第二十二話「黒百合」
「野田君の言葉を、信じるよ。本当の事を話してくれて、
俺は顔を上げた。
「野田君は
「ああ。俺には、伏見が輝いて見える」
伏見はうっすら表情を曇らせた後、深呼吸を一つしてボソボソと語り出した。
「野田君が腐心して
伏見は似つかわしくない言葉で自身を形容した。
「わがまま? 伏見がいつわがままだったんだ」
「我が
「本当の、本当の事を話すよ。そうすれば野田君はもう
五臓が
「伏見、やめよう」
「駄目だよ、ここで終わりにしなきゃ。
伏見が
「これは、一生誰にも話せないと思ってた。きっと、墓までもっていくんだ、ずっと、
「伏見……」
意味もなく、彼女の名が口から
伏見は「
「その人はね……
俺は真っ暗な宇宙へ
私の家庭は四人家族。不仲ではないが、時に家庭は戦場と化すことがある。ただその
姉は喜怒哀楽に
姉は、花や植物に
そう言えば、私の苦手を克服しようと庭で
次は、私が中学校に進学してからの話。
「おそろいのメガネ買ってみない?」
この提案はきっと姉の気
そんな姉の夢は、花屋か植物学者。少なくとも小中学生の間はそうだった
「アタシは障害者って言ってほしかった。だって平気な顔して周りに合わせられる人ってズルいもの。みんなと同じになるのに、なんでアタシだけ苦しまなきゃいけないの? アタシだってねガマンすればできる。でもガマンしないとできない。名前のない障害だから、全部アタシのせい。自己責任。全ては性格の問題で、原因はアタシの甘えなんだって。アンタ、アタシの言いたい事分かんないでしょ。でもね、分かんない方が幸せなのよ」
これは姉が高校生の時、私に言った印象的な言葉だ。最後の
私の期待とは裏腹に、姉は大学受験を機に一段とおかしくなった。
「どうしてそんなことをしたの!」
母が
それでも姉は地元の大学にどうにか合格した。よって姉は電車に乗って通学することとなる。同時に私もあの進学校に入学した。あれは
しかし晩秋に事件は起こる。当時姉は家族との
「いつになったらお前はしっかりするんだ」
父は眼鏡を鋭く光らせて、自律できない姉を
「お前の非行が近所に知られたら俺は恥ずかしいぞ」
当然、姉の為を思って説教したのだろう。
「お前は姉なんだからもっと考えて行動しなさい」
しかし、そう解釈できなかった姉は顔を
ここまでが私の目で
家出少女になった姉は、友人宅に転がり込んで
私の姉は体を売った。
これ
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