第103話
佐々木はダイニングを出て、自分の部屋に戻ろうとしたところで足を止めた。廊下には、グレイとスーウェン、オルクスがいた。きっとシェリーの様子が心配になって見に来たのだろう。しかし、佐々木は三人を無視して部屋に戻る。
部屋のクローゼットを開けると、普段シェリーが着ている服が並んでいるが、その奥に佐々木が着る服がならんでいる。それは佐々木が好んで着ていた黒のパンツスーツだ。仕事着を着ると頭が徐々に冴えてくる昔からの習慣だ。そして、奥に立て掛けてある剣を取り出す。いや。少し湾曲した形は刀のようだ。
鏡台の前に立ち、衣服を整え、ひっつめのお団子頭にする。刀ではなく革の鞄を持てば会社に出社する会社員のような格好になった。
スーツは炎王から購入したもので、刀は炎国にいる鍛冶職人で有名なドワーフの職人に作ってもらった。まさに未練の塊だ。
ヒールの低いパンプスを履き、部屋を出る。そして、屋敷の外に出て、裏庭に向かう。そこは何も無くただ広い敷地が広がっていた。シェリーが佐々木が訓練で使うための庭であり、雑草が生えて広々と月明かりに照らされていた。
佐々木は結界を庭いっぱいに張る。そして、魔力を練り上げスキルを使う。
『
辺りに闇が満ちていく、月の光を通さぬほどの深い闇が覆い、その闇の中から見たことがある人物が出てきた。魔人ラフテリアの腕の中にいた聖剣ロビンが人の姿をして出てきたのだ。
次にでてきたのは、赤い髪をした女性が、革の四角い旅行かばんに乗って・・・空中に浮遊しながら出てきたのだ。微笑みを絶やさない彼女の名は大魔女エリザベート。
そして、筋肉隆々のエルフの猛将プラエフェクト将軍が大剣を持って立っている。
続いて筋肉隆々のうさぎ獣人が・・・どう見てもグアトールの祖先だろう。
最後に「はははは。今日はよい月夜だ。最高の宴になりそうだ。」そう言いながら出てきた銀髪の赤目の人族であり、身の丈の杖を持ちニタニタ笑う人物は暴君レイアルティス王。魔導王として存在し、グローリアを魔導王国として作りあげた人物である。
スキル
世界の記憶からクラスS以上の亡者をランダムで5人を選択し、再現する。亡者のため経験値は入らない。
これ、やばくない?
佐々木は刀を抜く。シェリーが絶対に使わない武器だ。シェリーは武器を持つのがまどろっこしいと言うのが理由で拳を使っているが、佐々木はそれって手が痛いから嫌だと言う理由で、刀を武器として持っている。
グアトールとプラエフェクト将軍が佐々木に向かってくる。グアトールの拳が、プラエフェクトの大剣が佐々木を捉えようかとしたところ、佐々木は紙一重で避けグアトールに向けて刀を持っていない手でグアトールの拳を弾き、プラエフェクトの横凪の剣を刀で往なし、距離を取る。
その間も佐々木はエリザベートとレイアルティスの動きに注視している。魔女と魔導王は要注意だ。エリザベートは浮遊しながらニコニコしているが彼女の頭の中にはどうやって血の狂宴を楽しもうかしかないのだ。
佐々木は遠距離攻撃に注視しながらも、手は止まることはない。この中でも聖剣ロビンは特に要注意人物だ。あの謎の生命体が聖剣と定め、初代聖女の番として剣を振るった存在だ。しかし、先程からロビンは一歩も動かない。
そして、佐々木はグアトールの首を落とし、プラエフェクトに向き合おうとした時、風を感じた。目の前には先程まで動かなかったロビンがいた。すぐさま、後ろに飛のくが、少し反応が遅かったのか、左手の肘から下を持って行かれた。
佐々木はそのままロビンの横を抜け、プラエフェクトに向かうが、エリザベートが動いた。
彼女の周りには光の矢が空を埋め尽くさんばかりに存在している。
佐々木は一瞬プラエフェクトに目線を送り、身をかがめ、エリザベートに向かい跳躍する。エリザベートの矢が佐々木に標的を定め鏃が一斉に向きを変え、佐々木はエリザベートにあと一歩と言うところで失速し、地に落ちて行く。
その佐々木の姿をエリザベートはあざ笑うかの様に大声で笑い、光の矢を放とうとしたところで、目を見開く。目の前にはプラエフェクトの大剣がエリザベートに迫っていたのだ。光の矢はそのままうち放たれ、エリザベートはプラエフェクトの大剣に倒れプラエフェクトはエリザベートの矢を受け地に落ちて行った。同士討ちである。
佐々木は魔眼の力をプラエフェクトに使い自分の後ろに付かせ、お互いを殺し合わせたのだ。
残り二人というところで、佐々木が張った結界が壊れた。佐々木は結界の外を見る。また、オルクスか。力技で結界を壊すのはいい加減にしてほしい。
「さっきから、言っていることが聞こえていないのか?シェリー!」
オルクスから何かを言われた記憶はないが?
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