8話 『表向きの激励』
リアムはほぼ過呼吸になっていた。
頭をぐねんぐねんに回し、大量にかいた汗を拭く。
「大丈夫かよリアム」
そう言ったのは、いつもは伸び放題の顎髭をいい形に整えているアイザックだ。
アイザックはあまり緊張していないらしい。
今から謁見だというのに。
「大丈夫!いざとなったら僕がサポートするよ!と、言っても君は新入りだから話すこともないだろうけどね。ま、大丈夫さ」
オドが気楽に言う。
リアムは左を見る。そこにはガクガクと震え顔を蒼白にしているメアリーがいる。
「め、メアリー、だいじょぶ?」
「あ、あああああああっっっっったぁあっりまえじゃない!」
メアリーはなぜか苛立ったように答える。
しかし、緊張しているものは緊張しているようだ。
しばらくそこで待っていると、甲冑を身に纏ったいかにも「兵士」と言う感じの人が来て、ニュートンズを案内した。その男の人について行き、大きな扉の前に立つ。
「陛下に失礼なことは言わないようにな」
男が失礼なまでに冷淡な声で言った。
扉が開いた。
******************
王の話は、主にニュートンズへの激励だった。
しかし、無事に帰ってこいというような趣旨の発言は全くなく、改めて国の考えを再認識させられてしまい、むしろ不快になった。
「クソ!納得いかねえなぁ」
「まあ…ザック、報酬が高いんだから…」
そういうオドも、納得はできない様子だった。
「ザックはそんなことで悩んでんのか、相変わらずバカな男だな。笑えるぜ」
そう言ったのは、短い銀髪で長身の…女性だった。
「こいつら新入りのメアリーちゃんとリアムか?」
アイザックが頷いた。
するとその人はリアムに目もくれず、メアリーのほうに歩いて行って固い握手を交わしている。
「癖強いだろ、あいつ」
アイザックが言った。
「お名前はなんていうんですか?」
「スーザンだ。おれはザンスーって呼んでるんだが、そう呼ぶとまた蹴られるからやめといたほうがいいぞ」
また蹴られんの!!!!
リアムは苦笑いした。
アイザックがスーザンを怒らせて殺し合いになる様子が容易に想像できてしまったからだ。
「もう、あんたたちは仕方ないわね」
そう呆れたように言う赤毛の少女がいた。
「早く行くわよ、スーザン、アイザック。あ、新入りの2人も」
「僕は?」
「ほら早く」
「無視かよオイ!」
オドが少女の冷たい対応を嘆いた。
「どなた?」
リアムはこっそりとメアリーに聞いたつもりだった。
「私はエリスよ。よろしくなんて言わないわ、どうせすぐ死ぬもの」
なんてこと言うんだこの人。
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