レポートの書けない大学生と環境に捧ぐ祈り

春の水

祈り

 私は大学1年生。

 都内のとある大学の文学部所属で、周りも自分自身も活字中毒、ほとんどの本は読んでいたし、おススメの本を紹介するビブリオバトルをすれば一週間あったって足らないくらいのド文系だと思う。だから、書くことにも自信があった。

 まじめに学校に通っていたし、サークルも楽しく、出席日数も良好、誰がどう見ても善良な学生で全てが順風満帆だった。


 そして夏、初めての期末課題としてたくさんのレポートを与えられた。

アナログな先生の指定は、パソコンではなく手書きの原稿用紙3枚だった。

 私はたくさんの本を読んでるから、こんなの3分あれば余裕だよ♪と早速ボールペンを手に取り、書こうとした。


 「・・・」

 あ、あれ?なんだか上手く書けない。文字がまとまらない、何が書きたいのか伝わらない。


 「こんなんじゃ、だめ」

 くしゃりと一枚の原稿用紙を丸めて捨てる。


 「うーん、この書きまわしもなんか私のセンスの良さが出てない」

 もう一枚丸める。


 「えー…無理ぃ…書けないよ~スランプだ」

 3行しか書いてない原稿用紙をまた力任せに握り潰して、ちょっとふて寝してみる。


 「頭がすっきりしたから書けるかな!…うーん??」

 ぜんっぜん書けなかった。今までいっぱい本読んできたのに!書けない書けない!頭の中には書きたいこと、たっくさんあるのに!言語化されない!

 既に書き損じは100枚くらいある…。一体どうしたら…。


 「あっそうだ」

 私はとってもいいことを思いついた。

床にいっぱいになった書き損じの原稿用紙。全て拾い集めて広げる。まずは正方形になるように折って、一つ一つ丁寧に折っていく。

針と糸で全てを繋いで吊り下げる。


 「届け、私の思いっ!」

そうして私は百羽の鶴を折って、窓辺に吊り下げ、世界平和を祈りながら再度ふて寝を再開したのでした。


 ちなみにレポートの課題は「限りある資源を大事にするには?世界平和のために私たちができることは?」というテーマだったのでばっちりだったと思う。

本当は千羽折りたかったけどね。

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