第4話 竹取桃太郎③

鬼ヶ島おにがしま、とうわさされたそこは、

ウラがやっとつけた

無人島むじんとうだった。


ウラと子供達こどもたちだけでらすのに

ちょうどい、ちいさなしま


ウラは

このしまらしをっていた。


ここでなら、

人目ひとめにもつかずに、

のんびりさかなったり、

あかるい水辺みずべ子供こどもたちも

のびのびとあそべる。

鉄器てっきつくることもできた。


また、相変あいかわらず、

ウラは時々ときどき一人ひとりうみた。

そしてモモソヒメと

浜辺はまべかたうのが、

ウラのこころどころだった。


子供こどもたちのまえでは、

つよたよれるあにでいなければ

ならなかったが、

モモソヒメとなら、

たがいのさびしいおもいをかくさずに

かちあうことができる。


ウラは十八じゅうはちとしで、

モモソヒメよりもとおうえだった。


ウラがれている子供こどもたちと

そうわらない年頃としごろのモモソヒメに

はじめて出会であったとき、

ウラは、

いているモモソヒメを

なぐさめ、はげまそうとした。


しかしいまでは、

モモソヒメにえばいつも、

自分じぶんほう

激励げきれいされているがした。


モモソヒメはすこしも弱音よわねかず、

毎日まいにち一生懸命いっしょうけんめい

どろんこになって仕事しごと

手伝てつだっていた。


んぼでカエルがいてきて

おどろいてひっくりかえり、

どろまみれになってしまったはなしや、

いねいろ次第しだいわっていく様子ようす

たのしそうにはなしてくれた。


ウラは、そんなモモソヒメを尊敬そんけいしていた。


しかし、じつ

モモソヒメがむら人々ひとびと手伝てつだ

頑張がんばっているのには

理由わけがあった。


モモソヒメはみずかみあがめられ、

むら人々ひとびとから大事だいじにされていた。

みんなやさしくされればされるほど

正直しょうじきわなければならないことが

えない。


自分じぶん神様かみさまなんかじゃない、

イタズラがもと遭難そうなんした、

ただの迷子まいごだ、と、

どうしてもせないのだ。


それで、モモソヒメは

せめてすこしでも恩返おんがえしを

しようと、

毎日まいにち村人むらびと手伝てつだっていたのだった。


そのとし大豊作だいほうさくだった。

村人むらびとは、みずかみモモソヒメに、

やまほどたくさんのこめささげた。


モモソヒメは、

まえうずたかまれた米俵こめだわら困惑こんわくした。


けれども、そのおこめ

とても美味おいしかったので、

ウラや子供こどもたちにも

べさせてやりたい、

おもった。


モモソヒメは、

自分じぶん一人ひとり荷車にぐるまいてはこべるぶんだけ、

こめもらうことにした。



モ「……それでね、すこしだけど、

こめってきたn……え?!

ウラ?!わ、……キャーッ!!」


荷車にぐるままれたこめふくろるなり、

ウラは

モモソヒメをかかげてはしし、

そのままうみんだ。


ウ「ヒャッホーーッ!

新米しんまいべられるなんて、最高さいこうだあ!」


モ「もー!!ウラー!!」


ウ「アッハハハハ……」


ウラは、みず蹴上けあげてはしゃぎ、

いつものようにおおきなこえおもわらった。


モモソヒメは、

ウラの

笑顔えがおや、

おおきいけれどやさしいこえ

大好だいすきだった。


浜辺はまべでウラにうとき、

沢山たくさんわらってほしくて

モモソヒメは、

可笑おかしいはなしばかりかせた。

その笑顔えがお

元気げんきもらえたからだ。


けれども、こんなにはしゃぐウラを

たのははじめてだった。


ウ「モモ、ありがとう。

子供達こだもたち絶対ぜったい大喜おおよろこびするよ!!」


ウラは大張おおはりで、

みんなのごはん一度いちどけるような

おおきなかまつくることにした。

そして、

モモソヒメをしま招待しょうたいし、

みんなでおむすびをつくってべる

計画けいかくてた。


二人ふたりとも、故郷こきょうはなれて以来いらい

こんなにたのしい気持きもちになったことは

なかった。


かま完成かんせいすると、早速さっそく

ウラはモモソヒメをふねせ、

子供達こどもたちっている

しまへと《む》向かった。


瀬戸せとうみ

うつくしいひめせたふね

ちいさな無人島むじんとうへまっしぐらに

かってく。

ふねあやつっているのは、

くまのような大男おおおとこだ。


おきていた漁師達りょうしたちあいだで、

すぐにうわさになった。


あのふねっていたのは、

かぐやひめではないか。

あの大男おおおとこは、おにちがいない。

あのしまに、おに巣窟そうくつがあるはずだ。


讃岐さぬきみなとから、吉備きびみなとから、

またたうわさひろまった。


それで、ワカタケヒコも、

真実しんじつよしもなく、

モモソヒメがさらわれたとしんじて、

鬼ヶ島おにがしま鬼退治おにたいじにやってたのだ。



鬼ヶ島おにがしま目前もくぜんせま

はま見張みはりのおにらしきかげえると、

トメタマヒメがすかさず

ってはらい、

ワカタケヒコたち四人よにんは、

しま上陸じょうりくした。


鬱蒼うっそうしげもりしまおくへとすすむと、

おに住処すみからしいとりでつけた。

イヌカイタケルとササモリヒコが

ちからをあわせて

おおきなてつもん左右さゆうひらく。


ギギ……


おもたくきしにぶおと足元あしもとからひびいて、

ワカタケヒコたち身震みぶるいした。

けっして、さらにもんす。

すると

ほそひらいたもん隙間すきまから、

しろけむりした。

もんこうは一面いちめん

そのしろもやめている。

視界しかいさえぎられた。


ワ「……これは……?」


もやともに、なにかおりもただよってきた。


イ「めしだぞ、めしけるにおいだ!

ああ、うまそうだ、はらったなあ」


イヌカイタケルがはなをクンクンさせる。


ト「こら、油断ゆだんするんじゃないよ!

わなかもしれないじゃないか」


トメタマヒメがひくくして

あたりをうかがい、みみをそばだてる。

もんなかからは、

子供こどもたちのはしゃぐこえ

こえてくるようだ。


四人よにんわけからず、

むこともできないまま、

かたくしていきひそめた。


そのとき

ワカタケヒコのみみ

おぼえのあるこえ


?「さあ、おむすびができましたよー」


ワ「!?」


ワカタケヒコが、もんさらひらき、

やがて視界しかいひらけた。

まえ景色けしきに、

ワカタケヒコたちは、

その呆然ぼんぜんくした。


大勢おおぜい可愛かわいらしい子供こどもたちが、

やまのようにおおきなかままわりに

いそいそと、行儀ぎょうぎならんでいる。

みなうれしそうに、満面まんめんみである。

かまからごはん湯気ゆげがモクモクとがり

においがめている。


おに姿すがたなど何処どごにもない。


そして

子供こどもれつさきにいたのは、

モモソヒメであった。


ワ「モモねえちゃん!!

なにしてるんだ?!」


いたモモソヒメは、

沢山たくさんのおむすびがったぼん

あやうくとしそうになった。

あわててなおし、

そばにいたにそれをわたすと、

ワカタケヒコたちにった。


モ「え?!ウソッ!?

わーい、タケちゃ~ん!!

やっとた~~!

おそい!!おそいよ、も~!!」


モモソヒメは、米粒こめつぶだらけの

ワカタケヒコにいた。


ワ「わ、ちょ、ちょっと、モモねえちゃん、

ベタベタやん……」


ワカタケヒコのうのをにもめず、

モモソヒメは、

よろこびがあふしたように

怒涛どとういきおいではなはじめた。


モ「タケちゃん!

しばらないうちに、びたんじゃない?

なんだかたくましくなって。見違みちがえちゃったわよ~。

でも、どうしてここが分かったの?

……偶然ぐうぜん?…………

……ま、いっか。そんなことより、

とにかく、てくれたわ!

ちょうど今、

おむすびができたところでね、

美味おいしいのよ~。

いーっぱいあるから、べてみて……」


とひといきしゃべり、

そこで、ふと、モモソヒメは、

ササモリヒコたち気付きづいた。

はっ、とモモソヒメは

三人さんにんなおり、

あわててお辞儀じぎをした。


モ「……はじめまして!

わたくし、ワカタケヒコのあねのモモソヒメと

もうします。」


三人さんにんのおともはあんぐりくちいたまま

かたまっている。


ワ「……ぉ、おい、モモねえちゃん、

はなしあとだ。おれたちがたからもう大丈夫だいじょうぶだぞ。

とにかくはやくここからげよう!

おにがいないすきに、さあ!」


モ「……?タケちゃん、いまなんて?

…………おに?……ってった?」


『おに????』

子供こどもたちが、こおりついた。


モ「ぉ、おにがいるの?このしまに?……」



そのときとりでおくからウラがあらわれた。


ウ「それは、きっとぼくのことだよ……」


『ウラ‼️』

子供こどもたちが、われさきにとウラに

いた。


モ「…………ウラ?」


ワ「……?……」



子供こどもたちにもみくちゃにされながら、

ウラはすこさびしげに微笑ほほえんだ。


やまのようなかまからは、まだ

ホカホカごはん湯気ゆげと、

美味おいしそうなにおいが

のぼっている。


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