第4話 終焉

 しずくの死後も村人たちは水守様を崇め、祈りと感謝を伝えに度々訪れた。その様子を水守様と残ったしずくの心の一部は温かな気持ちで見ていた。そうして数えきれないほどの季節を廻り長い年月が過ぎていった。


 時の移ろいの中で人々の生活の様子は大きく変化していき、それとともに水守様に祈りを奉げに来るものは減りいつしかその存在は忘れ去られていった。

 水守様の力はその存在が人々の思いから消え去るとともに徐々に弱っていった。


 ある時、水守様は最後の力を振り絞るようにして鏡を作り出した。

 「しずく、長い時を私に仕えてくれてありがとう。お前がここにやってきてからというもの私はとても楽しかった。だが、お前だけを残して私はもうすぐ消えてしまうだろう。すまない、あの時にやはり帰してやるべきだった。」

 「いいえ、水守様に未来永劫お仕えしようと自分で決めたのです。だからそんなことはおっしゃらずにこれからも、、、」


 水守様は泣きじゃくるしずくをなだめるように作り上げた鏡を授け優しく言った。

「これからとてもとても長い時をたった一人でここに留まらなくてはならない。寂しい時にはこの鏡が私だと思っておくれ。そして、長い時を超えていつの日か生まれ変わったしずくがここに来るだろう。この鏡はお前たちをつないでくれる。その時にやっとあるべきところへ戻れるからね。」


 水守様は大切なことを伝えると一滴の水となって消えてしまった。それからというものしずくは鏡を大切に携えて長い時を孤独に耐えながら待ち続けた。




 

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