第三十三話

「よーし出来た! 鍵の名前は“淡い死者”の鍵だってさ」


 俺はキーメイカーで作られた鍵の名前を楓とルキに伝える。

 ゾンビとか出てくるのか? 俺グロいの苦手なんだよなぁ……。


「死者!? て事はゾンビとか出てくるのかな!?」


 楓も俺と同じ意見だった。

 まあ大体そんな想像するよね。


「多分そうじゃろ、今回も問題なく攻略出来るとは思うがの」


「楓はゾンビとか出て来ても大丈夫か?」


 楓は虫が苦手な事もあり、俺は心配になって聞いてみる。

 俺は超苦手だぞ。


「え? 気持ち悪いとは思うけど別に大丈夫、出てきたら倒すよ?」


 なんて心の強い子なんでしょう……末恐ろしい子……。

 今回は個人的にあんまり行きたくないなぁ……。


「まあ行ってみん事には出てくるモンスターも分からんしの、早う行くぞ」


 そう言ってルキはトイレの方へ歩きだす。

 渋々その後に続き、俺は鍵を使ってダンジョンへの扉を開く。


「お、今回はなんか開けた場所に出たな」


 今回は“明けゆく森”の鍵の時よりももっと広く、西部劇などに出てくるような小高い丘が点々とある荒野にいた。


「うわぁ……空はどんより薄暗いし、なんか漂ってる匂いも臭いしであんまり長居したくないね……あ、とりあえずプロテクションかけとくよ!」


 そう言って楓は俺達にプロテクションをかける。


「これは死臭だの、ほんの少し魔力を帯びた瘴気も混じっとるし……これはやはりゾンビが出てくるの」


「そうなんだー?」

「へぇ凄いな、そんな事も分かるんだな」


「まあこのくらいはの!」


 ルキが腰に両手をつけドヤ顔で言う。

 その時、俺達の近くの地面がボコボコと盛り上がり、いきなり10体程のゾンビが地面から生えてくるように現れる。


「「いやぁぁぁああああ!!!!」」


 !?


 楓さん!? なんで貴女も俺と一緒に叫んでるんですか!? 別に大丈夫って言ってましたよね!?


 俺は鑑定のスキルを使ってモンスターを調べる。


【ゾンビ】


 なんのひねりもないゾンビだった。

 いやまあ、ゾンビだしな、仕方ないよな。

 てかこれマジでグロいぞ……剣で戦いたくねぇな……。


 俺はとりあえずゾンビに向けて[スキル]のチェインを使ってみる。

 するとチェインで絡まったゾンビはボロっと崩れ、溶けて消える。

 おお! これなら離れて戦えるな!


「解! 飛び道具なんて卑怯だよ! 剣で戦いなさいよ剣で! ひぇえ……」


 そう言って楓は石の剣でゾンビを倒している。

 因みにルキは何食わぬ顔で手のひらの上に光弾のような物を作り、それをゾンビに投げ跡形もなく消滅させている。

 色々納得できないが、まあルキだしな。


 ゾンビは幸いにも動きは鈍く脆いので油断さえしなければ、この広い荒野で捕まることもないだろう。


「楓、お主は風神の〈天啓〉があるじゃろ、練習がてら使うてみい」


 見かねたルキがキャーキャー言っている楓にアドバイスをする。

 楓は「あ、そっか」といってすぐ風神を起動した。


その瞬間――


ズゴォォォオオオオオ! と辺りに台風の様な強い風が巻き起こり、次々と生まれてくるゾンビ20体ほどをバラバラに消し飛ばしてしまった。


「なんじゃこりゃぁ!」 


「えぇ……すっごい威力だね……というか今ので〈天啓力〉100くらい消費したんだけど……」


 楓がステータスを確認しながら言う。


「この威力じゃ、それくらい消費するじゃろうの」


「そしたら風神はポンポンと使えないな、ここぞという時に使う様にしないとな」


「そうだね、てか私の〈天啓〉やスキルって燃費悪くない?」


 確かに……。


「まあ、高レベルの呪文や技はそれ相応にMPも使うのがゲームの基本だし〈天啓〉もそうなんだろな。 てかゾンビまだまだ湧いてくるけどこの中にボスっているのか?」


 俺は不思議に思い辺りを見渡す。


「おそらく近くに隠れてゾンビを操っておる奴がいるのじゃろ、丘の陰とかに隠れてるやもしれんし手分けして探せば良い」


「なるほどそういうタイプもいるんだね! わかったよ、手分けして探しちゃおー!」


 楓はそう言うと、もの凄い速さで走り出す。

 なんかいよいよ楓のスピードが人間離れしてきたな……。


 その後俺達は丘の陰にこっそり隠れていた【ゾンビリーダー】を見つけ、チェインを使い止めを刺しダンジョンをクリアする。

 

「簡単にクリア出来たな」


「そうだね、やっぱりこれから鍵は20以上を作ればいいかもね」


「お主らのステータスと儂が混ざれば、それくらいの鍵はもう苦戦もせんと思うぞ、次は30の鍵を作るといい感じにレベルも上がりやすいかもしれんの」


「ちょっと怖い気もするが、ルキがそう言うならそうしてみるか。そしたらさっさと宝箱を回収して帰りますか」


 俺は宝箱に近づき、石の剣でいつもの如く突っついて蓋を開ける。

 すると……。


「ん? これはマントかな?」


【風のマント】


 調べると“風のマント”ということが分かる。

 雰囲気的に素早さが上がるのか?


「風のマントって言うものらしいけど楓がつけてみるか? 丁度風神も手に入れたことだし風繋がりで」


 楓はそんな安直な……と笑いつつマントを羽織る。


「あ、ちょっと走ってきていい?」


 そう言うと、楓は荒野を駆け出した。


(おいどうしたいきなり、あのマントは装備者をランナーにする効果があるのか?)


そんな事を考えていると楓がいきなり跳躍し、伸身の2回宙返りを始めたのだった。


!?


「やっぱり! 体がめちゃくちゃ軽いよ! このマントをつけると身軽になれるんだね!」


 身軽どころの騒ぎじゃないだろ、なんだよ伸身の2回宙返りって、ガンバ○スト駿かよ。


「凄いなそのマント、良いもん貰ったな」


「うん! これでまた戦いやすくなったよ!」


 楓の行動に目が行きルキの事をすっかり忘れていてハッとしたが、そのルキはというと、荒野に椅子とテーブルを出し優雅に“ロー○ルさわやか”を飲んでいた。




 なんか最近、家の使ってない家具や数本ずつ“ロー○ルさわやか”が消えるなと思っていたらあいつのせいだったのか……。

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