第三十一話
「解、なんか疲れた顔してるけど今日のダンジョン大丈夫?」
一緒に下校中の楓が心配そうに聞いてきた。
「あっ、ちょっと考え事をね。疲れた顔してた? 大丈夫だ、全然問題ないよ」
「もしかして鳳凰院君の事? 今日もウザ絡みされてたね」
楓さん、鋭いな。
確かに最近は学校で面倒くさい出来事が多い、これも全て奴のせいだ。
あの100インチテレビの勝負以降、やれ楓をかけて勝負だとかその強さの秘密を教えろやら……何かにつけて俺に絡んでくるのだ。こっちはたまったもんじゃない。
「あの残念イケメン、本当いい加減にしてほしいよな。けどまあ俺ってば今PC持ってないし、高性能のゲーミングPCを景品に出してきてくれたら勝負を受けてやっても良いかなと思ってるかなぁ」
俺は冗談半分で答える。
(チョベリグ!)
ん……? 今物陰から変な鳴き声聞こえなかったか? 猫かな?
「あの100インチテレビを貰ったのも意味分かんないのに、高性能のゲーミングPCなんて勝負の景品として出すはずないでしょ。出してきたら本当に頭どうかしてるよ」
……あれ、これフラグになってないよね?
「てか鳳凰院君となんの勝負してるの?」
「秘密☆」
「けち!」
それは教えられませんなぁ……。
そうこうしている間に、俺の家につく。
楓は学校帰り、いちいち家に帰るのが面倒くさいと言っていたので、予め家から持ってきておいた服を2階の空いている部屋に置くようにさせた。
部屋はいくらでも空いているし使わないのも勿体無いので丁度良い。
見られたくないものもあるだろうから部屋の鍵も渡しているが楓は「別に鍵はいらないよ?」と言っている。
いや、それは俺のけじめというか潔白の為というか、電車で両手を上げるあれだよ、察してくれ楓さん。
程なくして楓も着替えが終わり、ルキを含めた俺達3人はテーブルに座り作戦会議を始める。
「とりあえず解の防具が必要だね! ダンジョンに入る前にネェガさんのお店で装備を探そうよ」
「そうだな、鍵を作る前にしっかり用意しとかないとな」
「ん? ネェガとやらは誰じゃ? 前にも話しておったかの?」
ルキは不思議そうに聞いてくる。
「ああ、ルキにはまだ言ってなかったか?」
俺は“小さな道具屋の鍵”と“小さな宿屋の鍵”の事をルキに伝える。
「ほお、そんな鍵もあるのじゃな。そうしたらその鍵達を上手く使ってダンジョン攻略をしたほうがいいの。後、そうじゃ。ダンジョンに潜る前にやっといた方がいいことがあるんじゃが」
「なんだルキ? 何かやっといた方がいいことあるか?」
ルキは「うむ」と言い俺達の目の前に、あるものを出す。
「ルキちゃん、これって風神のオーブだよね?」
そう、目の前に出されたのは前回のダンジョンで獲得した風神の〈天啓〉のオーブだった。
「おそらく今なら楓にもこのオーブは使えるはずじゃ、使えるなら早く習得するに超したことはないしの、試してみい」
「えっ……今なら私に使えるの? それなら試してみようかな」
なんで今なら使えるんだ? ……もしかして。
「ルキ、それって全人類にダンジョンが開放された事と関係があるのか?」
ルキは「そういうことじゃ」と頷く。
「なら何で俺には使えたんだ? おかしくないか?」
「解は自分の〈天啓〉を使ってダンジョンに入ったじゃろ? それなら問題なく使えるんじゃ」
「ふーん、そういう事だったのか」
そう言うと、ルキは楓に〈天啓〉のオーブを渡す。
するとオーブは光り輝き、楓の中に入っていく。
「やったー! 私にもオーブ使うことができたよ!」
楓はとても嬉しそうに俺に伝えてくる。
「良かったな! 丁度良いし俺達のステータスを確認しとくか」
「じゃあ、私から出すね」と言って楓はステータスを出し俺達に見せてくれる。
【名前】佐藤 楓
[レベル]14
[職業]守護者
[スキル]プロテクション
【天啓】治癒師☆4、風神☆4
【天啓力】1451
[HP]122
[MP]96(124)
[筋力]41
[敏捷]110
[魔力]110(143)
[運]21
えっ……風神て☆4の〈天啓〉だったんかい……てか〈天啓力〉1400超えてるんですけど。
ネットで騒がれている蒼炎使いでも確か1300だったぞ。
て事は楓って今現在、日本で確認されている〈天啓力〉の中で数値が1番って事? 全一?
ステータスも“明けゆく森”のダンジョンをクリアした後に見る機会があったが、その時より大分上昇している。
「なんか〈天啓力〉凄いことになってるね! 風神も☆4だって!」
これはまずいですよ、俺の存在意義が……ただの鍵作って増やすだけの人になってしまうっ……!
(頼むっ…次は俺に合った〈天啓〉のオーブが出てほしい……!)
俺はそう心の中で〈天啓〉の神様に願ったのだった。
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