6話 『パーティの歴史』
「ニュートンズ知らねえのかよお前」
リアムは頷いた。
無名のパーティのくせに、と思わなくもなかったが、少しは情けなくなった。
「じゃあ説明するぜ、ニュートンズの歴史は…説明すんのめんどくせえから…おい、メアリー!あれ持ってこい」
メアリー、という名にリアムの体が反応する。
「人使いが荒いんだから…全く。ーーあれ?リアムじゃない」
アイザックが目を見開いた。
多分さっきのことだろう。
リアムは頷いてアイザックを安心させた。
「メアリーもメンバーなの?領主の娘なのに?」
「俺だってさっき知ったんだ。このアマはなんも言わなかった」
アイザックはしばらくして顔がどんどん蒼白になっていった。
「ア・マって?」
ーー自爆してやんの。
「ま、ま、そんなことより、さ」
アイザックがメアリーの手から手帳をひったくり、リアムに渡した。
「これ見ろ、現在のニュートンズ最新情報だ」
リアムは手帳に目線を落とした。
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(東暦567年6月現在)
冒険者パーティ パーティランク:C 所属クラン:未所属 リーダー:アイザック・カーター(lv123/B)28歳
⦅メンバー⦆
メアリー・スミス(lv4/D)16歳
オド・グリンデルヴァルド(lv102/B)24歳
オスカー・リースタル(lv67/A)19歳
バイヤー・クリンタルス(lv452/C)31歳
エリス・アーラウ(lv39/C)15歳
スーザン・エルデヴァール(lv612/S)25歳
ジョン・ケイン(lv17/F)16歳
エデン・ルガロウ(lv29/C)15歳
セルゲイ・クノッカール(lv797/B)35歳
ルイス・ハイデンベルク(lv800/A)36歳
サンドラ・ニュルス(lv188/C)27歳
歴史
東暦535年、冒険者ギルド設立からたった2年でニュートンズの前身となるアーディ・パロキアブラザーズが、当時17歳のフェイ・アーディ、ティディエ・パロキア、フォイド・パロキアのたった3人によって王都パルデラで設立された。ちょうどその頃クラン制度ができたため、パーティ名と同名のクランが設立された。(現在もクランは存在するが、クランに所属する冒険者の高齢化でほとんどクランとしての活動はない)3人は度重なる高難易度任務クリアによりパーティランクをSまで上げ、クランにも多数の冒険者が所属し、パーティメンバーも最大の14人まで増えた。当時実質勇者と呼ばれたファクライ・マクレガー、英雄の称号を持っていたファルター・セヌアイなど、多数の偉大な冒険者が所属していた。しかし、栄光の時期はすぐ過ぎ去る。フェイ・アーディが自殺し、パロキア兄弟は極東の地で大蛇に敗れ、急遽ファルター・セヌアイがリーダになるも、3人がいないパーティにセヌアイは興味を持たず、他の勇者パーティに行き、マクレガーも不慮の事故で死亡など、パーティにとって不幸が旅重ねって起き崩壊。なんとかセルゲイ・クノッカール、ルイス・ハイベルクの尽力によりパーティ解散は避けられた。
だがパーティ人数は3人まで減少し、弱体化。各々でソロの任務を受けなければ生活費に苦労するほどだった。その調子で10年やっていたが、さすがに厳しくなりいよいよ解散、というときに加入したのがアイザック・カーター。当時18歳で相棒のエリキス・ニュートンと共にパーティの体制を一新。クランから脱退し、2人を中心にやっと回るようになってきたところで、エリキス・ニュートンが死去。彼の功績を称え、パーティ名が『ニュートンズ』に変更される。入れ替わりの激しかったパーティだが近年はメンバーが脱退するのはその冒険者が死んだ時のみになってきた。クラン・アーディ・パロキアブラザーズ(A P B)に復帰する動きがある。
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「これ、誰が書いたんですか?」
リアムの見たところ、これは手書きだ。
「私よ」
メアリーがドヤ顔で言った。
「そうなんですか、すごいですね」
「ありがとう。いっつも思うんだけど、その敬語なんなの?」
「え?ああ、だって領主の娘さんですし、タメ口というわけには…」
「そんなのいいわよ。先輩でもないんだから」
リアムはそれを聞いてちょっと考えた。
「あれ?メアリーって先輩じゃないんです…の?」
「リアム、混ざって女の人みたいになってるわよ。あなたが試験を受けたときにいたじゃない、覚えてないの?」
リアムがコクリと頷いた。
「いたっけなぁ…まあそれはいいとして、アイザックさん、パーティメンバー僕も含めると12人もいるんですね」
アイザックが頷いた。
「今時珍しいだろ、こんなに人数が多いの」
「最近は4人くらいのパーティも多いからなぁ」
背後から知らない声が聞こえた。
そこにいたのは、髪がボサボサの可愛らしい顔をしている長身の男の人だった。
「こいつがリアム?よろしくな、リアム。俺はオドだ」
オドが握手を求めてきた。
リアムはそれに笑顔で応じ、「よろしく」と言った。
「まあ、全員が集まる事は少ないよ。大体は僕とリーダー、メアリーちゃんでやってるよ。そこに君も加わるわけだね」
「クランみたいな感じですね…」
オドは笑って頷いた。
「そうなんだよね、ちょっと前まではオスカーっていう子とやってたんだけど…」
「気難しくてね」
メアリーが寂しそうに笑って言った。
「『神童』だな。あいつを表現するなら。レベル67でAとかバケモノだろ」
「私もレベル4でDよ?」
「僕はレベル12でFですね…」
アイザックが豪快に笑ったので、リアムは少し気を悪くしてアイザックをにらんだ。
「そんな目で見るなよ」
つられてオドも笑った。
何もかも楽しかった。
ーーーこの時は。
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