第35話 騎士とのサッカー試合
※サッカー対決のお話ですが作者は「キャプ〇ンツ〇サ」か「イナ○マイレブン」程度の知識しかございませんw
~内島 健斗side
俺は勇星の指示で、神西とサッカー対決することにした。
本当なら北条ちゃんや東雲の前で、神西を徹底的にボコボコにして自分の無能さを思い知らせるのが目的だ。
それから徐々に神西の自信やプライドを砕き搾取し、三美神から手を引かせ、この学校から追放する。
勇星が気に入らない相手にしてやる手段だ。
俺は実行犯として、その片棒を担がされていた。
そう、ガキの頃から……。
勇星は絶対に自分の手を汚さない。
自分の鬱憤やストレスを俺にやらせることで晴らしている超ドS野郎だ。
俺は勇星には逆らえない。奴の怖さを誰よりも知っているからな。
現に奴の指示で俺が暴れようと奪おうと壊そうと全部うやむやにしちまう。
だから本当に一線超えても勇星の祖父なら無罪にしちまうんじゃないのか?
そう思うと怖くて言うことを聞くしかなかった。
幼馴染であり、親友のフリをしてもだ。
きっと勇星は俺や翔を自分のストレス解消の手駒程度にしか思ってない。
そもそも親友に犯罪を強要する奴なんている筈がない。
このまま言う事を聞き続ければ例え罪は抹消されても、俺自身が可笑しくなっちまう。
正直、勇星から逃げたかった。
逃げられないのなら、せめて奴との距離を遠ざけたかった。
そんな中学三年の頃、俺に転機が訪れる。
火野 良毅。
こいつとのタイマンだ。
伝説と謳われている、こいつに敗北すれば、恐怖を植え付けられたとか言ってヤンキーから足を洗える。
だが実際に、火野はガチで強く怖かった。
つーか本当に同い年の人間かって思うくらいの化け物だ。
おかげで俺はボコってもらい入院。無事にヤンキーを辞めることができたんだ。
勇星も火野と事を構えるのは都合が悪いと判断したみたいで、その後の言及はしてこなかった。
本当に感謝だぜ、火野にはよぉ。
……けど、おっかなすぎて友達にはなりたくねぇけどな。
それ以降もつかず離れず、勇星の機嫌を伺いながら、俺は無事に高校へ入ることができた。
しかし俺の人生が一変する。
サッカーとの出会いだ。
何気に入った部活だが、体格やセンスを見込まれ一気にエースへと駆け上がった。
今年の夏の全国大会で準優勝し、俺はマスコミから注目を浴び、プロからも声が掛かっている。
初めて自分の力で勝ち取った成果だ。
まぁ、遊井に足首を折られたライバルの坂本は可愛そうなことになっちまったがな。
だから俺は神聖なサッカーで、神西をボコるような真似はしない。
いくら勇星の命令でも、サッカーだけは汚させない。
神西とはあくまでフェアプレイだ。
それで決着を付ければ、勇星も満足だろう。
神西だって無事なうちに『三美神』から手を引きゃ、二度と狙われることもねーだろうし。
三美神の一人……北条 詩音。
俺は中学から彼女が好きだった。
小動物みたいにか弱そうで、そこがまたなんとも守ってあげたかった。
勿論、今のギャル姿も最高に可愛くてイケている。
遊井 勇哉が調子に乗って、あの子をコキ使ったり泣かしたり、セフレの噂を立てた時はマジで腹が立った。
ヤンキー関係なしに、奴を再起不能にしてやろうと思ったくらいだ。
しかし、勇星が遊井のことを妙に気に入っていたばかりに手が出せない。
奴を
そうした優越感に浸り、陰の支配者気取りを楽しむ。
俺には勇星がそう見えていた。
だから神西が羨ましい。
あんなに笑顔で北条ちゃんに好かれてよぉ……。
したがって勝負は本気でやってやる。
ガチで北条ちゃんを奪うつもりでな。
その為にハンデまで与えたんだぜ。
もうじき試合が始まろうとしている。
俺のポジションは
ん? 神西もFWだと?
ほう……俺との勝負を受けて立ってくれるようだ。
火野は……
てっきり、神西と二人で仕掛けてくるとばかり思ったけどな。
こいつら何を考えてやがる……ハンデやっているから舐めているのか?
まぁ、いい。
喧嘩と違って、サッカーじゃ俺は火野には負けねぇ!
「よし! 始めるぞぉ!」
体育教師の高木がホイッスルを鳴らす。
――試合開始だ。
俺はもう一人のサッカー部員と巧みなパス回しで移動し、一気にゴールへと向かう。
神西なんてあっさり抜いてやった。
北条ちゃんが見ている。
俺のことじゃなく、ひたすら神西を応援しているが、それはそれで俺にエンジンが掛かる。
このまま一気にシュートを決めて1点取ってやるぜ。
北条ちゃんに捧げるためになぁ!
素人共を難なく躱し、俺はペナルティエリアに入る。
仲間から絶妙のセンターリングが上がった。
よし、シュー……。
「内島ゥ、コラァァァッ!」
火野が凄い形相で走ってきた。
ふと中学の時、ボコられたトラウマが蘇る。
負けるのを望んでいたとはいえ、ガチで怖かった。
そう――
あの時、小便をちびっちまうほど本気で殺されると思ったんだ。
「ひぃぃぃっ!」
俺はびびってしまい、ボールを見過ごしてしまう。
「ラッキー!」
火野はボールをキャッチし、神西に向けて蹴り上げる。
「しまった、クソッ!」
俺が振り向くと、神西はゴール近くまで単独で走っていた。
なんだ、あいつ!? やたら足速くね!?
こっちも数が少ない上に、
神西のドリブル技術は素人だが、ボールを前に打ち出し俊足で追いつくことを繰り返して移動スピードを落とさず補っている。
DFを抜き、神西はGKと対峙する。
「行くぜぇ、必殺ゥ、ファイア◯ルネード!」
何故か厨二病っぽく技名を叫びながら右足を思いっきり掲げる。昔の少年漫画みたいなシュートフォームだ。
おまけに足のつま先で蹴る『トーキック』でボールを蹴った。
ピーッ!
「ゴール!」
「な、なんだとぉぉぉぉっ!?」
俺が駆け付けると同時に1点を入れられてしまった。
しかも神西如きに……。
「やったぁ! リョウ、俺、初めてゴールを決めたぞーっ!」
「おう、サキ! まさかオメェが必殺技持ってたなんて知らなかったぜぇ!」
んなわけあるか! あんなド素人シュート!
しかし、トーキックもあながちバカにできねぇ。
どこに飛ぶか、わからねぇからな……。
ウチのGKもサッカー部員だが、あんな素人フォームだと逆にシュートコースも読めねぇか。
「サキ~ッ! カッコイイ♪」
「やったわね、サキ君!」
クソッ……北条ちゃんと東雲が手を叩いて喜んでやがる。
完全にヒーローじゃねぇか……。
――だがよぉ。
奇跡ターンはここまでだぜ!
これからは俺のターンだからな!
しかし――。
「オラァ! 内島ッ! ぶっ殺すぞぉぉぉぉっ!」
「うわぁぁぁぁっ!」
俺がシュートを打とうとすると、火野が凄げぇ表情で突進してくる。
もう怖すぎて、とてもプレーに集中できない。
「健斗、どうした!? なんでシュートを打たないんだ!? いくら素人相手たって、油断しすぎたら負けちまうぞ!」
クラスメイトの仲間達から不満の声が上がる。
んなのわかってんだよぉ! だったらテメェがシュートを決めろよ!
あっ、そうか……全て俺にボールを回すよう前もって指示してたんだっけ。
だ、駄目だ。
火野が怖すぎる……潜在的に尻込みしちまう。
つーか、火野の奴。
まさか俺をびびらせるために、自ら進んでGKをやっているんじゃないだろうなぁ?
あの野郎、変なところで悪知恵が働く奴だからな。
それにしてもだ。
神西も地味に凄げぇ……。
運動量は俺達より断然走り込んでいるのに、ほとんど息が乱れてねぇぞ。
あいつ確か帰宅部だよな?
なんであんなにスタミナがあるんだよ……。
その後も予想外の事態は続く――。
「クソッ! 神西ッ!」
俺は神西にボールと取られてしまった。
あいつはマジで素人だ。技術云々は皆無って言ってもいい。
だがフィジカルが半端なく強い。
俺が躱し切ったと思ったら、すぐに体勢を立て直してついてくる。
当たり負けはしねぇし、瞬発力も凄いんだ。
それに目立った欠点もない。
おそらくサッカー部でも、ここまで身体的バランスの取れた奴はいないだろう。
「行くぜ、必殺ゥ、エター○ルブリザード!」
ゴール前で、神西は右足を掲げ、また厨二病っぽいシュート技を叫ぶ。
「これ以上、打たせるかぁ! ド素人がぁぁぁっ!」
俺はもうダッシュで走り、神西のシュートを阻止しに行く。
が――
ピーッ!
再びゴールを決められちまった。
さらに、
ピーッ、ピーッ、ピーッ!
試合時間終了の笛が鳴る。
「う、嘘だろ……」
俺は愕然とし地面に両膝をつく。
試合結果、0-2。
俺の負けだ。
──────────────────
【次話の更新予定のお知らせ】
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第36話は20日、午前朝に更新予定です。
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