第6話 孝霊天皇

ウラとワカタケヒコは、

おもわずさかずきとしそうになった。

あわててえりわせなおしてかしこまる。


孝「ハハハ、すまんね。

偶然ぐうぜん、たまたまよ。

ここでんでたらね、

モモソヒメがウラくんはいってきたから、

なんだかづらくなっちゃって。

それにしても、

モモソヒメは酒癖さけぐせわるいねえ」


孝霊天皇こうれいてんのうわらいながら、

グラスを片手かたて小上こあがりへうつってきた。


モ「お父様とうさま!ちょうどよかった。

どうなっているのか説明せつめいしてください!

ウラはどうしてこんなに

呑気のんきにしていられるんですか??」


にじりるモモソヒメに


孝「……りませんよ。

でも、まあね、ウラくんはいい青年せいねんです。

それはたしか。

モモソヒメ、ウラくん結婚けっこんすれば

よかったんじゃないの」


ウ「いや、そんな///ぼくつまいますから」


孝「あ、そうだね。ごめんごめん、冗談じょうだんよ。

綺麗きれいおくさんだよね、

阿曽女あそめさん……だっけ。

でもウラくんも、もう一人ひとりくらい

おくさんがいてもいいんじゃないの?

あ、ダメか。

モモソヒメは巫女みこだもんなぁ、

ハハハ……」


モ「もうっ!お父様とうさままで、はぐらかす?!

ひどい!!わたしはこんなにも、

ウラの誤解ごかいきたいとおもっているのに!!

うぅ…………」


ワ「あーあ、~かした……」


孝「なんだ、今度こんど上戸じょうごかね。

やれやれ……そういえば、

モモソヒメが筍型たけのこがた飛行船ひこうせんって

してったときも、

やれやれ、てったんだったなあ。

なつかしいはなしけたよ」


ワ「ちぇ、全部ぜんぶいてたのかよ~」


孝「きみらがわたしほうへ、わざわざ

うつってきてくれたんじゃないか。

わたし、ここでんでたんだもん」


孝霊天皇こうれいてんのうは、すぐまえのカウンターせきた。


ワ「武勇伝ぶゆうでんが1つもない桃太郎伝説ももたろうでんせつ

つまんないよな~……」


うつむいてさかずきもてあそぶワカタケヒコに、


孝「いや、おやバカかもらんが、

まえ充分じゅうぶん立派りっぱ英雄えいゆうだったぞ~」


孝霊天皇こうれいてんのうさけぐ。


ワ「えぇー?!……そう?

えへへへ……そうかな?

でもさー、ホント、

あンとき山道やまみちったらさ、

そりゃもう……」


孝霊天皇こうれいてんのうとワカタケヒコが

がっていくよこで、

おな速度そくど

モモソヒメの表情ひょうじょう

けわしくなっていくことに


ウラはいた。


ウ「あ!……あー、ええと、

モモソヒメ?

そろそろ……

旦那だんなさんにむかえにもらったほう

いいんじゃないか?

今日きょうはもう、

結構けっこうんだもんなあ……」


やさしくこえけるウラを

キッと一瞥いちべつしたかとおもうと、

モモソヒメは着物きものそでひるがえし、

して大袈裟おおげさした。


モ「いやだ!駄目だめよ!!

あのひとたってきえらない!

ワァ~ン!」


孝霊天皇こうれいてんのうあきれて


孝「すみませんねえ、うちのって、

いつもこんなかんじなの?

なんかストレスがたまっているのかね」


と、モモソヒメの背中せなかを擦か《さす》ろうと

ばすと、

それをはらうように

モモソヒメはガバッとがり

座卓ざたくをひっくりかえしそうないきおいで

り出して孝霊天皇こうれいてんのうにらけた。


モ「もーーーーー!!わたしはさっきから、

ウラの誤解ごかいきたいのッてってんの!!」


孝「………モモソヒメ、こわいっ(泣)……」


ワ「おい、ちょっと、モモねえちゃん、

いくらっぱらってるからって、

父上ちちうえにそんな……」


モモソヒメをおさえようとする

ワカタケヒコをせいし、

孝霊天皇こうれいてんのうは、

しばしモモソヒメをつめた。


しんとしずまりかえった小上こあがりに、

れてさらにぎわいはじめた

みせのざわめきがこえてきた。


孝霊天皇こうれいてんのうは、グラスのなか

うめくちふくみ、モゴモゴとべた。

さらたねむと、なか天神てんじんべた。

じてゆっくりあじわう。


ウラ、ワカタケヒコ、

そしてモモソヒメが、

固唾かたずんでじっと見守みまもなか

孝霊天皇こうらいてんのうついに、ゴクン、と

それをむと

ほっ、とひとつためいきをつき、

決心けっしんしたようにうなずき、

そして

モモソヒメを見据みすえた。


モ「……な、なんです?」


孝「……モモソヒメ、

まえ気持きもちはよくかった。

こんなにやさしくて、

みんなあいされたウラくん

何故なぜいま悪者わるものとして

かたがれているのか……

たしかに、納得なっとくがいかないなあ」


ウ「ぃ、いや、そんな。本当ほんとうぼくh……」


孝「このさい、モモソヒメのいうとおり、

ちゃんと誤解ごかいこう。それがいい。

そうだな、モモソヒメ!!」


孝霊天皇こうれいてんのうが、モモソヒメのり、

二人ふたりおおきくうなずいた。

途端とたん

モモソヒメの表情ひょうじょう

パアッとあかるくなった。


モ「そう!そうです!そうですとも!

流石さすが、お父様とうさま♥️

ね、ね、ちゃんとみんなはなしましょ、

父様とうさま一緒いっしょうったえてくだされば、

絶対ぜったいかってもらえるわ!

あー、よかった~。

安心あんしんしたらのどかわいちゃった!

すみません~、おさけ……あ、

やっぱり、ビールにしよっと。

だいジョッキ!ひとつおねがいしまーす🎵

あとこちらに……

父様とうさま、おわりおなじものでよろしい?

それじゃ、麦焼酎むぎしょうちゅうのほうじちゃり、

ホット……ぇ、あ、アイス?アイスね、

アイスです!!うめれて下さ~い!」


突如とつじょエンジン全開ぜんかい

ジョッキ片手かたて満面まんめんみのモモソヒメ。

さっきまで、だるくまとっていた

大正たいしょうロマンふう着物きものは、

テンションMAXバージョンに

リメイクされた。

膝上丈ひざうえたけすそわせにレースをあしらい

おびかみにはリボンや花飾はなかざりが

大盛おおもりられている。

かみいろはピンク、

ひとみもピンクのカラコン、

メイクはすで整形せいけいいきで、

アニメキャラかなにかのようだ。

もはやだれなのかわからない。


あまりの変容へんよう

男衆おとこしゅうにもめず、


モ「さ、どこからはなしましょうか。

あ!ずは乾杯かんぱいしましょうか」


ワ「……(おれは、今度こんどこそ、

同調どうちょうしないぞ!しないからな……!!)」


孝「ハハハ、モモソヒメ、

いいじゃないか、はなやか、はなやか。

さあ、よるながい。かんぱ~い」


ウ(…なんか、づらいわぁ……)



…………………………



モモソヒメが大和やまとかえくと、

かまえていた母君ははぎみ

モモソヒメにり、なみだながして

無事ぶじ帰還きかんよろこんだ。


すっかりうつくしいむすめ成長せいちょうしたモモソヒメ。

イタズラで突然とつぜんしてから、

もう三年さんねんっていた。


モモソヒメは

つとめて人々ひとびとらしをゆたかにした

讃岐さぬきでの功績こうせきもあり、おとがめはのがれた。


しかし、

すぐにでも吉備きびくにきたい、

というねがいは、かなわなかった。


これまで不在ふざいにしていたぶんの、

勉強べんきょうまっている。

ひめとしてまなぶべきことはやまほどあったし、

巫女みこ修行しゅぎょうおこなわなければならなかった。


そうして

宮中きゅうちゅうこもって修行しゅぎょうれる

モモソヒメには内緒ないしょで、


孝霊天皇こうれいてんのう

吉備きびかった。


ワカタケヒコをもどためではない。


ウラにうために。





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