第十六話「盾」
あの動画。あの
伏見関連の問題は他にも存在する。「伏見は
逆に、善い人でない証明は非常にシンプルである。その人の言動から非倫理的なものを一つでも発見すれば
これまで俺は会話の中で伏見の非倫理的な言動を探ってきた。しかし俺が確認できる伏見は、優しくて遠慮深い穏やかな少女である。声を荒らげることもなければ、
購買へ
食後、俺達はまた中庭にある
「伏見は
伏見は不思議そうに「嫌いな物?」と
「じゃあ、質問を人に限って、嫌いなタイプとかあるか」
「人……。そうだなぁ、攻撃的な物言いとか口の悪い人は、苦手かなぁ」
俺は「非倫理的な言動に対する批判は
太陽が
「伏見、リストカットって、何でしてしまうんだろうな」
俺は何の気なしに疑問を共有しようとした。液体を飲み
「もしかして野田君もしちゃう人なの?」
「あっ悪い、そういう意味ではなくて。やってしまう人がいるのはどうしてかって言いたかったんだが」
伏見は「あぁあそうだよね。
「いや、今のは俺の聞き方がまずかったな。すまない」
俺達は
「リストカットとか、アームカットとか、自傷行為をするとね、頭がスッキリするの。確か脳内麻薬の影響だったかな」
「じゃあ何だ、本来
「そこまで科学を意識してやってる人は、居ないんじゃないかな」
伏見は困ったように
「それもそうか。しかし、何を考えての行動なんだろうな」
「自分でも、分からないのかも知れないよ」
「意味もなくやってるってことか?」
「うーん、きっと背景はあるんだろうけど、それをちゃんと説明できる人は少ないと思う。
伏見と性を結びつけることに対する拒絶感は崇拝心によって説明できたが、それが論理的な感情かと問われれば俺は首を
「きっとね、色々な事が
伏見の口調は
十八歳になってから、自分の嫌なところに気付いてばかりいる。それなのに悪の伏見は一向に見つけられない。善い人
午後の物理演習。本日監督したのは、以前苦言に
演習の形式は過去に出題された入試問題を半分解いて、その
「何ですか」
「いや、一応聞いておこうと思ってな。お前、まだ大学内容の勉強をしてるのか?」
今更あの話を
「もししてたら、
嘘はついてない。最近演習やら宿題やら期末試験やらで忙しく、加えて必要条件の理論や崇拝心という複雑な問題が立て続けに現れたことで、大学物理をやる
先生の声は低かった。
「野田、そろそろ焦点を受験に
やはり
「俺が何を学ぶかは自分で決めます。言いたいことはそれだけですか。それだけなら失礼させていただきます」
俺は「おい、待て」と呼び止める先生を捨ておき、
しかし、そろそろ受験モードに切り替えるべきということか。実際、先生の見解は一理ある。きっとライバル達はもう本腰を入れて受験勉強に
そして俺は、これからの勉強は自宅ですることに決めたから図書室にはもう顔を出さないと伏見に連絡した。
『そっかぁ、もうそんな時期だね。ちょっと
この返信を境に、俺達は受験を終えるまで一度たりとも集まることをしなかった。昼食も教室で食べることにした。事実、演習クラスが分かれていたことが
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