12話 『決闘』

リアムは激痛に悶えた。

それでも、アイザックとオドは平然としている。


「リーム! おいしっかりしろ! クソ! なんだっていうんだよ! エリス、ちょっとこい!」


「何よ、回復魔法ならオスカーの方がーー」


「違う! 相手しろ相手!」


「ああ」


エリスはスーザンが指を刺した方向を見て即座に理解し、次の瞬間にはいなくなっていた。


「あんたら、私のパーティ仲間を殺して、いい気分なんでしょうね?」


エリスはそう言った途端、エリスが持つには大きすぎると思わせるほどの大剣を振りかざしーーーー。


「え?」


漆黒の剣が、エリスの体を貫いていた。


「すまんな。罪がないとか言ってる場合じゃないんでな」


どこか聞き覚えのある声だった。

リアムは必死に頭を働かせる。

横では必死さが全く伺えないオスカーが、リアムに回復魔法をかけている。ふと、心の癒しを求めてメアリーを見る。メアリーは相変わらず死んだ目をしている。


「あぁ……」


リアムが思い出した時、ドサリと、何かが落ちる音がした。


「ッーーーーー」


エリスが倒れていた。


「あんたら……早く逃げなさいよ……ゲボッ……私は……もう……」


「何勝手に諦めてんだテメェ! ふざけんじゃねえよ! どうせすぐ死ぬから挨拶はしない!? 結局先に死ぬのはお前の方ってか!? あの問題発言撤回させるまで、俺はお前を死なせねえよぉ!」


「り……リアム?」


リアムはやはり何も考えていなかった。

ここで考えたら、臆病な自分は、きっと足が震えて動けなくなってしまう。


「高い位置から見下ろしてんじゃねえよ! 降りてこい! ーーーーーーエミリアーノ!」


男は不気味な薄ら笑いを浮かべた。


「はっ! バレたか脳なしのバニャコスタがあんな作戦提示するからだよ」


「バニャコスタ? 面白え名前だなオイ」


「俺らの……」


エミリアーノは降りてきながら言った。


「ボス、ってとこだな」


「へぇ……えいぁ!」


リアムは話しながら驚異的なスピードで迫ってくるエミリアーノをかわす。

リアムは落ち着いて剣を構え、エミリアーノを見る。


「お前は……黒騎士団ってことでいいんだな?」


「ああ。まあーー」


エミリアーノが言葉を続ける前にエミリアーノに迫った。


「は…や!?」


エミリアーノは驚きつつもなんとか剣でリアムを迎え撃つ。

しかし、真正面からの奇襲で、エミリアーノは一瞬動揺し、リアムの力を押しきれなかった。


「冒険者ウォッチがあるんで……ねっ!」


「卑怯だーー」


「うるせえ! お前がこんなことするから悪いんだろうが!」


リアムはそう言いながらエミリアーノを突き放す


「ぐ……お前、気迫は驚くほどないが……なかなかの腕だな……」


「えっ? そう?」


素に戻る。


「ずっとこれで勝てたらいいんだけどね!ーーファイアボール!」


「ぐっ……!」


エミリアーノは吹き飛ばされ、リアムの反対側にある大樹に全身を強打した。


「オスカー! ボーッとしてないで加勢してくれ!」


「お、おう。………あああっ!」


「どうした!?」


リアムはオスカーの呪文を唱えない魔法を見たことがなかったため、単なる悲鳴かと思ったわけである。オスカーの腕から噴射されたのは、電気属性の魔法だった。


「ああああああああああああ!! やべっ、やべでくじぇええええ!」


「お……なんかグロいね、オスカー」


「あいつが最大限苦しむような倒し方でいいかなぁと思ってな」


オスカーが満足げに言った。


「じゃあああああ! やべでぇぇぇぇっぇ! ぎゃああああああぁぁぁぁついぃぃぃ!」


エミリアーノはのたうちまわり、苦しんでいる。


やがて、動かなくなった。


「おい、リアム。折角だから首とってこい」


リアムが衝撃を受けたのは、エミリアーノの壮絶な最期に対してでもなく、オスカーの話の内容でもなかった。


「僕の名前、初めて呼んでくれたね」


「ーーお前も、一人称が僕に戻ってて安心したよ」


オスカーがリアムに微笑みかけた。


リアムはそれに笑顔で返し、エミリアーノに歩み寄る。エミリアーノの死へのカウントダウンが、はじまっていた。


「ああ……やめーーー」


ズパッ!


エミリアーノは、首を跳ね飛ばされて、完全に息絶えた。


「よし、オーケーだ。オスカーはエリスの集中治療をよろしく。スーザンは……あそこで固まってるけど、多分大丈夫だろう。こんなに怪我人を出したんだ。この先行くべきじゃない」


リアムの言葉にオスカーもうなずいた。


「ああ、俺もそう思う。ところでなんだがーー」


「どうしたの?」


「お前、肩の傷酷くなってるぞ」


「ーーーあ」


リアムは、気を失った。

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