第5話 竹取桃太郎④

なが沈黙ちんもくやぶったのは

イヌカイタケルだった。


ぐぐぅうううううー


イ「あ……///

えっと……おなかいたよなあ……」


モ「そうよ、わすれてた!

おむすびをべなくちゃ、

今日きょうは、そのためにたのよ!」


やまのようにおおきなかまのごはん

モモソヒメはどんどんおむすびをつくった。


昔話むかしばなしうと

せっせとおむすびをつくるかぐやひめかこんで

桃太郎ももたろうさるいぬきじおに小鬼こおにらが、

一斉いっせいにそのおむすびをべているのだが、

当事者とうじしゃたちは、

いまこうしてよくわからない人達ひとたち

よくわからない大量たいりょうのおむすびが

どんどんまえ出来上できあがってくるのを

とにかくべることになっている

という状況じょうきょうがよくわからないまま、

無言むごんでおむすびをべていた。


けれども、

とてもとても美味おいしいおむすびに

いつしかかおほころび、

美味おいしいなあ」

美味おいしいねえ」

「いくつべた?」

「まだまだべられるよね」

と、だれともないつぶやきに

だれともなしにこたえながら

なか一杯いっぱいになるころには、

みんな、すっかりけていた。


そして


ウラは、ようやく

自分じぶん何者なにものかを

みんなはなすことができたのだった。


サ「そんな心細こころぼそおもいをしていたのか……

子供たちも寂しかったろう…」


ササモリヒコは、おにうわさおそれ、

村人むらびとやまからとおざけていた。しかし、

やまからもどったむすめはなし

まったみみさなかったことをおもし、

後悔こうかいした。



ウラのから、

こらえていたなみだあふれた。


いつしかれて、

そらにはおおきくあかるい満月まんげつていた。


ときつのをわすれてあそ

ワカタケヒコたちと子供こどもたちをながら、

ウラはまた、うれなみだこぼした。


モ「ウラってむしだったのねえ、

らなかった」


サ「をして

また、おに間違まちがわれるぞ」


そうってわらうササモリヒコと

トメタマヒメ、モモソヒメに、


ウ「いやだなぁ、

今日きょうだけはゆるしてください……」


ウラは両手りょうてかおおおった。


そのとき


『モモソヒメ ワカタケヒコ ……』


不思議ふしぎこえこえてきた。


こえほう見上みあげると、

それは、大和やまとから

二人ふたりむかえに飛行船ひこうせんだった。


しかし、

ワカタケヒコは吉備きびのこるというので、

モモソヒメが一人ひとり

飛行船ひこうせんんだ。


モ「ウラ、ありがとうー!

また、きっとここへるから!

っててねー!」


ゆっくりとそらのぼってゆく飛行船ひこうせん

見送みおくりながら

ウラは、またにしている。


子「あ!ウラにいちゃんがいてるぞ!!」


子供こどもたちはまたウラにむらがって、

きついたりよじのぼったりして


いたいた、赤鬼あかおにいた~』


と、はやてた。

ウラはむらがる子供こどもたちを体中からだじゅうにぶらげたまま


ウ「モモー!!おむすびうまかったぞー‼️

また、つくってくれよー‼️」


と、ちいさくなって飛行船ひこうせん

見送みおくった。

そして、飛行船ひこうせんえなくなっても

今日きょうためあつらえた大釜おおがまかかえて

満月まんげつかる夜空よぞら

いつまでも見上みあげげていた。



飛行船ひこうせん讃岐さぬき上空じょうくうかると、

モモソヒメは、

世話せわになったおじいさん、おばあさん、

そしてむら人々ひとびとに届《とど

》けとばかり、

精一杯せいいっぱいさけんだ。


モ「おじいさーん!おばあさーん!

おんわすれません、さようならー!」


じいさんとおばあさんは、

ふと、夜空よぞら見上みあげた。


婆「モモソヒメにはじめて出会であったのも

こんなきれいなつきばんでしたねえ……」


清々さやさや気持きもちよく、

秋風あきかぜ竹林ちくりんけた。




その、ウラがおにだという誤解ごかいけ、

ワカタケヒコやモモソヒメが

大和やまとから皇子おうじひめだったことも、

モモソヒメが無事ぶじくにかえったことも、もなく

瀬戸内せとうち人々ひとびとわたった。


讃岐さぬき竹林ちくりんふもとには水主神社みずしじんじゃ建立こんりゅうされ、

むらみずあたえ、米作こめづくりりをたすけた

モモソヒメがまつられた。



ウラは

吉備きびむら人々ひとびと

鉄器作てっきづくりをおしえ、

そして

ワカタケヒコたちとも

吉備きびくにまもった。


人々ひとびとはウラを、吉備冠者きびかじゃんでしたった。



………………



ウ「おれは、モモにもタケぼうにも、

世話せわになりっぱなしだったよなあ……

感謝かんしゃしかないよ。

さあ、たのしくもうよ!な、モモ。

あらためて、乾杯かんぱいしようか」


ちゃえたウラは、

あたらしい一升瓶いっしょうびん座卓ざたくにドンとえた。


しかし、

一升瓶越いっしょうびんごしにえるモモソヒメの表情ひょうじょう

なおけわしかった。


モ「……なんでよ?なんでウラは

悪者わるものにされて、しかも、

タケちゃんに退治たいじされたことになってて

平気へいきなの?

おかしいじゃん。

ウラはみんな仲良なかよくしてたんだよね?

ずーーーっと。そうだよね?

ね、そうでしょ?

いま、そういうはなしだったよね?

ウラはだれさらったりしてません、

わるくありませんでした、って。

なのに、なんで?

あ、もしかして、

あれからわるいことしたの?

じつなにか、わるさしちゃったの?」


ウ「してない、してない。

するわけないだろ!

……さぁさ、ほら、タケぼう!」


ワ「あー、おっとっとっと……」


ウ・ワ「かんぱ~い」


モモソヒメは、

不細工ぶさいくかおでそっぽをいた。


ワカタケヒコは、ウラのいださかずき

一息ひといきし、


ワ「あー!うまい!

ひさしぶりだよね、ウラにいさんとむの。

吉備きびではよくんだけどなあ」


ウ「ああ、なつかしいなあ。

そういえば、

モモとタケぼう親父おやじさんも、

よくひとだったよな」


すると

まええるカウンターで

こちらにけてひとすわっていた、

仕立したてのいスーツを

初老しょろう男性だんせいが、おもむろいた。


孝「いま、もしかして、わたしのことんだ?」


ウ・ワ「……っ??!」


孝霊天皇こうれいてんのうだった。

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