9話 『ダブる出発の日』
謁見から、全く睡眠を取らず黒騎士団の拠点に向かわないといけないらしい。全く。
「そんな顔すんなよ、ザック」
オドがとぼとぼと歩いているアイザックの肩を叩く。
アイザックの調子は先ほどからほとんど変わらない。
エリスの問題発言で、アイザックは「新人が逃げるだろ! 余計なことすんじゃねえ!」と激怒し、エリスが小馬鹿にしたように鼻を鳴らしたところでヒートアップ。
殴り合いになったが、将来は女冒険者最強の名を欲しいままにするだろうと予想されているエリスの前にアイザックは敵わず気絶。起きるとまさかのメアリーから慰めを受けアイザックはさらに落ち込み、現在に至る。
「全く、そのくらいで怯むなんて所詮はイアソックね、雑魚だわ」
「イアソック?」
「アイザックを並び替えてちょっと発音を変えたアイザックの……言うなれば、蔑称だよ。エリスによると……実にアホらしいんだけど……」
「何がアホらしいのかしらね、反対から読むとどうなるかわかるかしら?リーム」
「リアムです。そんな間違え方されたことないんですけど…………ーー「くっそあい」でしょうか」
「そうよ、「くっそぁぃ」と言うことよ」
「予想以上にくだらな……いや、聞くに耐えな……というか成立していな……」
「さっきからごちゃごちゃうるさいわね、シメるわよ」
そういったエリスからガチの殺気が飛んできてリアムはよろめく。
これが本物の冒険者か、と感心する。
「アンタら、アホみたいな話してないで早くリュック下ろせよ。アタシは疲れてんのよ、テントぐらいあんたらが張れよこの取り柄の一つもないクソだめ⚪︎⚪︎⚪︎野郎共が」
雑談を楽しんでいたときに、背後から恐ろしい暴言が聞こえてきた。
「スーザンっ! 女の子なんだからそういうことは言っちゃだめなのよ!」
「そうだよスーザン。⚪︎⚪︎⚪︎は言ってはいけない言葉ーー」
「アンタもいってんじゃん? オ・ド」
オドとメアリーが咎めても全く気にしない傍若無人な振る舞い、リアムが思う「でっかい」人の典型的なタイプだった。
「食糧はあるの? アーイザック!!!」
「んあ!うるせえな、ザン……ギャァッ!まダッいッデ!ネエエエだゴエッ」
アイザックが女性陣にボコされるのは今日二回目で、今のもアイザックが悪かった。
「うるさい」
そういったのは、透き通るような白い肌と、整った顔立ちの……
「おっ……オスカー……」
「ゲェッ!男なの!?」
そういった途端、リアムは気を失った。
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