第3話


 タマゴ? どうして、人の体からタマゴが出てくるんだ? アソコにタマゴを入れるようなプレイをしていたのか? それとも、神様は皆タマゴから生まれるのか?


 分からない事だらけだ。


「さて、これから仕上げをしましょう」


「仕上げ?」


 パニック寸前だった。


 生暖かいヌルヌルしたタマゴを手にしたまま、俺は固まっていた。本当だったら、このタマゴを投げ捨てて、この場から逃げ去りたかった。だが、そんな事をしたら、玉依の鉄拳が顔面を貫きそうで、怖い。


「そうです。それ、無精卵ですから、男性の精子を掛けないと」


「…………」


 男は俺一人しかいない。


 しばし、俺と玉依の視線が交錯する。


 今更ながら、凄く嫌な予感がする。玉依が言う言葉が、容易に想像できた。


「さ、精子を掛けてください」


「できねーよ! 何考えてるんだ!」


「『ナニ』を、考えています」


 恥ずかしそうに口元を抑えた玉依の視線は、あろうことかタマゴを通り越し、俺の股間に注がれている。


「無理無理! 出来ない! それだけは出来ない」


「今更ですか? 私の調べによりますと、週に三日四日はやってますよね?」


「ウッ……」


 俺は言葉に詰まる。


 この女、何を言い出すんだ? まさか、俺の好みまで知っているのか?


「えっと、好みはOL、熟女、……痴漢ですか」


 溜息をつきながら、玉依がこちらを見下ろしてくる。


「いやいや、なに軽蔑してるんだよ! そこは、放っておいてくれよ! 初対面の人間に対して、触れちゃダメだろう! というか、男には女に触れられたくない場所があるんだ!」


 恥ずかしさのあまり、俺は俯く。


 心拍数が上がり、顔が熱くなる。


「まあ、妹さんがいるから、女子高生ものを見ているより、余程健全かも知れませんが」


「だからって、こんな所で出来るか!」


 俺は断固拒否の構え。


 こんな所で、どうやってオナニーをしろというのだ。玉依がいなくてもゴメンだ。露出や青姦の趣味は、俺にはない。


「困りましたね」


 落ちたパンティを拾った玉依は、クルクルと指先で回すと、目の前に差し出してきた。


「おかずです」


「無理だわ!」


 確かに、OLものは好きなジャンルではあるが、女性の目の前でオナニーをするとは。ドMな奴ならまだしも、俺はノーマルだ。


「困りましたね」


「だから、無理だって! ホラ、タマゴ! どうするんだよ! なんかヌルヌルしてて気持ち悪いし、汚いし」


「女神の体から出てきたんですよ? 汚いわけないでしょう?」


「え? 汚くないのか? 女神の体液は洗浄効果があって、匂わないのか?」


「……いや、適当に言いました。匂いますか?」


「匂いは嗅がないけどさ! 早く、これをどうにかしてくれ!」


「ハァ」


 パンティを履き、腰に手を当てた玉依は、仕方ないと言ったように手を掲げた。


「来なさい」


 一言。玉依が呟くと、彼女の指先から光が溢れた。


「うっ……!」


 強烈な光に、俺は思わず目を閉じた。


 流石は女神といった所か。光を生み出すなど造作もないのだろう。


 彼女は、一体何を召喚したのだろう。俺は光が弱まると、目を開けて玉依の手を見た。


「ブランド物です。可愛いでしょう? 天照大神から貰ったのよ」


 玉依が手にしていたのは、ブランド物のポーチだった。

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