第181話 デパート内での買い物デート(前編)
昨日の素敵なクリスマス・イヴから一夜明けた次の日。
俺は愛紗達を誘ってデパートへ買い物に行くことにした。
彼女達からプレゼントをもらったからな。
このままというわけにもいかない。
美架那さんの分も含めて何かプレゼントできればと思った。
流石に、その後の「キス」のお礼は控えた方がいいよな……。
ちなみに、愛紗からは『手編みのマフラー』であり、麗花からは呼吸メゾットを取り入れた『最新版の集中力&身体強化マニュアル書』、詩音からは『メンズ用のネックレス』をプレゼントとしてもらっている。
特に麗花がくれた『マニュアル書』は冊子であり、この世で一冊しかないらしい。
地味にお金がかかっていると思う。
とはいえ、みんなの心が込められたプレゼントなだけに凄く嬉しい。
美架那さんからもらった『財布』も含め、今日から使用しているわけだ。
そして午前デパートにて。
俺と愛紗と麗花と詩音は入口前で、リョウと千夏さんが来るのを待っている。
あれからLINEで誘ったところ、OKとの返答があった。
親友カップル達も、あの倦怠期から上手く言っている様子で何よりだ。
リョウがボクシングのプロテストを延長したのも頷ける。
プロになったら、二人で時間を作るのも難しいかもしれない。
ましてや来年は受験シーズンだからな。
それこそ大学に行ってからの方が時間は作れるだろう。
あくまで人それぞれの事情だけどね。
「――悪りぃ、サキ。それに愛紗ちゃん達も待たせて悪かったな」
「ごめんなさい、準備が遅れて……」
リョウと千夏さんがやってくる。
珍しくあたふたしているようだ。
「そんなに待ってないよ。随分、慌てたようだけど何かあったのか?」
「いや千夏は悪くねーよ。悪いのは姉貴だからな」
鞠莉さんが?
「どーして?」
「今日、お前とデパートで買い物に行くって言ったら、『サッちゃんと一緒なら、ウチも行く』って言い出して、俺が拒んだらその場でバトルになったんだ」
「私と勇磨先輩で制止して、ようやく収まったんだけど……それで遅れちゃって」
……想像できるだけに何も言えない。
てか、天馬先輩、まだリョウの家に厄介になっているんだ。
まぁ、美架那さんも俺の家にいるし、俺の防衛も兼ねていてくれているんだろう。
「それで鞠莉さんはどうしたの?」
「一升瓶持ってお前の家に行ったぜ。なんでもマブダチの『カスミ』と昼間っから飲むんだとよ。勇磨先輩も姉貴の舎弟になっちまったから、付き合わされるらしい」
「……そっか」
なんか今日は家に帰りたくないな。
そういや黒原は帰ったかな?
朝、今日の買い物の話したら――
「三美神とデパートでトリプルデート!? 相変わらずチートですね! まさに異能ッ! なんて羨ましい、ヒェェェェェェェェェェェイ!!!」
って、絶叫していたからな。
大智くんは思いっ切り引いてたし、アレ近所迷惑になってなきゃいいけどな……。
などと考えながら、俺達はデパートへと入る。
みんなそれぞれ好きな場所を順番に回ることにした。
まず愛紗は寝るときに抱きしめたい『ぬいぐるみ』が欲しいとのことで、クマのぬいぐるみを購入し、麗花は実用性を求めペンケースを購入する。
詩音は右手にはめるアクセサリーの指輪を購入した。
その際に――。
「やっぱ、大切な人からもらうプレゼントって、常に傍に置ける物や身に着けれる系が一番嬉しいよね~」
と、いつものギャル口調だが、とても奥の深い話をしていた。
言われてみればそうかもしれないな……。
愛紗からの「手編みのマフラー」や詩音の「ネックレス」なんてもろそっち系統だし、麗花の「集中力&身体強化マニュアル」も一見違うようだけど、知識と成果として体に沁み込むものだよな。
そう考えれば、美架那さんの「財布」だって同様……。
――やばい。また、やばいぞ。
みんなの想いが伝わって勝手に顔が熱くなってくる。
こんな調子じゃ来年、どうなってしまうんだろう?
「サキ、まだ時間あるから、俺と千夏だけでその辺見てきていいか?」
ふと、リョウが言ってきた。
「別にいいよ」
「悪りぃ、なんか大丈夫そうだからな。考えてみりゃ、殺し屋じゃあるまいし、こんな人混みでトラブルに巻き込まれることはねーだろ。不審者がいたら警備員を呼べばいいだけだしよぉ」
ああ、おそらく『勇岬 茶近』のことを言っているんだな。
――リョウの言う通りだ。
話を聞く限りこれまで目立たってなかった分、上級生の中で一番何を仕掛けてくるかわからない。
だから、あえてデパートを選んだんだ。
「そうだな……何かあったら連絡するよ」
「ああ、だが帰りは一緒に帰ろーぜ。路上が一番、隙が生まれる」
確かにな……俺が不意に狙われるのは大抵帰宅路が多い。
楽しすぎて感覚が麻痺していたけど、現実にも目を向けなきゃいけない。
まだ憶測範囲だけに、緊張感を忘れてはいけないよな。
それにしても、情報を集めに行った耀平。
あれからまったく、あいつと連絡が取れないんだ。
何かあったのか?
リョウ達カップルと別れ、フードコートで昼食を口にしながら考える。
すると。
「――サキじゃないか?」
聞き慣れた男の声が聞こえる。
親友の一人、シンだ。
相変わらずのクール系イケメンだな、この男。
「おう、シン。お前も来てたのか? 一人か?」
「……いや、連れがいる」
どこか口籠りながら答える。
連れだと? 自称ぼっちだから男友達は俺とリョウくらいなものだ。
そういやこいつ、黒原ラブリーだったな。
あの後、互いにやり取りして遊んでいるとか?
「――シンくん、席取れたの?」
少しぽちゃとした眼鏡をかけた私服姿の女子が近づいてくる。
あの子はクラス委員長の『
「あれ? 詩音ちゃんに神西くん達も来てたの?」
「こ、こんにちわ、天宮さん」
「ユリッチ、チィース! え? まさか二人、デート?」
「秘密だよ……ね、シンくん」
「ああ、ユウリ。そこの空席でどうかなって思って……」
シンは気恥ずかしそうに、俺達から近くにある空席に指を差した。
天宮さんはニコッと笑い、「わかった。それじゃ注文取ってくるからね」と言って去って行く。
え? え? ええ!?
俺達が呆然とする前で、シンがしれっと空席に座る。
「お、おい……シン、聞いていいか?」
「なんだ?」
「お前……天宮さんと付き合うことにしたのか?」
「え? いや……そういうわけじゃないんだが、昨日一緒に過ごしている間、話の流れでついな」
ついね……。
別にいいんじゃね? 天宮さん可愛いし清純だし、お似合いだと思うぞ。
にしても随分と余所余所しいな、シンの奴。
別に天宮さんと一緒にいる所を見られたのが恥ずかしいとかじゃなさそうだ。
だったら知らんぷりをすりゃいいだけだろうし、わざわざ隣の席をキープしたりしないだろう。
「ごめ~ん、シン。トイレ混んでいて……」
別の女子の声が聞こえた。
視線を向けると、気だるそうな雰囲気を持つダウナー系の女子が歩いて来る。
この子は同じクラスの『
って、待てよ……あれ? 可笑しくね?
「あれ、詩音に神西じゃん。ガム食う?」
「こんにちは、来栖さん……ガムはいらないよ」
「アズッチチィース! あたしはもらうわ~……」
詩音は社交辞令で、来栖さんからガムを受け取る。
「アズサ、今ユウリがカウンターで注文しているから、ここで待っていよう」
「いいよー」
来栖さんは抑揚のない声で返答し、シンと向き合って席に座った。
え? え? え? ええええ――っ!!!?
何これぇ!? 一体どういう状況!?
クラスメイトである俺と詩音は無論、そうでない愛紗と麗花でさえ言葉を失うほど驚愕するのであった。
まぁ、他人のこと、どうこう言えた立場じゃないけどね……。
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時季外れネタで申し訳ございません。
もう少しだけ続きます(^^)
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