第454話
「無理だ」
ライターはきっぱりと言い切った。それも教えないという拒否ではなく、教えること自体が無理だという否定だった。
「あのな、種族という壁はどうしても超えられないんだ」
ライターは呆れながら言葉にする。しかし、蛇人を気絶させておいて説得力はあまりにもない。
「百歩譲って剣術を教えても、エルフ族じゃモノにはならないだろう」
エルフ族では剣術を己のモノにすることができないときっぱりといった。しかし、それだと····
「プラエフェクト将軍はどうなのです。彼はエルフ族で魔剣を扱い世界を蹂躙しました」
「いや、そんな歴史上の人物を出されても俺は知らんが、そもそもだ。エルフ族は白き神から何かしらの力を与えてもらっているんだろう?白き神が与えた力の上に剣神様が守護を与えるかという話だ」
神など崇めていなさそうな厳ついおっさんから神の名が出てきた。それも一度は聞いたことがある剣神レピダの名が出てきたのだ。
「俺たちは魔剣術と言っているが、それが扱えるのは
そう、ライターの言葉に反応したのはルークだった。
「確かにルークには、基礎となる扱い方は教えたが、それを魔剣術になるまでにするには加護は絶対に必要だ」
そうこれは剣聖ロビンにも言われた言葉だ。剣神レピダの加護を持っていなければ、剣術を神剣術まで極めることはできないと。
「どうすれば、神からの加護を貰えるのですか?」
ルークはここ最近よく耳にする神からの加護をどうすれば貰えるのかライターに聞いてみた。
すると、ライターは呆れるように言葉にする。
「俺たちの祖は大魔女エリザベートだが、グローリア国を作ったのはアレクオールディア・ラースだ」
「ラース!」
「そうだ。元々はラース国の大公に成る者だったが、女神ナディアを恨み、カウサ神教国を恨み、元々ラース公国だった今のグローリア国の地を開拓し、新たに国を作った者の名だ。だから、エルフ神聖王国の侵略も退ける事ができた。その時はラース公国の属国としてだったらしいが。だから、我らの国には多くの神々がおられた。居場所を無くした神々がだ。これがどういう意味かわかるか?」
思いがけないグローリア国の歴史にルークもスーウェンも驚きを隠せない。そして、ライターは自国だったグローリア国の歴史を語っているようで、意味がある話のようだ。
しかし、この話はシェリーのプラエフェクト将軍の言葉の裏付けとなる事柄ではないのだろうか。信仰を失った神々は自分たちを崇める最北の地の民に信仰という居場所を見出したと。
「神々を祀る神殿が各地にあったのだ。だから、グローリア国は多くの魔導師が存在し特異的な者たちが存在したんだ。だが、今はどうだ?」
ライターは肩をすくめて疑問を投げかける。多くの神々の拠り所となっていた国はその国に召喚された勇者の手によって壊滅状態にされ、多くの壊された建物の中には神々を祀る神殿もあった。
再び信仰を失った神々はどうなるのか。ある者は消え去るしかない運命だろう。ある者は細々と崇めてくれる者達に寄り添うことで存在し続けられるだろう。
「どうやって神の加護を得るかって?崇めもしない者になぜ神々が守護を与えるのか俺の方が聞きたいな。もし、それで神の加護がもらえるのであれば、それこそ、神々の気まぐれだろう」
そう、神々の気まぐれ。
女神ナディアは己とラースの血族に守護を与えている。
光の神ルーチェは己を崇めてくれるのであれば、頭を撫でてやろうぞという女神だ。
死の神モルテと闇の神オスクリダーは可哀想な者たちに慈悲を与え、加護がない場所では生きにくい者たちを創り出した。
その信仰の得方はそれぞれ思うところはあるだろうが、この神々は己の信仰の場を作り出すことに成功したと言っていいだろう。
だが、他の神々はどうだろうか。個人的に気に入った者に守護を与えているにすぎない。
その神々の中で、一番の力を持ち信仰も得ている白き神の与えた加護の上から、どの神が守護を与えようと思うだろうか。よっぽどの事がない限り与える事はないだろう。
ロビンが言っていた
『悲観することはないよ。僕は『今の君は』と言ったよね。神々は努力をするものに慈悲を与えてくれる。気に入れば加護を与えてくれる。生半可なことでは駄目と言ったのはこういう事だよ』
と。力のある神の加護の上から更に追加で加護を得ようと思えば、並大抵のことではないだろう。
では、プラエフェクト将軍はどうだったのかという話になるのだが、彼は聖女の〝つがい″という役目を与えられたが、白き神からの加護を得ているわけではなかった。だから、彼の努力のすえ、
そう、世界は白き神の信仰に統一はされていない時代だった。カウサ神教国は大陸の半分ほどしか支配できていなかった。まだ、彼を含めたエルフ族は白き神の加護ではなく、他の神々の加護を得いていたのだった。
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