3話 『鶴の恩返し』
「ちょっとちょっと、この体の状態で任務は無理よ!破棄しなさい!正当な理由があるんだから」
リアムはそれだけはしたくなかった。
初任務を破棄するなんて死んでもしたくなかった。あ、死んだら破棄か。
「初任務だよ?初任務を破棄するなんて信用が薄れちゃうじゃないか」
「知らないわよ! あなたこれで帰ってきたときに怪我してたら私の心が痛むのよ!慰謝料請求するわよ!」
「慰謝料って何慰謝料って!そんなの請求されたら僕の心病んじゃう!」
「知らないわよ! あなたが心病んだら私罪悪感で潰れちゃうわ! 頼むからここにいて!」
「おっけー!」
途中で何が言いたいのか分からなくなっていたが、最終的にメアリーが折れた形となった。一安心だ。
リアムは先ほどの道を通り、今度はちゃんと鉱山に到着した。
昔はトロッコが通っていたのだろう、線路が敷いてある。
(アンデットの嫌な匂いがする…警戒しておいた方がいいな…)
リアムはより一層警戒を強める。
「アヴァアアアア!」
「ぎゃあああああ!」
リアムはアンデットの突然の奇襲をうけ、その場に座り込んで、立てなくなってしまった。
(警戒していたそばからっ……腰を抜かしたッ)
リアムは座ったまま剣を振り回した。
アンデットの両足の切断を試みる。
「アアアア!ゔぇぁ!」
アンデットは知能がない。ボンクラだ。
ちょっとした作戦などにはすぐ引っかかる。リアムのこれ・・は作戦どころか、何も考えてもいない咄嗟の行動だったが、足を狙うと言うのは正解だった。もちろん、足を切られるとまずいなんてアンデットは考えない。
アンデットの両足は切断され、その場にアンデット倒れ込んだ。倒れ込んだ、と言うよりかは胴体がボトッと落ちてしまった、と言う方が表現は正しいだろう。
リアムは力を絞って立ち上がり、アンデットの胸を突き刺した。
「よし……アンデット1匹くらいで一苦労だよ…」
リアムはこの先が不安になる。
リアムはもう一度気を取り直して魔石を探し始めた。
♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢
「はぁ……はぁ……やっと見つけた……! !」
リアムは6時間の長い時間をかけて魔石を発見した。
持ってきていたツルハシで周りを削り、魔石を磨く。
「ふーっ」
魔石は綺麗な菱形の形になった。
魔石は磨いたとはいえ周りの石もついていたが、紫色の光を放っていた。
リアムはしばらく見惚れてしまっていたが、ハッとして冒険者ギルドへ向かった。
外はもう暗く、道中ゴブリンなどに遭遇したが、リアムは全速力で走って構いもしなかった。
トップスピードのままギルドの建物内へ突撃した。
「わわっ!ちょっと、何をしてーーーー」
「魔石を見つけましたぁ!」
「ふぇ?あ、あぁ…リアムくんの任務ですよね。では、依頼主さんにーーーー」
その時にはもうリアムはいなくなっていた。
リアムはダッシュで鍛冶屋に向かっていた。
「おわっ」
鍛冶屋のボイドさんが驚いている。
「なんだ?お前、俺の店に……お!魔石じゃねえか!」
リアムはコクリと頷いた。
「冒険者です。リアム・シュケルクと申します。ええと、魔石、持ってきました」
「ありがとう!ありがとう!よし、リアム、この店にあるものどれか一つ持っていっていいぞ!」
「それなんですけど…」
ボイドさんは首を傾げた。
「なんだ?」
「報酬、高すぎませんかね?」
ボイドさんは、それを聞いた途端豪快に「ガハハっ」と笑いはじめた。
「あったりめぇだろ!魔石ってのは激レアのなかなか見つけられない鉱石なんだぞ!」
「えっ!でもFランク任務だったじゃないですか!」
「魔物は少ないからな、あの鉱山」
ボイドさんはなぜか満足げに頷きながら言った。
「ま、そういうことだ。持ってけドロボウ」
リアムはそう言われて何を貰うか迷った。
剣が売っているが、いいのがわからず行ったり来たりしていた。
「なんだ?迷うのか?」
「ええ…どういうの選べば良いのかなって…」
「そんなの手に馴染むやつだよ。ほら、持ってみろ」
リアムは1番左に置いてあった刃が白い剣を持ってみる。見た目とは裏腹に、中はからなんじゃないかと思わせるほど軽い。だが、威力はものたりなさそうだ。
「じゃ、こっちはどうだ」
ボイドさんはリアムは微妙な顔をしているのを見て赤い装飾がジャラジャラとしている剣をリアムに渡した。
こっちは逆に細めの軽そうな剣だ。重さは軽い。
「ちょっと軽すぎる感じが…」
「そうかい」
ボイドさんはしばらく考えてから、「じゃあ」と閃いたように言って店の奥へ走っていった。
戻ってきたボイドさんは手にいい感じの大きさの剣を持っていた。微妙に紫の光を放っている。
「ほれ、魔石の剣だ」
「これが…」
リアムは剣を持ってみた。
「すっごい軽いですね…」
「ああ、でも威力は折り紙付きだぜ」
見た目とは裏腹にとても軽く、その上この軽さで威力は申し分ないらしい。
ボイドさんが嘘をつくような人には見えないし、手によく馴染むから、と言う理由で、リアムはこの剣に決めた。
リアムはホクホクして宿に戻ろうとした。
「きゃああああああ」
宿の前で、少女が屈強な男たちに絡まれていた。
リアムは咄嗟の判断で物陰に隠れた。
「ちょっと、やめっ」
「可愛い子猫ちゃんだなぁ、ガハハっ!え?なあ、エミリアーノ」
「何やってるんだ、もう行くぞ」
「そんなこと言うな。ソルダードだって疲れてんだ。少しくらいは、な?」
ソルダードが頷き、エミリアーノは「ふんっ」と言った。
「勝手にしろ。するなら、後始末はお前らがやれよ」
「ぎゃー!怖いこと言うなぁ!合意の上、でね」
「ロイド、俺も混ぜてくれ。エミリアーノは先行ってていいよ」
「ああ、そうさせてもらうが、騒ぎは起こすなよ。面倒なことになるからな」
エミリアーノはそう言って、こっちに歩いてきた。
リアムは身をかがめてエミリアーノを観察する。
黒いフードをかぶっており顔はよく見えない。
リアムはこちらをチラッと見たように思ったが、鼻を鳴らしてそのまま行ってしまった。
「名前はなぁんて言うのかなぁ?」
「んんんんんんん」
ソルダードが少女の胸に手を伸ばしたその時、リアムが飛び出した。
「うぉぉぉぉ」
「あ!?なんだ!?ロイド、下がれ!グァッ」
リアムの頭突きにソルダードがよろめく。
リアムは貰ったばかりの剣を抜き構えた。
「なんだぁお前」
「すみません!」
リアムはそういいながらソルダードの顎にパンチを喰らわした。
ソルダードは白目を向いたばたりと倒れた。
「ソルダード!くっそ!」
「申し訳ありません!許してください!」
リアムはそういいながらロイドのパンチをかわして腹に蹴りを入れる。
「ぐぇえっ」
ロイドは倒れた。
「えーと、そこの女の子、衛兵をよんで…あっ!メアリーじゃないか!」
「今の今まで気づかなかったの?」
「暗かったからね」
「そんなことより、助けてくれてありがとう。見直したわよ」
「もともとは評価が低かったんですね……」
メアリーはニコリと笑ってポケットを探った。
「これ、私の住所。この事を聞いたらお父様もあなたにお礼したがって、家に呼ぶだろうから、先に渡しとくね」
「え?ああ、わかった」
リアムは口ではそう言いつつも、何一つ理解していなかった。
急にハッとして、メアリーが歩いて行ってしまうのが見えて急いで追いかけたのだから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます