第33話 騎士との五時限目
※内島→ナイト→騎士で文字ってます。
リョウと後輩の風瀬 耀平君のおかげで、王田とその幼馴染達の全貌がわかってきた。
「んで、その間藤とかっていう一年も、俺に何かしそうな素振りがあるのか?」
「いえ、そこまでは……けど、内島が動くってなら、必ずこいつも動きを見せる筈っす。現に夏休み終わり頃に連中がカラオケ店で集まっているところを何人かに目撃されているっすからね」
「……風瀬君もよくそんな情報を仕入れるよね? キミ、何者なの?」
「ああ、こいつはヤンキー同士のネットワークみたいなのを持っててな。足を洗った今も、そいつらとLINEやインスタなんかでやり取りだけはしているんだ」
「そっちの世界じゃ、こう見ても『情報屋の傭兵』って通り名で呼ばれているっす」
へ~え、なんか厨二っぽい通り名だな。
「けど、知りすぎるってことは色んな奴に狙われちまうこともあって……そんな中、火野さんに助けてもらって今に至っているっす」
「内島も耀平を狙い襲ってきた一人だ。そこで俺とタイマンになってボコってやったんだ」
「狙われたきっかけは?」
「……俺が王田の事を調べているのがバレちまったことからっす」
「王田? 奴の何を調べてたんだ?」
「色んな情報っすよ。家族構成とか何が好きとか付き合っている女とか……何せ、内島があれだけ大暴れしていたにも関わらず、全部そいつの
病気だな、この風瀬君って奴は……。
「それで目障りになり内島が襲ってきた……それで何かわかったのか?」
「いえ、これといって……そうそう、王田も相当女遊びは激しいっすけど、ずっと一人の女に今でも片想いしているみたいっす」
「片想い、誰?」
「南野先輩っす」
「愛紗!?」
「ええ、中学の頃から、ずっと好きだったみたいっす。でも告白はしたことはないようっすねぇ。まぁ、当時は遊井と付き合っている噂もあった人っすからねぇ」
そうなのか……。
じゃあ、ひょっとしたら愛紗が酷い目に合っていたのも知っていたんじゃないか?
それだけ力がある奴なら尚更……。
どうして黙認してたんだろう?
「耀平、あと間藤って奴も麗花さんのこと、どうこう言っているんだろ?」
「ええ、なんでも奴の好みでドストライクらしいっす。確かに生徒会長、怖そうだけど美人でスタイル抜群っすからね……」
ってことは、麗花も連中に狙われているのかよ……。
さっきも思ったけど、遊井 勇哉がいなくなった途端、今まで抑えていたものが溢れてきたってのか?
「勇者がいなくなったばかりにか……」
「どうした、サキ?」
リョウに問われ、俺は呟いた口元を抑える。
今、ふと自分でとんでもない事を考えてしまったからだ。
――俺が勇者となり、ストッパーとして三人を守る。
なわけねーだろって笑ってしまう話だけど、そうすることがベストだと思えてしまったんだ。
「な、なんでもない……それより、リョウ。あんなに王田と関わるのが嫌がっていたのに、また随分と色々調べてくれたな?」
「ん? ああ、こっちから手を出すのはタブーだが、向こうから仕掛けてくるなら話は別だぜ」
「喧嘩は、まず相手の情報を多く入手することから始まるっす。だが王田がどこまで絡んでいるのかまでは、まだわからないっす」
「うん、そん時はそん時だ。俺は自分自身と彼女達を守る」
「……やっぱ、サキ。お前は凄げぇな」
「え?」
「いや、俺も力を貸すぜ」
「俺もっす! あと神西さん、俺のことは耀平でいいっす!」
「じゃあ、耀平。俺もサキでいい、これからもよろしくな!」
こうして俺達は一致団結して備えることにした。
今言えることは、内島が詩音目的で俺を何らかの方法で排除しようとしているって情報だけだ。
いつどこで、どんな方法で仕掛けてくるかわからないけどな。
肝心の王田も、どこまで関与しているのかもわからないまま……。
翌日。
『サキくん、おはよ♡ もう朝だよ。昨日はよく眠れた?』
早朝、愛紗がいつもの甘々なモーニングコールをしてくれる。
実はあれから色々考えて、ほとんど眠れなかった。
「うん、まぁね……愛紗は調子どう?」
『いつも通りだよ、どうして?」
「なんでもない。何か変わったことがあったら教えてくれよ」
『うん、わかった。それじゃ、学校でね」
「ああ、また……」
スマホを切る。
本当は同じクラスである、王田のことで色々聞きたいんだけど余計な心配を掛けさせてしまうかもしれないのでやめておく。
朝から話す内容でもないしな……。
これまでだって愛紗には被害がなかったんだ。
もしかしたら王田とその幼馴染達が、俺を狙っているかもしれない。
今はその可能性があるってだけの話なんだ。
教室にて。
「サキ~っ、おはよ♪ ん? 寝不足?」
詩音が顔を覗かせてくる。
「うん、まぁな……詩音のこと考えていて」
「え?」
彼女の反応に、自分がポロッと言ってしまったことに気づいた。
「いや、違う! そういう意味じゃなくて……」
「嫌だ……マジで超嬉しんだけど……」
詩音は頬を染め、戸惑いながら大きな二重の瞳を潤ませている。
「いや、だから……ちが」
「へへ~んだ♪ 今更、言い訳したって取り消し不可能だよ~ん、にしし♪」
機嫌よく隣の席に座りながら、向日葵のような笑顔を見せてくれる。
「……」
あかん……この笑顔を前にして否定できなくなってしまった。
とても詩音が内島に目を付けられていて、そのことをずっと考え事してたなんて言えねぇ。
「サキ、あんま神経質になるなよ」
リョウが後ろから、ぼそっと囁く。
いや、そもそもお前達が教えてくれた情報が発端だからね。
五時限目。
体育の授業にて。
俺達、男子生徒は運動着に着替えてグランドに集まっていた。
何故か他クラスの男子生徒までいる。
「内島……」
リョウが小声でそいつの名を呼んだ。
俺はそいつに視野を向ける。
他クラスの男子生徒の中で一際目立つ背の高い赤毛の男。
チャラそうだが強面の顔立ち、筋肉質の体。
あいつが王田の幼馴染で元ヤンっていう……。
内島 健斗か。
奴は俺の方を見て、ニヤついている。
だがリョウが俺の背後から睨みを利かせると、すぐに目を逸らしている。
どうやら、リョウにはまだ苦手意識や恐怖心が残っているらしい。
体育教師の高木先生が来た。
「お前ら~。急遽だけど他クラスと授業が重なってしまった。5時限目だけ一緒に授業するからよろしくな~」
急遽、授業が重なる? んなことがあるのか?
「先生、意味わかんねーんだけど」
リョウが手を挙げて訊いた。
「他のクラスで授業を担当する先生が急用で早退してな……繰り上げて授業することになり、5時限目だけブッキングする形となったんだ。体育だし別に問題ないだろ? お前らの好きな
サッカーの試合? 内島のクラスと?
「嫌だよ。向こうはサッカー部、結構揃ってんじゃねぇか? こっちも坂本はいるけど負傷中だし、割に合わねぇよ」
リョウの言動に、俺達のクラスの誰もが「そーだ、そーだ」とブーイングする。
ついでに俺も便乗してブーブー言った。
「なんならハンデくれてもいいっすよぉ。そっちは11人、俺達はそうだな……7人で充分だろ」
内島も挑発した口調で提案してくる。
マイナス4人だと?
……随分舐められたもんだな。
「内島がここまで言っているんだ。ワンゲームくらいいいだろ? それともクラス対抗で、おしくらまんじゅうでもやるか?」
なんで、クラス対抗でおしくらまんじゅうするんだよ。
担任の田中といい、ウチの学校の教師達ってどこかズレた奴多くね?
結局、サッカーの試合をすることになった。
俺達はリョウを含めて11人。向こうは約束どおりの7人だ。
いくらサッカー部が多いからって、ハンデくれすぎじゃねぇか?
そう思ったのも束の間、リョウが近づいてくる。
「サキ……こいつはきっと罠だぜ。気をつけろよ」
リョウは耳元で警告した。
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本日は他、午前・午後に一話ずつ更新する予定です(^^)
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