第13話 ウラ①


ウ「……本当ほんとうは、

モモと天上てんじょう出会であったときに、

はなすべきだったんだけど……」


モ「?」


ウ「おれさ……、あの……

うみで……、おぼれたんだ……」


ウラは赤面せきめんして、すこかおそむけた。


大「…それは、ちょっと

いづらいかもなァ……」


大物主おおものぬし苦笑にがわらいした。


ワ「え?あれ?ウラにいさんおよげたやん?」


ウ「……いや、そうなんだけど……」


モ「え、うみ……?」


ウ「うん……」


モ「じ、じゃあ、あのとき……

天上てんじょう出会であったときに、

ずぶれで、きずだらけで、

ふくもボロボロだったのは……」


ウ「そう、うみで……」


モ「え、じゃ……」


ウ「…モモごめん、おれ、その…

づらいっていうか……」


ウラはうつむいて、蟀谷こみかみいた。


モ「………それじゃ、もしかして、

イサセリヒコとたたかったり、

してないってこと……?」


上目遣うわめづかいにモモソヒメを一瞥いちべつして、

ウラがうなずく。

となりでイサセリヒコも、

うんうん、とはげしくうなずいている。


ウラをにらけながら

モモソヒメのかお

みるみるうちに

まってゆく。

おこるのか?わらうのか?

オロオロと見守みまも男達おとこたち


しかし、モモソヒメは

仁王立におうだちのまま

かたまってしまった。


しばしの沈黙ちんもくが続いた。


そして、じっといきをのんでいたみんなが、

こらえきれず

いきこうとした瞬間しゅんかん



モモソヒメのりょうから、

ビー玉程だまほどもあるような大粒おおつぶなみだ

あふした。


ウラはあわてて、

モモソヒメにった。


モモソヒメは

天上てんじょうでウラと再会さいかいしたときのように

盛大せいだいいた。

子供こどものように屈託くったく

清々すがすがしいようだった。


ウラは、じっとそれをめて

天上てんじょう再会さいかいしたときおなじように、

モモソヒメの背中せなかさすっていた。


ようやく、むねつかえをすべしたのか、

モモソヒメはウラのむねうずめていた

かおを上げた。


ぐちゃぐちゃだが、清々すがすがしい

モモソヒメのかおて、

ウラは一瞬いっしゅん表情ひょうじょうゆるめたが、

また、すぐに真剣しんけんなまなざしで

モモソヒメにあたまを下げた。


ウ「…心配しんぱいかけてごめん」


それからウラは、


モモソヒメのほほ

大きなてのひらつつんだ。


男達おとこたちが、ひそかにいろめきった。


ワ (チューか?いよいよ、接吻せっぷんか?!)


かがんでモモソヒメののぞむウラ。


ワ (よし!けッ!)


つぎ瞬間しゅんかん、ウラは

モモソヒメのほほをムギュッとはさんだ。


ワ (おい待て?)


両手りょうてはさんだほっぺたを

数回すうかいこねまわすと、

モモソヒメがわらった。


ウラもわらって、

モモソヒメのあたまにポンポン、と

やさしくれると、

二人ふたりれだってテーブルのほう

もどってきた。


ウ「すみません……おれが、モモに

ちゃんとはなしていればかったのに……」


ウラは、みんなあたまげた。


ワ (だぁ〰️〰️、ウラにいちがうだろ!!

あそこでチューしないで、いつすんだよ!?)


ワカタケヒコは、しずかに、

しかしはげしく地団駄じだんだんでいた。


孝「いいじゃないか、ウラくん

そういうことは、よくある。

讃岐さぬきでモモソヒメが

迷子まいごだとえなかったことだって

あったろう?(笑)

それに、大体だいたい、いつだって

モモソヒメが大騒おおさわぎして

きみんでいるんだからね、

あやまるのはこちらのほうだよ」


孝霊天皇こうれいてんのうがり、

ウラとモモソヒメを

ダイニングテーブルへかせた。


そうして

みんながダイニングテーブルにくと、


大「さてさて、誤解ごかいけたことだし……」


大物主おおものぬし一同いちどう見回みまわした。


大「おお、そうだ。イサセリヒコは

はらってるんじゃないか?」


もなく

ダイニングテーブルに

食事しょくじはこばれてきた。

サラダにオードブル、チキン、

ローストビーフ、白身魚しろみざかなのマリネ、

いろとりどりのカナッペに、フルーツ……

テーブル一杯いっぱい料理りょうりならぶ。


モ「わー、美味おいしそう!

わたしも、おなかすいちゃった~」


孝「では、あらためて乾杯かんぱいするとしようか!」


ワ「父上ちちうえ大丈夫だいじょうぶ無理むりするなよ~」


孝「大丈夫だいじょうぶ大丈夫だいじょうぶ心配御無用しんぱいごむよう

わたし、さっきより若返わかがえってるでしょ」


ワ (…マジか。天上てんじょう便利べんりだなあ…)


大「それじゃ、みなさん、あらためまして……」


乾杯かんぱい~』


もう何度目なんどめかわからない乾杯かんぱいをして、

やんややんやと、

盛大せいだいうたげはじまった。


ワ「……でもさ、ウラにいって、

およげたよね?おれ一緒いっしょもぐってた

がするんだけど……」


ワカタケヒコが

ローストビーフをモグモグ

べながら、くびをかしげた。


ウ「うん、およげた。でも、

としのせいか、たびつかれか。

いや…油断ゆだんしていたのかな……」


ウラは、

ローストチキンにかぶりつく。


モ「たび?」


なまハムメロンを頬張ほおばっていた

モモソヒメは

ウラをた。


孝「そうだった、そうだった。

イサセリヒコとウラに、

桃太郎伝説ももたろうでんせつ結末けつまつ

はなしてもらうんだったな」


孝霊天皇こうれいてんのうは、サンドイッチに

ばしながらった。


ウ「あ、あれ、ぼくも……?」









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