第4話 エルフのお手本? ですわ
「暇ですわ」
「はぁ……」
いつも通りのまったり過ぎる昼下がり、俺はシュエリアの部屋で一緒にアニメを見ていたのだが、今ちょうど、最終話を見終わった直後だ。
この直後というのは別になんの比喩でもなく、マジで、ガチで、アニメを見て、エンディングが流れて、きっちりきっかり終わってコンマ一秒っていうくらいの、直後だ。
そのタイミングでこの「暇」発言である。
コイツは本当にどうしようもない駄エルフなんじゃなかろうか。
「じゃあギャグマ〇ガ日和でも――」
「暇だから、何かアニメが見たいわね。一度見たのは無しですわ?」
「はぁっ…………」
そうは言っても、大体目ぼしい物は見てしまったし、それでもギャグアニメなんかは好き好んで何度も何度も見て笑っていたシュエリアだが、どうやら今日はそういう気分ではなかったようだ。
「どういうのが見たいんだよ。て言っても俺は特別気に入ったのしか買わないからあんまり種類ないぞ?」
まあ、買ったんじゃなくて自宅録画して焼き増した奴とかはあるんだが、それでもやっぱりいくらからは好みに偏っている。
特に恋愛物と女性向け作品は少ない。
「ふむ……ユウキのおススメは?」
おっと、ここで俺のおススメ……か。
「それなら『ゲー〇ーズ!』か『生徒会の〇存』だな」
「なんでかしら……とても趣向が偏っている気がするのは」
「いやいや、お前両方見たこともないだろ? 気のせいだよ」
そう、気のせいである。全くの気のせいだ。俺が特定の作者や文庫のファンってことはない。
「他には、無いのかしら」
「他にか? うーん、エルフを〇るモ〇たち?」
「なんで私にそれをススメようと思ったのかしら?」
「なんでって、面白いから?」
別に他意は無い。作品内容と違って、本当に名前の通りこの駄エルフを狩れたら良いな、とかそういうことではない。
「じゃあ他には?」
「〇ンパンマン」
「急激に偏ったわね!?」
なんだ、アンパ〇マンもダメなのか? 名作だと思うんだけど、アン〇ンマン
「まあこの際俺が日常系とかほのぼのしたのが好きで、偏りがあるのは認めよう」
「……そう、そういうのが好きなのね?」
「そして恋愛物は耐性が無いから多少のドロリ感でも見れないくらい苦手」
「イケメンなライバルとか、勘違いによるすれ違いとか――」
「完全にアウト、心折れる」
「妙なところでメンタル弱いわね……」
いや、だって、好きなキャラの悲しい顔とか、自分よりハイスペックなキャラに迫られるヒロインとか見ててモヤモヤするし。最終的には主人公とくっつくんでしょ? と思いながらもそれでも俺は波乱万丈で山あり谷ありよりは安心安全に幸せな物語の方が好きなのである。
そういう意味では『ゲーマ〇ズ!』さんは山あり谷あり地獄ありの困難極まる恋愛模様だった気がしないでもないが。
「じゃあ私がイケメンに絡まれてたら、どうするのよ」
「え? 無料で引き取ってくれる業者があるなら即時引き渡しも可ですが」
「イケメンを業者とかいうの止めなさいよ……ていうか引き渡すんじゃないですわ。ヒロインを手放すとかどういう神経してんですの」
「ハンッ」
「鼻で笑われましたわ?!」
そりゃあな。
家に来てから一ヵ月以上、家事もまともにしないでゲームとアニメを堪能して嫁を自称しながら肌に触れる事さえ拒否って来るようなエルフですよ? そりゃあもう嫁というかヒロインですらないのではないかと。
「せめて手の一つでも繋いでくれたら、ヒロイン扱いしてもいいんですけどねぇ」
「イヤよ、そんなことしたら孕むじゃない」
そういってシュエリアはものすごく嫌そうな顔をしている。
え、何、なんで俺こんな扱い?
「孕まねぇよ?! 何だよ! 俺に対してどんな偏見あるんだよ!!」
「え、だってこの本にはそう書いてあったわよ?」
「は?……本?」
そういったシュエリアの手元に合ったのは一冊の本で、それは俺が勧めたアニメの『薄い本』だった。
ちなみに俺が勧めたのは元になったアニメであり、マンガで、薄い本なんて一切ススメてない。
つまりコイツは俺の知らない内にいつの間にか薄い世界にまで手を出してしまったらしい。
というかコイツ性知識皆無かよ!
「いやそれの知識は半分近く嘘だから! 薄っぺらい嘘だから!!」
「え、男性と手を繋いでも妊娠しない?」
「しねぇよ!! どんだけ毒されてんだお前!!」
「素晴らしい有害図書ね……」
「ホントにな!!」
何も知らないエルフに異世界の間違った知識を与えるのには丁度良すぎる有害コンテンツだなサブカルチャー、本当にありがとうございました!
「サブカルは人に感動を与えもするが間違った感性や知識も植えつけかねないモノだったか、素晴らしすぎるな、有害なる文化」
「そしてユウキもそのうちの一つだと理解できないのね」
「え? 俺アンインストールされるの?」
てかコイツいつの間にそんな知識まで得ていたのだろう。
あれか、またコイツ俺が寝てる間も起きてアニメ見続けてたのか。
「というか俺はいつサブカルの一部になったのでしょうか」
「ある冬の日、一人の美少女エルフとの出会いから、運命の歯車は回り始めたのよ」
「自分で美少女とかいってるよこの子、いや、確かに見てくれ『だけ』はいいけど、勝手に物語始めないでくれます?」
どうせ物語始めるならもっとちゃんとしたエルフか、包容力のある甘々な優しい姉とかがいいんですけど。
「なんで『だけ』を強調したのかは、まあスルーしてあげますわ、でも物語はいつも突然始まっているのよ」
「俺はお前をヒロインに据えた物語とか凄く嫌なんだが」
さっきも言ったが、家事もしないでぐーたらな遊び人のエルフとか、イヤだ。
いくら俺がエルフ萌えでも、いくら見た目だけは二次元でもなかなかお目にかかれないレベルの美少女でも、流石にそれは、ちょっと…………うーん。
「……ていうかお前、暇なんだろ?」
随分話が逸れた気がするが、暇を持て余して話してると元の話から逸れて行って「とりあえずおしゃべりが楽しくなる」ことってあるよな。
……え? ない?
まあ兎にも角にもここらで閑話休題というやつである。
「あぁ、そうだったわね? 暇よ、はよして」
「お前そんな言葉どこで……あぁアニメか? 毒され杉乙」
「なんか『乙』ってエルフ耳とカールした髪の毛に見えないかしら?」
「見える見え……ないわ!」
「こういう会話も暇つぶしとしていい絡み具合よね?」
「あの、急に素に戻って実況するのやめてくれません……?」
さっきから絡んではネタに走って話が逸れやすいな。
ここ一ヵ月コイツと一緒に生活して話して分かったのは『お互い、話の本題よりも笑いと流れを優先する』ということだ。
俺もコイツもお互いになんとなく面白そうな方向に話を進めてしまうからいつの間にか脱線するのである。
そもそも漫画や小説のように無駄話無くとんとん拍子で『起承転結』のある駄弁りなんて現実にはそうそうあるわけもない。
故に、それでも話が続くし、お互い特段話を戻そうとすることも無い以上、話しは永遠に逸れていくことすらある。
つまり俺とシュエリアの場合『楽しければなんでもいい』のだ。
「で、暇なのだけれど」
「お前それを枕詞に話を広げようとするのやめろ。もう少し話題性のある内容から始めてくれ」
「それはつまりアレね? 暇だ~から始められるとまるで『ん』から始まるしりとりのように続かない……と」
「うん、全然上手いこと言えてないからな?」
「……ッチ」
おい、今このエルフの姫さん舌打ちしたぞ。
いや、まあ、もういい。とりあえず話を戻そう。
「……で、アニメだろ、暇だからなんかおススメを、と」
「そうそう、それよ」
といってもな、俺は基本日常系ばっかり見る傾向にあるし、まあバトルファンタジーとかも好きだけど、特に分かりやすく主人公が強くてこれまた分かりやすい悪を痛快爽快に倒す主人公最強系とかも、割と好きだ。それでも『割と好きな物』はあんまり買わないで『本当に好きな物』だけを買う俺は結局、あんまりバトル物とかのディスクは持っていないのだ。
家にあるのは精々撮りためたアニメをディスクに焼いた奴だが。それも割と俺の趣味に偏っている物が多い。
「……んー、お前どういうの観たいの?」
「そうね……とりあえずエルフキャラの参考にするから、エルフがメインキャラ一行に出てくるファンタジー物がいいわね」
「お前エルフ本人だろ……何を参考にするんだよ」
とは言いながら、それもいいかもしれないと思う。
何しろコイツにはエルフ感がほとんどない。唯一のエルフっぽさが耳だけだからな。
だからこの世界のエルフを知って、少しはそれっぽくなるのなら、大歓迎ではある。
「エルフのヒロインってどういう立ち位置がいいのかと思ったのよ、ほら、わたくし一応、癪だけど、遺憾ではあるけれど、仮にも、ユウキの嫁(仮)ですもの」
「シュエリアさんや、本人を目の前にそこまで嫌がるのってどうなんですかね、養ってもらっている分際で」
「あら、女性差別かしら? 女は養ってもらってる立場だ! みたいな」
「なんでちゃっかり全国の女性を敵に回そうとしてるんだ?! ちげぇから、お前限定だから、家事を一切しないし仕事もしないで自堕落に生きてる自称嫁のシュエリアだけが対象のテキストだから!!」
「テキスト?」
おっと、ついついテキストなんて言ったが、まだこいつにはカードゲームは触れさせていないのだった。
いやまあ、テキストの意味自体はカードゲームでなくても、いいのだが。
異世界人のシュエリアに今の言い回しは、多少分かりにくかっただろうか。
「――こほん。まあ、お前にだけ効果を発する言葉、ということだ」
「なるほど。解せぬ」
「うん、お前本当に毒されてんな、お嬢言葉どこ行った」
「あら、私としたことがうっかりキャラ付けを忘れていましたわ――解せませんわ」
「言い直さなくていいし、っていうかキャラ付けなの? お前のお嬢言葉」
いや、まあ、たまにコイツ喋り方変だし、何となく違和感は感じていたんだけど。
「……まあ姫として教育された故の物だからキャラ付けではないのだけれど。正直普通に話したいわよね。だって『○○ですわ』って付けるのを意識すると前に来る言葉使いを意識しないと不自然になりがちですもの……」
「お、おぅ……」
そういうキャラ付けの上での地味な苦労とか、あんまり聞きたくなかった……。
「そんな事より、エルフ物のおススメは?」
「そんな事……。まあいいか。エルフで、アニメだろう? うーん、エルフメインではないけれど、エルフが主人公一行に居て、なおかつ可愛いのだとGA〇Eのテ〇カとか可愛いな。うん」
あの子はよかったな、声優さんの声も凄く可愛いし、服がTシャツでジーパンなのも良かった。そして声がよかった。うん。
「それはエルフ萌えのユウキの好みかしら?」
「そうだけど」
「なら却下ですわ」
「なんでだよ!!!」
コイツ俺の嫁ポジとして、この世界でのエルフ像を学ぼうとしてるんだよな? なら俺好みのエルフに合わせるべきなのでは? なぜに却下?!
「なぜって、ユウキの好みのエルフになったら、絶対に孕ま――」
「ねぇよ!!!」
「……え? 無いんですの? こんな美少女が、ユウキみたいな非モテのオタクに寄せてイメチェンしてくれるのよ? 普通惚れるし、至るでしょう?」
シュエリアの奴、マジで信じられないといった顔をしてやがる。
え、何。なんでそんなに俺の評価低いの? 不当過ぎない?
「色々否定したいところだが、とりあえず至るとかいう言い回しをやめろ……まあそら惚れ直すくらいはするかもしれんが」
「あら、惚れ直すという言い回しだともう惚れている前提ではないかしら」
……確かにそうかもしれない。
うーん?
まあ、見た目だけは美少女だし……。
「…………んまあ、美少女だし?」
「えっ、え?……あぁ…………そう」
何コイツ照れてんだ、お前が照れたらガチでそういう空気になっちゃうだろうが。
そこはもっとこう、激しいツッコミとか一笑に付すとか受け流す方向で行ってもらわないと……。
『…………』
え、何この沈黙。
いや、まあ、そりゃな? こんな美少女だから出会いは最悪だったけど一目惚れというか、するだろ? 普通。
健全なエルフスキーだったら間違いなく落ちるレベルの美少女エルフだし。
まあ、性格とかがアレだったから今では流石に無いかなぁ……とは思ってるけど。
「ま、まあユウキが私に惚れているのは、いいとしてですわ」
「お、おう」
そうハッキリ「惚れている」とか言われると、それはそれで居心地悪い感じがしなくもないんだけど。
まあ流してくれるそうだから、下手にツッコむのは止めよう。
「とりあえず、そうね、えぇ。他に無いなら仕方ないからそのテ〇カっていうエルフの子を参考にしてあげても、いいわよ」
俺の惚れてる発言が効いたのか、今度はやけに素直な反応のシュエリアさんだった。
いや、まあ。あくまでも一目惚れであって、今は余裕で冷めてはいるんだが。
「……そうか。じゃあとりあえず持ってくるから待ってろ」
「えぇ」
その後俺はシュエリアに言われたとおりにエルフの参考ブルーレイを持ってすぐシュエリアの部屋に戻った。
「で、持ってきたわけですが」
「見るのは今度にするから、その棚にでも入れておいて欲しいわ?」
「ん、暇なんだろ? 今見ればいいんじゃ……」
俺はてっきり暇つぶしに観るのかと思っていたのだが、シュエリアは俺の問いにため息で返してきた。
「はぁ……だって隣でエルフ萌えの変態がブヒってるとタヒりたくなるもの」
「え、何俺、地味に嫌われてる?」
「地味にかどうかは別として、エルフ萌えって変態っぽいわよね?」
「エルフ萌えは変態じゃねぇよ!」
「先にそっちにツッコむのね……」
「……先にってなんだ?」
俺の質問に、シュエリアは呆れた様子で首を振った。
「いえ、普通今の流れで『地味にかどうかは別として』とか言われたらそこをツッコむと思うんだけれど」
「あぁ、それな。確かに普通なら『嫌いかどうかは別としてじゃないのかよ!』とかツッコむかもな」
「そうそう、それよ」
シュエリアは俺の言葉に満足げに頷いている。
なるほどツッコミ待ちだったのか。
――でもな。
「だってお前『地味に嫌い』どころか『全く嫌いじゃない』だろ? だからこその『地味にかどうかは別として』な訳で」
俺がそう返すと、シュエリアは若干顔を赤くしてしどろもどろになった。
「いえ、まあ。そう、だけど……そこはほら、ツッコんで笑いにしてくれないと……ってそんなことより、あ、アレよ!! エルフ萌えって変態っぽいでしょう?」
「ん? いや、さっきも言ったがそんな事は無いと思うぞ?」
なんかシュエリアの奴、露骨に話題を変えた気がしなくもないが、いや、ある意味戻ったのか。
「だってエルフって言っても、要は耳が人種より長めで尖ってて、長生きなくらいしか特徴ないわよ? それでエルフが好きとか言われても、ねぇ」
「いやいや、弓の名手とか、魔法のエキスパートとか、スレンダー体系とか美形が多いとか、色々あるだろ?!」
そういうと、シュエリアは「やれやれ」といった様子で首を振った。
「弓の名手っていっても、間違っては無いけれど、かといって思ったよりも狩りとかはしないし、あくまでも自衛手段の一つで、それすらも魔法の方が便利ですもの。更に食事はもっぱら木の実か食べられる草とかばっかりの食事ですわよ? 弓って殆どオマケよ?」
そうか……そういえば以前にもそんな話を聞いたな。
「もしかしてその食生活が美容に良いとかじゃないのか?」
「それは分からないけれど……まあ間違いなく発育には関わってるわよね」
そう言ったシュエリアの胸を見て……俺は納得した。
「……あぁ……うん」
今明かされるエルフのスレンダー体系の秘密……。
「どこ見てんのよ」
「シュエリアさんのまな板」
「ぶっ転がしますわよ? わたくしは着やせするだけですわ、脱いだら凄いの典型パターンなんだから」
「あーはいはい。さいですか」
「さいですわ!! というかその興味無さそうな眼をやめるんですわ!」
いやねぇ? だって「着やせするタイプ」とかもう一種の社交辞令的な、言い訳のテンプレとも取れる表現じゃないですか。
「……まあいいわ……で、そのくらいしか人との住み分けは無くて、なおかつスレンダーとかベジタリアンとかは人種にも居るし、弓の名手もそうだし、美形も人種に居ないことも無いでしょう?」
「ま、まあな?」
「となると、人種と決定的に違うのは、魔法と寿命と耳くらいになるのよ」
「まあ……うん」
「でも、魔法が異常に得意な子に萌える訳ではないでしょう?」
まあ、そう言われればそうなんだけど。
魔法少女は魔法を使うヒロインに萌えるわけで、まあ別にへっぽこでも構わないと言えば、そうだ。
「かといって長命のロリババァとか美魔女が好きなわけでもないでしょう?」
確かに、特段そういうのが好きってことも、ないかもしれない。
「ということは、結局のところ長い耳がいいんでしょう?」
そう言われると……確かに……。
「エルフ耳とか、好きだな、うん」
「ほら、変態」
「なんでだよ?!」
「いや、なんでも何も……」
そういうとシュエリアは呆れたような顔をして態々ため息を吐いて首を左右に振った。
「あのねぇ、耳が長いのが萌えるとか、普通に変態趣向過ぎるでしょう。それアレでしょう? フェチっていうのでしょう? 太ももとか脇が異常に好き、みたいな」
「うん。確かに、俺は太股も脇も好きだ」
「んなことは聞いてねぇですわ!」
なんだ、せっかくだから俺の好みを教えてやったのだ、嫁なら嫁らしく、たとえ(仮)が付いても多少は俺の好みに合わせて邁進して欲しいものだ。
「しかし、シュエリア、一つだけ間違っているぞ」
「ん? 何がよ?」
シュエリアの問いに、俺は一拍間をおいて、答えた。
「……フェチは、非生物に使う言葉だから人体を差した趣向を表現するのには不適切だ」
「そこ?!!」
いや、だって重要だろ? 検閲だっけ、そういうのに引っかかるかもしれないじゃん? 間違った言葉の使い方とか意味を広めるのって、よくないと思う。
「まあいいや、話を戻そうか」
「逸らしたのは貴方でしょう……」
「エルフ耳が好きなのはそうだけど、果たしてそれは本当に変態なのか」
「どう考えてもユウキが太股と脇とエルフ耳好きな変態なのは確実なのだけれど……」
そういうシュエリアの顔は明らかに呆れ果てているが、それでも続ける。
「そもそも、エルフ耳は好きだが、かといってそれ単体に魅力を感じているかと言われると、そうではないのだ」
「あぁ、続ける気なのね、無視して続けるのね?」
俺とシュエリアは言葉の応酬をしているといつの間にか話が逸れる傾向にあるからな、ここはスルー。
「まず、極論を述べよう」
「何かしら?」
「正直エルフ耳が好きだからと言って、ゴロっとエルフ耳だけ出されても引く」
「極論?!」
俺の言葉にシュエリアがオーバーリアクションで返してくる。そんなに声を荒げることだろうか。
「ついでに太ももと脇も、それ単体で渡されても、引く」
「むしろそれで引かなかったらバラバラ殺人とかやってるような連中なんじゃないかしら?!」
そんな、人のどのパーツが好きかという話でバラバラ殺人だなんてまた突飛な発想を……まあキャラのいい部分を集めた『俺の理想の嫁』とかって、割とそんな印象あるけど。
「つまりそれ単体に魅力を感じているというよりは、バランスの一部として、そういう趣のあるパーツがあると好感度が増すという意味合いが強いんだよ。そうだな……言うなれば装備品みたいな?」
「装備品……ねぇ」
「そう。装備するとある一定の趣向を持った人相手に好感度がプラスされる効果のある装備、みたいな」
「ふむ、なるほど……まあなんとなくわかったわ?」
「おぉ、そうか!」
俺の言葉に理解を示したシュエリアは、一つ頷くと口を開いた。
「つまりエルフ耳は変態受けする装備なのね?」
「うん……うん?」
おぉっと? エルフ耳好きが変態という思考が全く改善されていないのですが?
「なんでそうなった」
「いえ、だってここまで熱弁してくるとか普通に変態じゃない? キモイもの」
「えぇ…………」
じゃあどうすりゃよかったというのか。
「だって、トータルで見ても結構な変態よ?」
「どの辺が?」
「胸はスレンダー、もとい小さいのが良いのでしょう?」
「うん」
「でも別にロリが良いわけじゃなくて、むしろ年齢が百越えてても若々しいJKみたいな子が良いのでしょう?」
「うん」
「つまり年相応の発育をしていない子が良いのでしょう?」
「うん」
「はい変態」
「……う、ぐっ」
た、たしかにそこだけ見ると若干変態っぽいが……。
「で、まだあるのだけれど」
「まだあるんですか…………」
「こういうのを見ている感じ、脇とかが見える民族的な衣装も、好きなわけよね?」
そう言ってシュエリアが取り出したのはGA〇Eと一緒に持ってきた俺の好きなエルフの出てくる漫画やラノベだった。
「……はい」
「で、この子なんか太股とかも太すぎず、かといってガリガリでもなくて、すらっと長くてかつ女性らしい柔らかさがありそうなうえに良い感じに太股の露出度がある……と。こういうのがいいのよね?」
「……はい」
「変態確定」
「…………はい」
耳が長いのが好きで、年相応の発育をしてなくて、当たり前のように着ている民族衣装から脇と太ももが露出しているのが好き……うん、自分でも分かりやすいくらいに変態趣向かもしれない。
「でもまあ、いいわよ」
「……何が?」
「ユウキがこういうのを好きだっていうんなら、多少は合わせてあげてもいいって、言っているのよ」
「…………ハイ?」
「まあ、楽しみにしているといいわ!」
そういうと、その話の流れのままシュエリアは俺の事を部屋から追い出した。
そして後日、俺はシュエリアの自称『俺の趣味に合わせた姿』にエルフに対する幻想を破壊されたのだった。
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