第70話 修学旅行~三美神との約束事
いよいよ修学旅行が始まった。
行先は、北海道。4泊5日の旅だ。
高校生活のメインイベントと言っても過言じゃないだろう。
特に、今の俺は凄く楽しみにしていた。
親友のリョウを始め、新しく友達になったシンもいる。
そしてなんと言っても、愛紗、麗花、詩音……彼女達と一緒にいられるんだ。
最近じゃ周りから認知された間柄だし、俺もすっかり気にならなくなった。
これも仲間達が俺を鍛え上げ成長させてくれたからだろう。
俺もみんなを信頼し、ここまで頑張ってきたんだ。
だから、この修学旅行は成功させたい。
みんなで楽しい思い出を作りたい。
その為に、班リーダーも引き受けたようなものだ。
「……フフフ、楽しみだね。副会長」
飛行機にて。
俺の隣に座る、黒原がニヤついている。
いや、本人的には微笑んでいるつもりだろうか。
「そ、そうだな……」
嫌いや苦手ではないが、何か不気味さを感じてしまう……。
特に時折、蛇のようにじっと俺を見ているんだ。
別に睨んでいるとかではない……今のような嬉しそうにニヤつきながら。
まさか、こいつ『そっち系』なのだろうか?
なら俺より、リョウやシンの方が余程男前だと思うけどな……。
~黒原 懐斗side
ついに始まった修学旅行。
いや、僕にとってそんな行事はどうでもいい。
爽やかインチキ行事なんて糞食らえだ。
そんなのは、その辺のリア充共だけがはしゃぐもの。
真の超越者を目撃している僕にとっては、その辺のカースト上位気取りのカップルなんて安易に妥協した負け犬の戯れとしか見えない。
「カッくん、楽しみだね♡」
「そうだなぁ、ノン♡」
ケェッ! ペッ!
僕の後ろで、カースト上位グループのバカップルこと、『
彦坂なんて北条さんにワンチャン狙って何度もモーション掛けていたヤリ〇ンのクズ野郎だし、織野も遊井に弄ばれ王田のセフレと化していたビッチだぞ!
何、清らかな純愛ごっこしてんだ、こいつらぁ!?
僕からすれば、どっぷり泥塗れの汚れカップルじゃあないか!?
だから羨ましくないぞ、僕はァァァッ!
断じて羨ましくなんかないからなァァァァァァッ!
ヒェェェェェェェェェェェェェェイ!!!
……おっと、いけない。ブレーキ、ブレーキ。
あんな連中より、『異端の勇者』こと、神西くんの生態調査を始めなければ……。
その為に、わざわざ彼と同じ班に入れてもらったのだから。
さらに彼の隣をGETしたんだ。
流石に飛行機内では『S.Kファイル』での記録はできないけど、この頭に刻み込むしか術はあるまい。
後はスマホでメモ書きする程度か……。
おや? さっそく異能ぶりを見せるようだ。
「サキ~ッ、自由時間で一度くらいデートしない~?」
神西くんを挟んだ先隣に座る北条さんが話し掛けている。
ひそひそ声だが、僕にはだだ漏れである。
彼女は自分から志願して、神西くんの隣に座っているのだ。
いいなぁ、神西くんよぉ! おい、この野郎ッ!
おっと、いけない。調査、調査……。
「えっ? デート? 修学旅行終わったら、みんなと順番にデートする約束してんじゃん」
なんだって? 順番にデートだって!? 三美神達とぉ!?
やべぇ、神西くん! キミ、やべぇよ!
一体、彼女達と、どこまで進展してんだぁ!?
まさか『R指定』ついちゃう範囲なの、これ!?
「う~ん。けどぉ、また違うじゃん。そこでなきゃ出来ないことや言えないことだってあるじゃん?」
「言えないこと?」
「うん……ちょっと話もあるしね……」
「話か……それならいいけど。でも俺、班リーダーだし時間作れるかなぁ」
神西くん、僕がキミなら他の連中なんかほっぽいて『三美神』達とのデートを優先するね。
万全なフル装備をした上でな。
「あっ、そこは大丈夫。ちゃんとレイちゃんとアイちゃんに協力もらうことになっているから」
「え? どゆこと?」
「つまり、サキはあたしら三人と、それぞれ順番にデートするんだよ。自由時間を使ってね~♡」
なんだってェェェェェッ!!!?
あれ、なんで僕が驚くんだ?
だが、神西くんも同じリアクションを取っている。
「し、詩音、いつの間に決めたの、それ?」
「サキが生徒会の副会長に着任した時ぃ~。その帰りに三人で決めたんだぁ」
「……なるほど。麗花が先生達に進言して認めさせた意味がわかったよ」
「へへ~ん、レイちゃんって凄いしょ~?」
生徒会長……あんた一体何してんっすか?
けどそれくらい、あの高嶺の花である東雲会長に、神西くんが想われているなんて……いいなぁ。
「……いやぁ、でも他の班メンバーだっているわけだし」
「ああ、大丈夫ぅ~。ヒノッチは
北条さん、完璧に僕の存在を忘れているようだね……まぁ、いいや。
「……わかったよ。タイミングはみんなに任せていい?」
「もち、任せて~! 必ずウチらから声かけるからね~、きゃは☆ 超楽しみ~、にしし♪」
さりげなく女の子に主導権を握らせて、自分は手を下さないという方程式を完成させる。
まさに典型的なハーレム主人公のポジをあっさり掴み取るとは……なんて恐ろしい。
これこそが異能の力なのか……素晴らしい、素晴らしいぞぉ、神西くん!
もっとだ! もっと、僕にキミの『モテ道』を見せてくれ!
そして、僕もその研究成果を下に、キミのようなハーレムの極地へと召されるであろう!
フッハハハハハハハッ! ヒェェェェェェェイ!!!
おっと、ブレーキ、ブレーキ。
にしても、北条さんの真っ白な前歯を見せる弾けんばかりの笑顔……最高にかわゆい♡
**********
なんか凄い約束をしてしまった。
修学旅行中の三人との個別デート。
しかも相当練り込まれている企画らしく余念がない。
麗花……いや、幼馴染の連携プレイと言うべきか。
とにかく、『三美神』恐るべし。
隣の詩音も俺の返答に気を良くして、向日葵のような笑顔を向けてくれる。
いつも俺が元気がもらえる大好きな笑顔だ……。
だから大抵のことは許せてしまう。
おまけに肩と肩が密着しすぎて、自然と意識してしまう。
柔らかくて温かくて、おまけにいい香りだ……。
いかん……今から浮かれすぎだぞ。
だけど詩音、俺に話したいことがあるって言ってたな?
少し、そこが気になる。
まぁ、いずれわかるだろう。
知らない地方でのデートか……。
それはそれでいいかもなぁ。
にしても……。
俺達の会話、隣の黒原に聞かれたかな?
さっきから、やたらと息が荒い。
蒼白な顔色が真っ赤になって、目も血走っているじゃね?
まさか飛行機酔いか?
「黒原、大丈夫か? 先生呼ぼうか?」
「何がぁ!? 副会長、何がぁ!?」
「いや……なんか様子が可笑しいから」
「ハハーッ! 僕が可笑しい!? なんでぇ!? どうしてさぁ!?」
もう言動からして可笑しいじゃん。
あからさまに興奮してんじゃん。
俺が不審な目で見ていると、黒原は「ハッ!」と我に返った。
何か「ブレーキ、ブレーキ……」っと、自己暗示して呟いている。
「……いえ、副会長。すみません、修学旅行が楽しみすぎて興奮してました」
「そぉ、ならいいけど……ほどほどにな」
やっぱり、こいつは不気味な男だ。
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