第二十六話
「おおー!」
「綺麗ー! もう少ししたら太陽が出てくるのかな! 楽しみだねー!」
俺達は“明けゆく森の鍵”を使ってダンジョンに入った。
そこはいつもの薄暗くて窮屈感のある洞窟ではなく、周りには森があり、空にはまだ煌めく事をやめない星々の中に一際目立つ明けの明星と、綺麗な朝焼けが絶妙なバランスで共存していた。
足元は膝下程ある草が生い茂っており、俺達の周りは半径20m程ぽっかり空けていた。
「太陽は出てこんぞ」
「「えっ……?」」
「このダンジョンを攻略しなければ、この世界の環境はずっとこのままじゃ」
「と言う事は俺達が攻略を諦めたらここはそのままって事か?」
「そうじゃの、半永久的にの」
「なんかそれ悲しくない? ずっとこのままなんて……」
「そう思うのなら頑張って攻略することじゃな」
「よーし、俄然やる気が出てきたよ! あっ、とりあえず皆にプロテクション使うね!」
楓がそう言うと目を瞑り、程なくした後、俺達の体が一瞬薄く光ると、体の表面に何か膜のような存在を感じた。
「出来た! 1回のMP消費量は10みたいだね」
楓はすぐステータスを確認する。
「プロテクションはそれなりの時間、効果は続くと思うがいつもは効果が切れたらその都度、使うようにの。まあ今回はそう言う訳でもないが……」
ルキが楓にアドバイスする。
「ありがと、わかったよ。それにしても綺麗なところだね! てかほら見て解、帰りのドアがぽつんとあって本当にどこ○もドアみたいだよ!」
楓が入ってきたドアを見て笑っている。
「確かに傍から見たら不自然だよな。なあルキ、これからこのランク帯の鍵を使ったらこういった色々な場所に出るようになるのか?」
「まあ、低ランク帯の鍵でも出る事は出るがの。現に“密かな森の鍵”は森に出るはずじゃし……ただ高ランク帯になればなるほど、多種多様な場所が生まれ、広がり、世界は力強く輝きを増すのじゃ」
「ん? どういう意味だ?」
「まあ、それはおいおい話す。ほらお主ら、突っ立ってないでモンスターを倒しにいくぞ」
そう言うとルキは先立って森につながる道へ歩いて行く。
「お……おい。危ないぞー! 楓、俺達も行こう」
「おっけー!」
先程の場所は朝焼けのおかげで随分と明るくなってきていたものの、森の道はまだ薄暗く、心なしか空気もどんよりしている。
そう思っていたら遠くの方に3匹のゴブリンが見えた。
「ね、ねえ……ゴブリンがいきなり3体もいるよ……」
ゴブリン3体は少し前に楓が1人で倒せてはいるものの、いきなりとは驚いた。
「20の鍵じゃからの、当たり前じゃがこのランク帯では複数で出て来ても1番弱いモンスターじゃぞ」
「確かに〈天啓力〉の消費量が20だもんな、まだまだこんなもんじゃないんだろう」
俺は気を引き締める。
「解、お主はこれからどんどんチェインを使っていくのじゃ、MPが無くなる心配はせんでいい。儂に考えがあるからの。楓は解のフォローをするのじゃ」
「おっけー!」
「あ、ああ。けどチェインっていったいどんなスキルなんだ?まだ良く分からないんだけど」
「とりあえずあのゴブリン達にチェインをつこうてみい、自ずと分かる」
俺はゴブリンに近づき3匹の内1体に狙いを定めチェインを使う。
すると手のひらから勢い良く鎖が飛び出し、ゴブリン1体を雁字搦めにする。
(チェーンジェ○ルだこれえええええええ!!)
俺はすぐ様その鎖を思い切りこちらへひっぱり、ゴブリン1体を引きずり寄せる。
突然の事で狼狽えているゴブリンを特殊警棒で殴打し、まずは1体仕留める。
俺達がいるのに気づき、残りのゴブリンがこちらにやってくるが楓が対応する。
楓は先を走っていたゴブリンの攻撃を上手く捌き、一撃をいれて吹っ飛ばした。その隙をついて楓に攻撃しようとしていたゴブリンに俺はチェインを使い自由を奪う。
「楓! 鎖で動けないゴブリンを叩け!」
「おっけー!」
楓はすぐそのゴブリンを仕留める。
最後は俺が吹っ飛ばされたゴブリンに近づきしっかりと倒して戦闘は終わった。
「なんかそのチェインめちゃくちゃ使いやすそうだね!」
「びっくりしたよ、これ本当に便利だ」
「お主ら初めてスキルを使った連携であそこまでやれば大したものだぞ、褒めてつかわすのじゃ!」
ルキが偉そうにふんぞり返っている。
「お褒めに預かり光栄の極みです王さま、んで俺のMPを6も使っちまったけどどうやって回復するんだ?」
「まあ、とりあえずは魔石を集めてくるのじゃ。話はそれからじゃの」
そう言われ俺達は倒したゴブリンのところへ行き極小の魔石を拾ってくる。
「ルキちゃん、持ってきたよー」
「うむ、ご苦労。そしたらこの魔石を使ってお主らの魔力を回復する。と言ってもこの量じゃそんなに回復出来んがの」
「え!?」
「そんな事が出来るのか?」
「出来る、本来の儂なら魔石なぞ使わずにお主らにいくらでもMPを分けてやれたんじゃが今の儂は幼子。魔石を使うのはMP変換効率が悪くてかなわんが、これくらいしか出来ん」
「いやこれくらいって……だいぶ凄い事やってるだろ……」
「そんな事はどうでもいいんじゃ。楓にも回復してやりたいが、使用頻度が高い解の方から回復を優先させるぞ」
「大丈夫だよ、ルキちゃん!」
ルキは極小の魔石を右手に6つ持ち、左手を俺の前に出し「握れ」と合図を出す。
「あ……ああ……」
(ちょっと怖いな、痛くないだろうな……?)
「なんじゃ〜、照れてるのか? 初心なやつめ」
ルキはフフッと笑ってこちらを見る。
「照れとらんわ! ……ったく」
俺はルキの手を取る。
少ししたらルキの左手が暖かくなりそれが体に流れてくるのが分かった。
(なっ……これは! いつぞやの母性に似た何か!? 俺はこんな幼女に母性を感じでしまうのか!? 悔しいでも(母性)感じちゃうビクンビクン)
「終わったぞ、ピュアボーイ」
俺はハッとして我にかえる。
「誰がピュアボーイじゃ……って自分で言ったやつだなそれ」
「ほれ、ステータスを見てみい」
俺はステータスを確認すると、しっかりとMPが全快していた。
「回復したじゃろ? 極小の魔石1個でMPを1回復できると読んでいたが当たりじゃったの」
「へぇ、魔石にはこんな使い方も出来るんだな」
「まあ普通の奴には出来んじゃろうがな! 楓も回復してやるから今回のダンジョンでは戦闘が始まる度にプロテクションを使うのじゃぞ」
楓は「おっけー!」と元気良く返す。
ルキがいてくれるおかげで本当に色々な事が知れるし、俺と楓をしっかり導いてくれる。
本当にルキは何者なんだろうか……。
そう思いながら俺達3人は森の奥へと進む。
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