第18話 モモタロウ団②

ササモリヒコの屋敷やしきである。

ウラ、そして使者ししゃ二人ふたり

出発前しゅっぱつまえ挨拶あいさつていた。


サ「阿曽媛あそひめは?きゅうなことで、

かなしんでおらぬか」


使A「いえ、百済くだらへの土産みやげたせたいと、

いそ準備じゅんびしてくださっていまして」


サ「そうか……」


ウラのつま阿曽媛あそひめ昨晩さくばんからずに、

ままかりをけたのや、

吉備団子きびだんごやまほどこしらえていた。


ウラがやっと帰郷ききょう決心けっしんしたので

阿曽媛あそひめ大喜おおよろこびだった。

これまで、

百済くだらから使者ししゃたび

ウラに帰郷ききょうすすめていたので、

嬉々ききとして、土産みやげ準備じゅんびいそしんでいる。


ウラはいきいた。


ウ「ああまでよろこばれると、

おれほうさびしくなるよ……

ワカタケヒコがもどるのが、

おそくとも三ヶ月後さんかげつごとすれば、

おれもそのころにはもどりたいとおもう」


気丈きじょう阿曽媛あそひめが、

さびしい素振そぶりをせず、

元気げんきにウラをおくそうとしている

健気けなげ姿すがたが、かぶ。


ウ「かってるよ。ちゃんと話合はなしあって、

かんがえて、めるから」


にっこりうなずいて、

ササモリヒコは、おちゃいだ。


サ「しかしおまえとこうして

ここでちゃむのはひさしぶりじゃないか?

また、しばらくおあずけだがなあ……」


ウラと使者達ししゃたち四人よにん

縁側えんがわ腰掛こしかけ、あつちゃすする。


ウラはふー、ふー、と、なかなか

くちをつけられずに


ウ「おれは、あつちゃ苦手にがてだからな……」


ウラはちゃあきらめて、にわった。


そこへ

イヌカイタケルとトメタマヒメが

やってた。


ト「れたねえ。なみおだやかだよ」


見上みあげるとさわやかな秋空高あきぞらたかく、

トンビが気持きもさそうにんでいる。


イ「つとなると、本当ほんとう

すぐにってしまうんだな」


イヌカイタケルは

ウラとならんで、かたんだ。


ト「決心けっしんにぶるといけないもんねぇ、

モモタロウだんめやしないか

心配しんぱいだよ」


トメタマヒメが、うしろから

二人ふたりあいだんだ。


ウ「二人ふたりとも、迷惑めいわくかけるが、

よろしくたのむ」


ウラはあらたまって、二人ふたりあたまげた。


トメタマヒメは

ウラのおおきな背中せなかたたいてった。


ト「しっかりね!!かえってくるなら、

土産みやげなにがいいかね、やっぱりあの

美味うまさけかなぁ~」


ウ「いてて、トメタマヒメの

平手ひらては、さけはいっていなくても容赦ようしゃないな。

これなら安心あんしんして留守るすまかせられるよ」


イヌ「まったくだ。おれ安心あんしんだ」


ト「おまえもしっかり留守番るすばんしろっ」


三人さんにんわらっていると


モ『おはようございます!!』


モモタロウだんあつまってきた。


モ「中山なかやまじんは、もう撤退てったいしていたよ」


モ「あれは、結局けっきょくなんだったんだよ?

タケルにいさん、ってんだろ?」


昨日きのういくさ準備じゅんびめ、みんなかえした

イヌカイタケルは、たちまち

少年達しょうねんたちかこまれて、質問責しつもんぜめである。


イ「おいおい、けよ…」


もみくちゃにされるイヌカイタケルを

かねて、ササモリヒコが

こえをかけた。


サ「あれは、大和やまとぐんじゃよ」


そのこえに、縁側えんがわすわっているササモリヒコのまえ

みなあつまった。



サ「昨日きのう大和やまとから、

イサセリヒコという将軍しょうぐん

たずねてきた。

中山なかやまにいたのは、かれひきいていたぐんだ。

しかし、めてきたのではない。

イサセリヒコは

さとからはなれた中山なかやま

兵士へいしたせるためにじんり、

一人ひとり屋敷やしきた。

じつかれは、ワカタケヒコのおとうと

ワシらの仲間なかまじゃ。

昨晩さくばんのうちに大和やまとかえったが、また

ワカタケヒコととも吉備きびもどり、

ともにここでらすことになるだろう。

みなよろしくたのむぞ」


モ「なんだあ、桃太郎兄ももたろうにいさんのおとうとなら

おれたちもいたかったよなあ」


少年しょうねん一人ひとりった。


ト「まあ、たのしみにしておいで

えばおどろくから」


ワカタケヒコと、てもつかぬ

眉目秀麗びもくしゅうれいなイサセリヒコが、ワカタケヒコと

れだって吉備きびもどってくるのを想像そうぞうして

トメタマヒメはクスクスわらった。


モ「ええ~、どんなひとだよ~?」


サ「…オホン。みなきなさい。

今日きょうはもうひとつ、大事だいじはなしがある」


ササモリヒコは、ウラをせてった。


サ「これからみなでウラを見送みおくるぞ。

ウラは今日きょう百済くだらかえる。

さあ、ウラ、みな挨拶あいさつしなさい」


モ『ぅええええええーーーっ!?!?』


モモタロウだんさけごえむらひびいた。

はたけで、百姓達ひゃくしょうたちおどろいてこちらをあおている。


ウ「……」


ウラは、

おおきなからだかがめて、一人一人ひとりひとり

じゅんかたりかけていった。

やさしい眼差まなざしで、みなかお

けるように

じっとつめ、

おおきなで、

かた握手あくしゅわしたり、抱擁ほうようしたり、

あたまでてやったりした。

なかにはしてしがみつき、

はなれなくなってしまうや、

ウラに一撃いちげきらわそうとして

見事みごとにかわされてくやしがる青年せいねんもいた。


そうして

全員ぜんいん挨拶あいさつをしえると、

みんなまえった。


ウ「ワカタケヒコも不在ふざいときだが、

みんな吉備きびをしっかりまもってくれよ。

たのんだぞ!」


モ『はい!』


ト「みんなたのもしいじゃないか…」


イ「そうだな。たたかわないための鍛練たんれんを、

つづけるべし!だ。おれ頑張がんばるか~」


イヌカイタケルは、

モモタロウだん見渡みわたして、


イ「しかしおれほう稽古けいこけられそうだ」


ト「そうだね。まととして頑張がんばれ。

昨日きのうみたいなはしりじゃ、

すぐやられるだろうな~」


イ「ひい~」




































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