第16話
シェリーは食堂のカウンターの定位置に腰をおろし
「オークステーキ。大盛。ジンジャエールで」
今日の夕食は絶対肉を食べると決めていたシェリーは、酒の当てに肉を食べる飲み屋の様な注文をする。飲み物は酒ではなくノンアルコールであるが。
「俺もオークステーキでシーフードパスタとエールで」
「おう。嬢ちゃんにカイル。思ったより早かったな。」
厨房のおやじであるジェフが二人の注文に答える。
「今回は1週間は掛かるじゃにゃいのかにゃって言っていたのにさすがはカイルさんとシェリーちゃんだにゃ。」
二人がいるカウンターにもたれてニャニャ言っているのはウェイトレスの猫獣人のミーニャである。
オレンジのボブカットの頭の上にピョッコリと耳を出し黄色い目を興味深々に輝かせている。服装はギルドマスターがこだわり抜いて作ったというミニスカメイド服にニーハイという変態さがにじみ出ている仕様のスカートのしたからオレンジの長いしっぽが揺れている。
「報告を受けていた状況と違っていてね。できたばかりのダンジョンだったから十階層までしか無くて、早く終わったよ。」
「そうだったのにゃ。じゃ、カイルさんはにゃぜシェリーちゃんの手をにゃでにゃでしているにゃ?」
「すべすべして気持ちいいから。」
━変態にゃ。変態がいるにゃ。シェリーちゃんの目が腐ったサカニャの目ににゃってるにゃ━
「おい。できたからさっさと食え。」
シェリーの前には、肉2枚分のステーキとジンジャエールが置かれた。さっそくナイフとフォークを手に取ろうかと思ったら、右手が掴まれており、ナイフが持てない。横にいるカイルに文句を言おうと顔を上げた時
「はい。あーん。」
笑顔のカイルがフォークに刺した一口台の肉を差し出していた。
シェリーは思考を停止した。
そして、先程までガヤガヤと楽しげにしていた食堂にいた者たちが一斉にシーンと静まりかえった。
いち早く起動したジェフが
「カイル、嬢ちゃんが食べれないから手を離してやったらどうだ。」
遠回しにカイルの行動を諌める。なぜなら、カイルがとっている行動は番への餌付け行動に他ならないからだ。
「大丈夫だよ。俺が食べさせてあげるから。」
そこにいた者たちの心は一つになる。
━大丈夫じゃない。━
シェリーの唇に肉が押し付けられる。
「フォークと口移しどっちがいい?」
シェリーは無意識に前者を選び、肉を口にする。味がしない。
カイルは恍惚とした表情をしている反面、シェリーは苦虫を食べているような顔をして咀嚼している。
「自分の分は自分で食べますので手を離してください。」
カイルはシェリーの右手を解放し
「じゃ、俺にも食べさせて欲しいな。」
シェリーは無言で肉を切り刻み、自分の口に入れて咀嚼していく。・・・が、肉の刺さったフォークを持った手を掴まれ、カイルの口に運ばれていく。
目の前でこの行動を見ているジェフとミーニャは
「おい。これはどう見たらいいんだ。遠目から見ると餌付けなんだが、これはなんだ?」
「シェリーちゃんの目が死んだサナニャになっているから、いつものカイルさんの異常行動の暴走だにゃ。」
たびたび目撃されているカイルのシェリーに対する異常行動だと二人は結論づけた。
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ミーニャの本当の名前はミーナなのだが『な』が『にゃ』になってしまうミーナが自己紹介のときに『ミーニャです。』と言ってしまったためにミーニャが本当の名前とみんな思ってしまっている。
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来ていただきましてありがとうございます。
16話の挿絵として、シェリーとカイルの食事シーンをデフォルメした感じで描いています。お時間があればどうぞ。
https://33361.mitemin.net/i474880/
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