第十四話「崇拝」
思春期の男子が数人
とにかく、今の俺は
善い人になれるのは
必要条件の理論を修正するため、伏見の観察を始めて約
静かな図書室には雨音がしとしと
「恋は下心、愛は真心なんて言葉があるが、これは哲学的にどうなんだ?」
伏見への感情を恋と読んでみることにしたものの、この定義で考えると性的な下心がないからこれは恋ではないということになりそうだ。ならば、これは愛なのか? しかし愛と言うと少し
「愛を研究した人はきっと
それだけでは理論の
「その意味する
愛の理論。そこにこの感情の答えがあるのだろうか。
「その理論とはどういったものなんだ?」
「色々ある
「ほう」
要するに「見返りを求めず人を愛せ」という無償の愛を言っているのか? 相手の成長を願うというのは、親から子への感情と同じと言って
「愛は単なる激情ではなくて、決意や約束でもある信念の行為だから、
信念か。揺るがない自己をもつべしということなのだろう。つまり、フラフラして落ち着かない奴は、愛する能力を持てないということだな。
「後は、愛し合えるのは自立した者同士だけで、
「つまり、相手がいないと駄目っていうのは、
「うん、多分その解釈で大丈夫だと思うよ」
伏見はまだまだ記憶を
「えーと、他には、愛は落ちるのではなくもっと能動的な行為で、
口に出すのは
伏見ほどの善い人はそうそう見つけられるものではない。だけど交際したいと
「他にも
伏見は自身の額を三つ指でトントンしながら軽く
「それじゃあ『理想的な愛はプラトニックな肉体関係を望まないものである』とか、そんな感じの理論はなかったか?」
「そう言えば、愛と性愛を同一に見てはいけないとか、孤独を埋めるための性愛は良くないとは書かれてたけど、完全に性愛を断てとはなかったような……。多分、
「仏教がか? しかし、性欲は
「
「というか宗教の話はどうでも良いんだが」
俺は次第に胸の辺りが気持ち悪くなってくる。伏見は
「あっ
性欲は悪じゃない? 好きな人を性的に見ることは当然なのか? それなら
今日の議論によって、答えまで後少しのところに来ている気がする。考えろ。性欲が悪なのは本当に宗教思想なのか? しかし性欲感情は
善い人?
伏見が善い人だと、いつ決まったんだ? それに、何だこの感じは。先程から
ここで、論理の
俺は思い違いをしていた。あの時、俺は級友の言葉に伏見が汚されたと感じたのだ。汚されたということは、神聖なものだと思っていたということ。因果の
肉欲を
伏見を善い人だと信じ込んでいたのが何よりの証拠だ。人は多面性を
例えば俺の姉は、良い姉だが善い人ではない。
俺がまだエロ
お互い成熟すると、彼女には「面白くて世話焼きな美人の姉」という面だけが残った。しかしその
短大を卒業した後は実家でフリーターをやっている。アルバイト生活は
単純そうな姉でさえも複数の面をもっている。だから人の一面だけを切り取って、全てを知った気になるのは余りにも
俺は
春と共に訪れた恋の予感は、俺の目に
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