エピローグ (解決編4)
後日。騎士団によって本格的に捜査され、推理はほぼ正しかったことが明らかになった。
捕縛されリーダーはドヴァーリン建築の管理職、カスパー・モーリである。ドヴァーリン建築の作業員として商人ギルドから許可証を得た盗賊団らは、襲撃の前日から外で準備をしていた。
その後クレアに見つかり、口封じの為にクレア達を探さなければ無くなったが、捜索に難航した彼らは4日間連続の”外泊”を余儀なくされた。結局二人を探すのは諦めてクレアの救助の日の夕方に新都市に入った。
俺の推測を聞いたジェフリーさんは直ぐに連絡用の<使い魔>で情報を新都市に伝えていた。情報伝達の時差がうまく働いたようで、盗賊団は事件の全容が明らかにされていると知らず、新都市内で逮捕された。
まぁ俺達には関係のない話だ。
<蜂>について、後からクレアに詳細を聞いた。
クレアたちは運悪く盗賊団と再会してしまい、追われる身となった.
盗賊団の構成から様々な所属の混成部隊であると推測し、俺たちと同様に許可証の入手方法に注目したクレア・レオナにとって、門番やギルド職員は盗賊団に関与していない根拠が無い危険な存在だった。
さらに盗賊団には都市内部にいる仲間と意思疎通できる手段を持っていると推測した。そこで、あの日の護衛メンバーの誰かに助けを求めることにした。
<蜂>の能力は、<蜂>に覚えさせた魔力を持つ人間や生物を見つけ出すことだった。
逃走中の<精霊使い>クレアは<蜂>に覚えさせられるような魔力の通ったアイテムを持っていなかったが、保存食として持っていたクラッカーには<蜂>の魔力が籠もった蜂蜜を使っていた。
<光の精霊の蜂蜜>は、食べると光魔術に適正のある魔術師の魔力を少しだけ回復する高価があるほか、栄養満点で甘いため、クラッカーの材料に使用していた.それが幸運にも命綱になった。昼食時に配ったため、メンバーの中には蜂の魔力の痕跡が数日残ったのだ。
<蜂>に、クラッカーを食べた人間にメッセージを送るようにお願いし、自分達はひっそりと隠れて救援を待っていたのである。
また、トラッシュに関して。
彼女はストリートの若者達から頼りにされている。
盗賊捕縛の日にも、盗賊Cのガールフレンドが『前日からボーイフレンドの姿が見えないから殺されたかも知れない。騎士団に話しに行くから付いてきて欲しい』と言われて第五駐屯地にいたらしい。
身元確認の後、トラッシュはジェフリーに「どうやってこいつ等は”外”に出た?」と聞いたジェフリーは「マフィアが手を回したか、ギルド関係者が許可証を発行したかでしょう」と答えたという。
盗賊ABCはろくな情報を持っていなかったが、トラッシュは盗賊ABCが一晩外で夜を明かしていることを知っており、探索者が手を貸していると推測した。
適当な任務を受けて一度外に出さえすれば、一晩帰らなくてもトラブルがあった、で通せる。探索者ギルド職員でも商人ギルド職員でも可能であると、二人は結論づけた。
その上でトラッシュは、不正に許可証を発行している人間を脅し,自分たちの許可証を手に入れようと考えて、犯人を捜すことにした。
商人ギルドで”背の低いのと背が高くて茶髪、それか黒とかの男二人組”を探していたのは、ストリートの仲間からの『建築屋のなかに混じってる』という証言に基づいた話だ。
一方で,ルイスは長身で土の魔術を使うため、中身は長身で黒か茶色の髪であると推測できる。そのため泥の巨人ルイスと小柄な魔術士コピーキャットと特徴が似てしまったが、これは偶然だ。実際には盗賊の土魔術士と≪調教師≫のことで、捕らえられた二人の特徴と一致している。
彼女はまずジェフリーのいる探索者ギルド『夜明けの天馬』で聞き込みをしたのだろうが、ギルドは『夜明けの天馬』だけではない。そこでしらみつぶしに商人ビルドにも聞き込みをしていったのである。
ジェフリーに関して。
襲撃の翌日の午前、クレアとレオナが野草収集任務に草原へ行ったが盗賊団の潜伏先を発見してしまい戻れなかった。
出発の受付をしたジェフリーは、難しい任務ではないのに戻れなかったことを訝しみ、ギルドを出てから外へ出るまでの間に何かアクシデントが起こったのではないかと考えた。
ギャングの抗争に介入してきたジェフリーにとって、アクシデントとして考えられるシナリオには、マフィアやストリートギャング間の抗争が含まれていた。
そして、日頃から交流のあるトラッシュに『クレアとレオナが見つかったら匿ってくれないか』と頼み込んだ。それによって、ストリートギャングが俺とアンドウを女だと勘違いした事件が起きたのだ。
さらにその翌朝、ジェフリーはクレアとレオナが戻らないことに盗賊団が関与している可能性を考え、出勤前に単身コピーキャットとルイスに知らせようとした。
早朝<蜂>を見て窓から逃げた先で出くわしたのはジェフリーだった。魔術的な霧と二人の不在から、コピーキャットとルイスが攫われた恐れがあると考えた彼はトラッシュの仲間達からの目撃証言等を調査して回ったあとギルドに出勤し対策を考えていたが、コピーキャットが無事ギルドに現れて安心したという。
これが事件の顛末だ。
アンドウの勘違いやトラッシュの手下の紛らわしい行動があったこの事件であるから、惜しむらくは名探偵の不在。
だが、クレアとレオナは命を落とすことはなかったし、俺たちは仲間になれたわけだから、≪占い師≫と≪戦士≫にしてはよく頑張ったと褒めて欲しいところだ。
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