標はアイテムボックスを脱出することだ。

しかしそれは最終目標ではない。

異世界を楽しんで回りたいのだ!

そして”楽しむ”のなかには、当然ウフフなことも含まれる……!

ダークなイケメン属性、これほど頼りになる特性はない……!


「物理はスケルトン、魔法はレイス、中庸はワイトがスタートかー」


最終進化がどちらにしろ、まずは上の3つのルートを選ばねば。

まずゾンビになる必要があるが、俺は飛び級で更に次に――スケルトンかレイスかワイトにいけるとのこと。

どれも地味だな!

スケルトンはまんま骸骨。

レイスは幽霊だから透明。

ワイトはちょっと賢い骸骨だ、俺が知っている作品では。


「よし決めた!」


「おっ」


俺は高らかに宣言する。


「次の部屋のモンスター見て決めよう!」

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