第14話 ウラ②

百済くだらから

使者ししゃがやってたのは

ワカタケヒコが大和やまとった

翌日よくじつだった。


使A「ウラさま今度こんどこそは、

もう一刻いっこく猶予ゆうよもございません。

我々われわれ一緒いっしょに、

いますぐ、ふねにおりください!」


サ「まあまあ、お二人ふたりとも、

それはあまりに性急せいきゅう

さあ、どうぞこちらへ。

ちゃでも、みなされ」


ササモリヒコの屋敷やしきである。


二人ふたり使者ししゃきずってでも

もどそうとするので、

ウラはササモリヒコに

たすけをもとめてた。


いつものように

イヌカイタケル、トメタマヒメととも

三人さんにん縁側えんがわすわり のんびりと

むらながめておちゃんでいた

ササモリヒコは、


サ「おやおや、おひさしぶりですなあ、

二人ふたともわりなくお元気げんきそうで」


と、笑顔えかお

二人ふたり使者ししゃ歓迎かんげいした。


サ「……国王殿こくおうどの容態ようだい

よろしくないのですかな?」


座敷ざしきとおされ、

ちゃとお菓子かしされたものの、

ソワソワとかない使者達ししゃたち

ササモリヒコがった。


使A「左様さようでございます、ササモリヒコ殿どの!」


一人ひとりしてうったえた。


使B「ウラさま!このところ王様おうさまは、

ウラさまいたいと、毎日まいにちそればかり…」


と、もう一人ひとり使者ししゃ目頭めがしらさえる。


ウ「……」


いささか芝居しばいがかってえるが

じつのところ、

ウラのちち百済国王くだらこくおう

もう何年なんねん病床びょうしょうしており、

近頃ちかごろ容態ようだい悪化あっかしていた。


ウラが吉備きびらしはじめて数年後すうねんご

いくさわりくに安定あんていした百済くだらから、

つかいのふねた。

以後いご数年すうねんごとに百済くだら使者ししゃおとずれたが

ウラがれていた子供達こどもたちかえらせても

ウラ自身じしん百済くだらもどったことは

一度いちどもなかった。


国王こくおうやまいたおれたときも

おとうと結婚けっこんしたときも、

自分じぶん結婚けっこんしたときも、


ウラは、百済くだらもどらなかった。


一旦戻いったんもどれば、

国王こくおうにされてしまうにちがいない。


今回こんかいも、ちち仮病けびょうかもしれない。

もし、おとうとおうゆずるなら、

とっくにそうしているはずだ。


ウ「王丹おに王座おうざときには、

いわいにけつけるよ」


ウラは、そううとがり、

屋敷やしきていってしまった。


使A「ウラさま……」


サ「ウラは吉備冠者きびかじゃとして

みなしたわれておりますでな。

きっと、いま吉備きびはなれるのは

心苦こころぐるしいのでしょう」


使B「と、いますと」


サ「昨日きのう、ワカタケヒコが

大和やまとちましてな。じつ

あねのモモソヒメが急逝きゅうせいしたんです」


使A「モモソヒメさまえば…

あの大釜おおがまの……?」


サ「そう、かつてウラが

おもいをせていた……

かどうかは、わかりませんが(笑)」


使B「では、大和やまとまいりたいと…?」


サ「いやいや、ウラが姫巫女ひめみこ葬儀そうぎ

参列さんれつすることはできないでしょう。

それよりも、ワカタケヒコが留守るすいま

吉備冠者きびかじゃとしての責任せきにんがあると」


使「そうですか……では

ワカタケヒコ殿どのは、

いつもどられるのですか?」


サ「おそらく、二ヶ月にかげつもどらんでしょうな」


使AB「!!、二ヶ月にかげつも、てませぬ!」


使者達ししゃたち悲鳴ひめいのようなこえげた。


サ「さあて、こまったのう……」


かぜにそよぐにわ桔梗ききょう

かたりかけるようにつぶやくと

ササモリヒコは

たかんだ秋空あきぞら見上みあ

ゆっくりとおちゃすすった。




ウラを説得せっとくできぬまま三日みっかぎた。

すべもない使者達ししゃたちは、

ササモリヒコの屋敷やしき相談そうだんた。

しかし、やはりすべはなく

イヌカイタケルとトメタマヒメもとも

みんな縁側えんがわならんで、おちゃすすっている。


見晴みはらしのよい高台たかだいにある屋敷やしき縁側えんがわからは

むら一望いちぼうできた。


快晴かいせい秋空あきぞらもと村外むらはずれの野原のはら

ウラがむら若者達わかものたち

武術ぶじゅつおしえているのがえる。


イ「今日きょう頑張がんばるなあ、モモタロウだんは」


使A「は、桃太郎団子ももたろうだんご…?というのは?」


ト「…ぷっ、団子だんごじゃないよ、モモタロウだん

ワカタケヒコのあといで

二代目桃太郎にだいめももたろうになろうって若者わかものが、

結構けっこう沢山たくさんいるのよ。

ワカタケヒコが留守るすしてるもんだから、

みんなっちゃってるのね」


使B「ほう……ウラだん、では、いのですか」


使A「!!こら、なにうか、あつかましい!

ウラさま外国人がいこくじん、いくら吉備冠者きびかじゃっても

……」


もう一人ひとりあわてて小声こごえせいしているところへ

トメタマヒメが


ト「あるよ」


使A「えぇっ?!あるのですか!!」


トメタマヒメの言葉ことばっておどろ


使B「おおぉ、素晴すばらしい!ウラさま~✨」


使者達ししゃたちってよろこんだ。


ト「ウラだんは、鉄器作てっきづくりの集団しゅうだんだよ。

いまじゃ、吉備きびらしは鉄器作てっきづくりが

ささえているんだから、そりゃあみんな熱心ねっしんさ。

ウラは、吉備きびまもるだけじゃなく、

さかえさせてくれたんだもの

みんな感謝かんしゃしてるし、尊敬そんけいしているわ」


使AB「ほどほど~✨」


イ「えらいうれしそうだな…」


使B「一刻いっこくはやく、ウラ団子だんごのことを

王様おうさまにご報告ほうこくしたいなぁ!」


使A「本当ほんとうに、なあ!」


なみだぐむ使者達ししゃたち


ト「ウラ団子だんごじゃなくて、ウラだんだよ!」


イ「涙脆なみだもろいのは、

ウラだけじゃないみたいだな」


サ「しかし、

国王こくおうは、ウラだんよろこばれますか?

それよりも、

くにもどってほしいのでは」


使A「そうかもしれませんが…

ウラさまのご活躍かつやくをおつたえすると、

王様おうさまはいつも、大層喜たいそうよろこばれます」


サ「そうですか……」


ササモリヒコは、

若者達わかものたちたのしそうにたわむれながら

武術ぶじゅつおしえるウラをつめた。



そのとき屋敷やしきもんまえに、

るからに高貴こうき

うつくしいおとこあらわれた。

としころはちょうど

ワカタケヒコとおなくらいえる。


ところがそのおとこ

ともれていないようである。

もんまえで、所在しょざいなさげに

キョロキョロしている。


トメタマヒメが出迎でむえると

そのおとこはイサセリヒコと名乗なのった。









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