五
結論から話すと、次の日も僕は君に会うことが出来なかった。
朝起きたら空気が重くて、なんとなく耳とか頭がくぐもった感じがした。カーテンを開けて、外が大雨であることを知り、納得した。
リビングのテレビが言うには、ここ一帯を含め広い地域で大雨警報が発令中とのこと。もちろんあの神社も含まれていた。
さすがにこの天気で外に出ようとは思わなかった。クジラを探す少年も言っていたじゃないか。空に歯向かうもんじゃない。
君との静寂とは違う、家族とのただ重いだけの沈黙を共有する気にはならなくて、朝食を食べてから僕はずっと、自室で小説の世界に潜っていた。
祖父がまだこの家にいたころに貰った、昔の戦争が題材の本だった。当時読んで全く理解できなかったものだが、今なら分かるんじゃないかと期待した。期待は外れた。やっぱりよく知らない国や地域や人種が、よく分からない理由で争うのは、無意味だし、哀しいと思った。これがファンタジーじゃなく実話だというのが、信じられなかった。こんな殺し合いよりも、まだ虹色のクジラの方が、現実味があると思った。
いつの間にか眠ってしまっていたらしく、気がついたら外は暗かった。まだ雨は降っていた。
夕食を食べて、風呂に入った。テレビは「明日も雨は降り続く」と言っていて、僕は半ば絶望した。
明日に期待せず、僕は布団に入った。
空は無情に涙を流していた。
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